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週明けのミーティングにて

月曜の今日、いつものメンバーでオンラインミーティングをしていた。
様々な国籍からなる出席者の中にはマーシャもいた。
いつもどおりカメラはオフ。各々が淡々と進捗をアップデイトするだけの、退屈なミーティングのはずだった。

お互いの顔が見えないオンライン環境。
それでも、例の話題には触れまいとする全出席者 7人の空気を感じていた。
“普段と何も変わらない” というムードを保とうとする各々のさりげない努力が、声の調子から伝わってくるのだ。

30分ほどのミーティングを終え、”Have a nice week” と会を閉じようとしたそのとき。

マーシャ「ちょっと待って・・・」

一同、シーンとなる。

マーシャは、苦しさに耐えるように話しだした。

やっぱり、黙っていることなんてできない。
例の問題について、コメントさせてください。
この数日ずっとニュースから目が離せなかった。
TV も YouTube も、私の祖国の名を連呼してて・・・
感情的になってはいけない、と自分に言い聞かせました。
けれど、かなしくて・・・
ゆるしてくださいとは言えないです。
ただ・・・ごめんなさい。

カメラをオフにしていても、すすり泣くマーシャの声は、どんな映像よりも心にグサグサきた。

あの強いマーシャが・・・。

「あなたが謝る必要はないよ、マーシャ」
と言ったものの、私はそれ以上の言葉を発することができなかった。
他のメンバーも同じ気持ちに違いない。

沈黙をやぶったのは、トーマスだった。
「そうだ、マーシャが謝る必要はない。私の祖国チェコも、かつてソビエトユニオンの支配に苦しめられた。しかし私たちチェコ人は一人のロシア人も憎んでいない。ロシアが何をしようと、あなたが私たちの友であることは、何も変わらない。あなたは何も恥じることはない。We love you, Masha」

“We love you, Masha”

みんなが口々に言った。