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そんな独裁国家を生んだのは誰ですか?

1人の狂った独裁者が始めた戦争。
彼の国の民に罪はない。むしろ犠牲者でさえある。
彼を支持する国民はプロパガンダ漬けで本当のことを知らされてないから。
 
このような論調に私はひとまず同意しますが、そこで思考を止めてはいけない気もしています。
大国が無体を働くのは、政府と国民が共犯関係になるからではないか?
という疑いが芽生えたからです。

中国の人たちと関わって学んだこと

2019年に香港に住み始めて間もなく、ここにはまったく異なる 2種類の人間がいることに気づきました。
一つのタイプは、職場の同僚や同じアパートの住人、行員や店員さんなど、社交と礼節をわきまえ、気持ちよくコミュニケーションがとれる人たちです。彼らは、民度において現代の日本人と同等のレベルだと感じました。
もう一つのタイプは、非礼でガサツで無愛想で、すぐにキレる人たちです。このタイプの代表は、タクシーの運転手、建設・土木作業員、歩行者無視のドライバーなど。彼らは、”未開” という言葉が当てはまるレベルです。
 
同じ香港に住む人間同士で、どうしてこうも違うのか?
この謎が解けるのにあまり時間がかかりませんでした。
前者は生粋の香港人、後者は中国本土から来た中国人だとわかったからです。
それ以来、香港人は文明人、中国人は未開人、という図式が私の中で作られました。
しかし、この理解は半分くらいしか当たっていないことが、だんだんわかってきました。
 
香港人は、”PRC スタイル” という言葉を使います。
PRC とは、中華人民共和国 (People’s Republic of China) の略称です。
以前、こんなことがありました。
深圳出身の中国人が当社(@香港)に面接に来ました。
深圳は香港に隣接する中国本土の都市で、香港で職を求める人は珍しくありません。面接は英語で行われましたが、面接官(香港人)が彼の広東語能力を試すため、広東語で話しかけると、彼はまったく話せませんでした。
面接官が英語に戻して尋ねました。
「当社の社員は大半が香港人です。あなたは職場の同僚とナニ語でコミュニケーションをとるつもりですか?」
 
彼は言いました。
「もちろんマンダリン(標準中国語)です。香港は中国なのだから、御社の社員はみんなマンダリンを話せますよね」
 
日本人の私がドン引きしとるわい。
 
香港人は母語の広東語だけでなく、英語もマンダリンも上手に話せるけど、ここは香港だよ?
なんで、職場の大半を占める香港人がオマエに合わせなきゃいけないんだ?
東京人が沖縄の会社に来て、「今日から君たちは標準日本語を話してくれ」って言ったら、沖縄の人どう感じるよ?
 
でも、香港人たちの反応はいたって大人のそれでした。
面接を終えて彼が退室してから、香港人は穏やかに言いました。 
「典型的な PRC スタイルでしたね」

PRC スタイルとは
✅ 中国が世界の中心であると信じて疑わない態度
✅ 中華の外にいる辺境民族に対する、上から目線
✅ 小国は大国に合わせるのが当然と決めつける、傲慢と無知

PRC にこのテの人間が多いのを私も日々感じています。

アメリカ人という 20世紀の選民

未開の中国人以上に厄介なのは、大国意識に目覚めた PRC の国民です。

日本を抜いて、世界第 2位の経済大国。さらにアメリカを抜いて、世界一の超大国になるのも時間の問題。
世界の工場としての圧倒的なサプライチェーンだけでなく、シリコンバレーに伍する深圳、GAFA に伍する BATH に象徴されるハイテク大国。
企業も国民もリッチになり、世界中の国々がひれ伏すチャイナマネーの力。
 
困ったことに、これらの情報は嘘や誇張ではなく、事実らしい。
中国共産党当局の情報統制によって、PRC 国民が文化大革命や天安門事件の不都合な真実を知らされていないことが問題だと思っていた。
しかし、それ以上にヤバいのは、彼らが都合の良い情報のみを採り入れて、世界を支配する覇権国家の一員である自分に陶酔し、他国の人間を見下して傲慢に振る舞うようになったことではないか。
 
これって、かつてのアメリカ人と似ていませんか?
 
もともと選民という思想は、自分たちは神に選ばれた民族である、と信じたユダヤ人のものです。
世界を動かしているのがユダヤ系金融資本かどうかはさておき、ごく普通のアメリカ国民にも、この選民思想と似た、自分は世界のリーダー国の一員であるという意識が(無意識も含め)あったと思われます。
この選民意識は、WASP と呼ばれる建国の担い手やエスタブリッシュメントに限らず、「アメリカは偉大な国家である」教育を叩き込まれた白人、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系を含む、USA (United States of America) の市民権をもつすべての個人に共通する構えでしょう。
 
この構えには良い面もあります。
リーダー国家の一員としての洗練された振る舞いと矜持、他国に模範を示す行動と進取精神などです。
一方、悪い面は、他国に対する優越感からくる差別意識。大国というだけで根拠のない思い上がり。自国の言語・文化・価値観を押しつける横暴。
 
アメリカ人は、この両面をもっていたように思います。
だから、好きな国ランキングと嫌いな国ランキングの両方で上位に選ばれたりするわけです。

大国が暴走するメカニズム

USA と PRC。
現在この 2国は、政府 vs 政府と国民 vs 国民の両レベルで醜くいがみ合っていますね。
でも、私には似た者同士にしか見えません。
かつて USA 国民が歩んだ道を、現在 PRC 国民が辿っていると思うから。
思想や価値観は大きく異なるでしょうが、大国の民の悪い癖が出てしまっている点は同じです。
 
政府は、教育とマスメディアという二大プロパガンダ装置を駆使して、国民
に選民意識を植え付ける。
国民は、自分らが特別な民であるという意識と、自分の所属する国が世界をリードする大国であるというおごりが結びつくと、もっと豊かさを享受したいと考えるようになる。そして、強いリーダーを求めるのです。
国をもっと富ませてくれるリーダー。
外交で有利な条件を勝ち取れるリーダー。
戦争に勝てるリーダー。
 
政府 ⇒ 国民 ⇒ 政府という相互作用と相乗効果によって、大国は暴走する。悪しき政府が善良な国民を洗脳する、という見方はその一プロセスであり、もうひとつのプロセスは、大国意識で思い上がった国民が政府を動かす作用です。
USA も PRC も、このメカニズムが働く危険な大国だと私は考えます。

大国意識が薄い日本人は安全な国民

あなたは日本を大国だと思いますか?
私の答えは “Yes or No” です。
 
日本は覇権国家になろうとしたことがあったでしょうか?
一度だけあった、と言えますかね。
日清・日露戦争から太平洋戦争開戦にかけてのわずか数十年のこと。
世界の覇権を目指したくらいですから、当時の日本は間違いなく大国だったし、日本国民もそう自覚していたはずです。
 
その後、1945年の敗戦でアメリカ軍の被占領国になったので、覇権国家への道はなくなりました。
しかし、その 30年後に日本はアメリカに次ぐ世界第 2位の経済大国になります。その頃、日本を大国だと意識していた日本国民はどれくらいいたんだろう?
戦後の反省から大きな声でそう言えなかったか。それとも、本気で大国だと思っていない国民も多かったんじゃないかな。ナンバーツーなのに。
 
2010年、日本は中国に抜かれて世界 3位になりました。
2022年の現在、日本を大国だと思っている日本国民は多くないでしょうね。
でもね、今でもナンバースリーなんですよ?
インドや UK やドイツより大きいんですよ?
 
Yes or No と言ったのは、日本は客観的にみれば間違いなく大国 (Yes) なんだけど、国民の大半がそう思っていない (No) からです。
日本人ほど自国の実力を過小評価している国民も珍しいと思いますね。
 
で、結局何が言いたいのかと申しますと、大国なのに大国意識があまりない日本人っていいね、と思うのです。
大国である客観的事実よりも、国民が大国意識をもつことこそが危険なのだから。
 
国民に大国意識がない日本は、極めて安全で無害な国です。
USA や PRC の民に見習ってほしいくらいですよ。
 
大国意識がないから、日本人は外国人を差別しないのです。外国人に親切で謙虚になれるのです。自国の文化や価値観を押しつけたりもしないのです。他国から搾取してまで太りたいとも思わないのです。
ましてや、戦争など二度と起こさないのです。
 
私の取引先は、深圳のほかに東莞、恵州、広州、上海、蘇州などにいます。
彼ら彼女らが無意識にでも PRC スタイルを出したら、私は日本人として丁寧に彼らの間違いを正していこうと思う。
もし PRC が戦争を始めるような事態が起こったら、あなたたち PRC 国民がそれを望んだからではないですか?と私は問うでしょう。