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愛犬ジャックの死

10日前、愛犬ジャックが死んだ。
15歳と11ヶ月の犬生だった。

日増しに喪失感は大きくなり、今では口を開くのも億劫だ。

この悲しみがなにかに似ていると思ったのは、数日前のことである。

それは師である相米慎二監督が亡くなったときの心の動きに似ているのである。

「犬といっしょか、オレは」

監督に笑われそうだけど、ほんとうなんだから仕方ない。

あの頃、これほどの悲しみはもう訪れないだろうと思っていたのだが、そんなことはなかった。

犬が死ぬとは、これほどの痛みなのか。

僕はあまり動くこともできず、ぼんやりとベッドに寝転んでいる。

映画なんてとても見れない。本をめくるのが精一杯だ。
長い面倒な文体もお断り。

そんな中で、手にした北方謙三さんの「黄昏のために」という短編集に救われる思いがした。
画家の身辺雑記を装った小説なのだが、短く研ぎ澄まされた文体と諦観に満ちたまなざし。
毎日、一遍読み進めるのだけが僕を支えている。

問題は、その一遍を何時に読むか、なのである。

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