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ミネルバ大学という21世紀型の最高の大学に学ぶこと

こんにちは、西出です。
最近日本でもかなり認知度が上がって来た、恐らく21世紀最高の高等教育機関のミネルバ大学をご存知でしょうか?

私はフィリピンで多国籍人材向けのテックスクールを運営しているのですが、僕の成し遂げたい本質的な教育のあり方が、ミネルバの掲げるコンセプトに近いなと思っています。

そんな中で、僕が思うミネルバのすごい点についてまとめてみたいと思います。


4年間で世界7都市をまわるという学生生活の設計

ミネルバは、1年生はアメリカのサンフランシスコ、2年生は韓国のソウル・インドのハイデラバード、3年生はドイツのベルリン・アルゼンチンのブエノスアイレス、4年生はイギリスのロンドン・台湾の台北、と4年間の間に世界7都市を行脚して生活を行います。

僕はこの話を知った時に、「あぁ、21世紀のグローバル社会において、本当に価値のある体験を設計している学校だな」と、心が打ち震えました。

当たり前の話ですが、人間がまだ物理的な身体を持ち続ける限り、直接的・身体的な経験によるインプットほど人に影響を与えるものはありません。もし人間が身体的体験の強度を忘れるとしたら、『攻殻機動隊』のように、電脳が当たり前になった時代よりも未来の話でしょう。

飛行機によっていつでもどこにでも行くことができ、情報もインターネットによって(中国のようなグレートファイアーウォールを除けば)世界のあらゆることを知れるようになっている21世紀のグローバル社会において、私たちは世界を「知った気になる」ことは容易です。
ですが、「知った気になる」と「実際に生活体験を通して身体的に知る」ということには、雲泥の差があります。

さらにミネルバの場合は、宗教的多様性、文化的多様性、経済的多様性、社会的多様性、政治的多様性...あらゆる多様性を、4年間に行脚する都市から充分に経験できるように都市が選定されているように見えます。

21世紀、より依存関係と絡まりを深めていくグローバルな社会の中で、多様性をきちんと身体的に受容できるような学生時代の経験は、非常に本質的で意義深い教育の在り方かと思います。


都市をキャンパスにするという発想

また、都市をキャンパスにする、という考えも非常に面白く思います。

ミネルバは全寮制で学生を受け入れているのですが、その寮はシンプルに「学生の共同生活にとって過不足ない施設」となっていて、キャンパスや豪華な研究室は自前では持ち合わせていません。

そのため、学生が4年間で行脚する7都市それぞれに、その都市の一流企業や現地の大学などとの提携関係を持っており、それぞれの地域で特色のある研究機関と組んだ学びができるような仕組みを準備しています。

4年間の間に遍歴する世界の7都市において、各都市ならではの産業や企業と触れ合いながら、それぞれの都市における土着のものと触れる。
それも社会にとって価値のある様々なアクターと、実践的な経験を通じて関わり合う。

このように、「隔離された学校」という箱庭から自然と飛び出し、自分たちが生活している各都市における「イマココ」ときちんと関わりながら、そこでしか学べない学びを通じた実践知を育むことができる。

このような理念も、「不確実性の高い21世紀グローバル社会だからこそ、手触りのある実践的な経験により、多様性を受容する感性を育む」という観点で、非常に有用なものに思えます。


課題解決の思考の型をベースに専門性を積み上げるというカリキュラム

また、ミネルバでは、大学一年次に、「HC(Habits of Mind and Foundational Concepts = 思考習慣と基礎概念)」という、思考パターンの学習をまず実施するそうです。

21世紀の社会は、「多様性が高い社会」「不確実性が高い社会」であり、それは「答えがない社会」です。21世紀前半は、ますます既存の枠組みがより混ざり合い、新たなテクノロジーが社会を再編していく「不確実性の高い社会」となっていくのは自明です。

そんな社会では、「答え」ではなく、不確実な状況に向き合いながら、過去の方法論やツールによっては想像さえすることができなかった「意思決定」を常に実施していくことの方が重要となります。そのために、課題解決の「思考の型」を汎用的な方法論として持っておくようにする、というのは非常に妥当性が高く感じます。

準備された「答え」へ飛びつくのではなく、目の前に存在する現象をありのままに捉え、それぞれ個別具体的な「不確実な事象」に対して、常に開かれた姿勢で向き合う姿勢を「思考の土台」とする学習を提供する。

これらは、不確実性の高い21世紀社会を活きる学生へ、「知識ではなく知恵を与える」という意味で、教育が教育としての義務を果たそうとしたときに妥当性が高い方向性だと言えるでしょう。


真に多様性を包含するかのような学生構成

さらにミネルバの素晴らしいところは、所属学生の多様性を、公平な観点からきちんと追求している、ということです。

ミネルバは、様々な奨学金制度によって、貧困国の学生の入学が妨げられず、ユニークで教育を受けるべき価値のある学生が入学できるような仕組みを持とうとしています。ミネルバではそれを、「Need Baseの奨学金」と呼んでいるようです。

もちろん、卒業生を成功事例として輩出せねばならないことや、奨学金制度の公平性自体を謳うことなど、一定学校経営上のマーケティング的な観点での調整はあったとしてもおかしくはないかもしれません。ただ、既存の大学が有するような「上限○○名まで、××の条件を満たす人にのみ奨学金を付与する」という一見民主的な奨学金の仕組みに比べ、数倍素晴らしい奨学金制度を持っていると言えることは疑う余地がありません。

そのことにより、
・真に教育を受ける価値のある生徒へ広く門戸を開く
・より多様なバックグラウンドを持った学生コミュニティを学生に担保する
・更に寮での共同生活によって学生の交流が発生しやすい
など、学生の多様性を担保しながら、学生間の異文化交流による化学反応が高まる要素が設計されています。

このような、学生の多様性と化学反応が起こるコミュニティは、数十年後のグローバル社会を先取りしたコミュニティに見えます。

教育の質の高さなどを度外視しても、このようなコミュニティを持ちながら、世界を行脚した学生達は、自然に未来のグローバル社会のリーダーになる要件を満たして行くでしょう。

本気で感動的なまでに、21世紀前半に、未来を担う人材育成のための理想環境を持っているように思えます。


私たちがミネルバから学ぶべきこと

ミネルバのあり方を見た時に僕が思うのは、「数十年先の未来を想定した上で、今あるべき教育を設計している」という、未来志向の姿勢を持っているということに尽きます。

21世紀を再編していくのは、多様な宗教・文化・民族がより日常生活レベルにおいても混じり合っていくという「具体的・身近なレベルでのグローバル化」と、インターネット・人工知能・ブロックチェーンなどに代表される「テクノロジーによって、想像することさえできなかったような社会設計が実現可能となっていくこと」の2つです。

そしてこれら2つの力が混じり合った未来は、「多様性が混じり合いながら、常に社会が生成変化し続けていく」というような未来になるでしょう。ミネルバは、そんな未来社会の縮図を、ミネルバ大学という大学の学生生活に先取りして取り込んでいるように思います。

このような、「未来を教育の場に取り込む」という姿勢は、あまねく教育事業者と教育に関与する人間が持つべき責務だと思います。


翻って今の日本の現状を見たときに、ミネルバから自然と輩出されていくであろう若者が生まれてくるような土壌は、あまり期待できないと思ってしまいます。

ホリエモンがスタートした「ゼロ高」や、角川ドワンゴがしかける「N高」、喜多恒介さんが実施する「Narative Career School」などは、現在の日本の若者の未来を拡張するために、現行の日本の教育に対するオルタナティブを提供しようとしている活動だと言えるでしょう。

ただ、彼らでさえ、「ミネルバ」のように全方位的に未来の社会の縮図を「学校」という概念へ引っ張り込み、「未来を先取りした環境を学生に提供する」というところはできていないと思います。実際には、日本はそのような未来先取りをしたチャレンジングな仕組みを作る一歩手前の段階に課題があり、「未来が見えない」「どうすればよいかわからない」という学生たちに「気付き」や「動機」を提供することのほうが、重要視されるべきフェーズなのでしょう。彼らは現状自覚的に、「過去の常識のレールから外れられる道をまず提供する」というところにフォーカスしていたり、「若者が自分自身の内発的な気付きから、自身のやりがいを見つける」というところへ、戦略的にフォーカスしているようにも思えます。


そんな中で、現在の僕の仕事は、アジアトップの英語圏であるフィリピンにおいて、先進国・途上国を問わず、「多国籍学生が集まるアジアトップのテックスクールを作ること」です。

ミネルバのように世界を行脚しながら、理想的な環境を完全に実現した総合大学を作り切ることは、現在の私の事業においては短期的には難しいでしょう。

ですが、「今世界を変えているテクノロジーの最先端を、多国籍な学習者が集い学び合うというコミュニティを実現する」、ということは射程に入れて動いていますし、おそらく価値があることかと思っています。

グローバルIT企業で働く民間人が営利企業として実現することができる、未来へ投げ込む一石となりうるテックスクールの形は何なのか。

そんなことを考えながら運営しているのが、グローバル×多国籍学生向けのプログラミングブートキャンプです。

まだまだミネルバが提供する本質的に世界を変えるリーダーを輩出するようなスクールとなっていくには道のりがありますが、私どものような民間アクターが、ミネルバなどをベンチマークとしながら、日本の既存の学校制度に対するオルタナティブをも志向している、ということに価値はあるだろうと思っています。もっとクレイジーな奴らを日本という枠組みを超えて生み出していく必要がある、と感じています。

クレージーな人たちがいる
はみ出し者、反逆者、厄介者と呼ばれる人達
四角い穴に 丸い杭を打ち込む様に
物事をまるで違う目で見る人達
彼らは規則を嫌う 彼らは現状を肯定しない
彼らの言葉に心を打たれる人がいる
反対する人も 賞賛する人も けなす人もいる
しかし 彼らを無視することは誰にも出来ない
何故なら、彼らは物事を変えたからだ
彼らは人間を前進させた
彼らはクレージーと言われるが 私たちは天才だと思う
自分が世界を変えられると本気で信じる人達こそが
本当に世界を変えているのだから

Cited from "Think Different": https://ja.wikipedia.org/wiki/Think_different 

頭が狂ってると言われても、新しい時代を作っていく人間はちょっとクレイジーなやつらでしょう。そんなクレイジーで頭が狂ったやつを、1人でも良いので僕たちのスクールからも輩出していきたく思っています。

"Think Different"な人達が、日本から飛び出して弊社のグローバルテックスクールへ来てくれることを願いつつ。

僕が作っているグローバルテックスクールの情報はこちらなので、われこそは"Think Different"な人たちは、ぜひ一度弊社サイトをご覧ください。


私の管理するテックスクールは、未来を担う人材育成をしたいと考え、私設奨学金として受講生へ割引をしたいと考えています。 もし記事を読んでサポート頂けますと、弊社スクールを検討する学生への奨学金としてプールし、還元していきます。小額でもぜひ、サポート頂けますと幸いです。