大人たちよ。もっと映画を観よう
最近、映画に関する記事が増えました。
「当分、日本の映画は観ない」と言った舌の根も乾かぬうちに、日本の映画を 2本観ました。
☝の記事のあとに観たアメリカの映画が全然面白くなかったからです。
相変わらず、私の映画選びはなっていないようで。
だったら、アマゾン Prime Videoのレコメン機能に素直に従ったほうが確率が高いのではないか、と思うのも致し方ありませんよね。
Prime Video に勧められて私が観た日本映画は次の 2作品。
『ドライブ・マイ・カー』(インターナショナル版)
オスカーを受賞した日本映画ということで、いちおう観ておこうか、という以外の理由はなし。
『流浪の月』
監督があの『フラガール』を撮った李相日であることと、松坂桃李が出演しているから。
2作品とも、★4~5をつけたい佳作でした。
前の記事で「日本の映画界って終わってませんか?」なんて言いましたが、そんなことはないと知りました。
決して万人ウケしない映画だと思うので、おススメはしにくいです。
でも、エンタメ度全開のアメリカ映画にはない、日本映画特有のアンニュイさは悪くないと感じました。
本稿では、映画の感想は書きません。
それより、「映画の感想の感想」を書きたくなったのです。
映画を観る楽しみのひとつに、鑑賞後に誰かのレビューを読む、というのがあります。
1回観て 100%理解できる映画などありません。
もやもや感が残ったとき、もう一度観るという選択肢もありますが、私はとりあえずウェブ上の映画評を読み漁ることが多いです。
プロの映画評論家が書いたものよりも、素人と玄人の中間くらいの映画好きによる個人ブログが私の好みで、そういう文章を隅から隅まで読みます。
技術論的なことにはあまり興味がないんですね。
そういう小難しい話より、登場人物の心情や言動などについて「私はこういうことだと思った」みたいな考察を読みたいわけです。
例えば『ドライブ・マイ・カー』で言えば、西島秀俊が運転手の女性と心を通わせていくプロセス。『流浪の月』なら、松坂桃李が女の子と過ごした時間とその後の15年にわたる思い。
そういった核心部分を、言葉による説明ではなく、絵と演出によって観客に想像させるのが映画の醍醐味ですからね。
それを観た人たちがどう感じ、どう受け取ったか。それはきっと、観た人の人生経験や感性によって様々でしょう。
それを知るのが映画の二次的な楽しみ方だと私は思います。
なので、映画の感想や考察を真摯に書いたブログを読み、私は共感したり、ふむふむと感心したり、大笑いしたりしています。
でも、映画のレビューを書いたサイトも玉石混交なんですよね。
まず、「解説」とか銘打ちながら記事の 90%以上が「あらすじ」で終わっているサイトにゲンナリします。
誰があらすじなんか読みたいのでしょうか?
未視聴の人にあらすじを事細かに語ってどうする。
観た人にあらすじを読ませるのはそれに輪をかけた愚行でしょーが。
小学校のときの読書感想文であらすじだけ書いて提出したタイプですか?
次に、周辺情報を長々と語るサイトも苦手です。
同監督の前作と比べてどーのこーのとか、かの名作ホニャララ(別の映画)と同様のモチーフだの、あなたのウンチクをひけらかす場なのか?
そんな話はどうでもいいから作品そのものについて語ってくれ、と言いたくなります。
あと、妙にマーケティング視点に立った批評にも違和感があります。
もう少し短い尺に収めたほうが売れただろう、とか。
広告を打たなかったことの是非について、とか。
おまえは興行主なのか?
一観客がビジネスとしての成否を気にする必要あるのですか?
そんな玉石混交する映画レビューサイトの中で、玉を見つけたときの喜びは大きいものです。
映画が好きで鑑賞力が高い人は琴線に触れるものを書かれます。
あらすじもウンチクもなく、作品の最も重要な部分をまっすぐ感受したうえで、自身の人生経験に照らした解釈とともに新たな気づきを与えてくれます。
深いな~と感心して、もう一度観てみよう、という気にさせられます。
私は映画が好きですが、そこまでの鑑賞力はないし、観る本数もたかがしれています。
世の中には、年に何百本も映画を鑑賞するツワモノがいて、すばらしい感想を発信しておられます。
それを知るとき、この世界はまだまだ大丈夫、なんて思うんです。
なぜなら、多くの映画が伝えるメッセージは、現代人の病理に対する警鐘だと考えるからです。
映画はエンターテインメントでありながら、映画を制作する人たちは現代の社会を正しく憂えていて、映画という手段で大衆を啓蒙する役割を果たしています。
映画人が尊敬されるのは、エンタメや芸術を生み出す才能があるだけでなく、狂った世の中を正す最後の良心であろうとするからです。
映画好きの人にとっては、あたり前田のクラッカーな話でしょうね。
一方、映画をただの娯楽コンテンツと捉えている人にはしかと申し上げたいのです。いい映画をたくさん観て、何が正しくて何がおかしいのか考えましょう、と。そして世の中を良い方向に向かわせる一端を担い、あなたの人生を美しいものにしよう。
芸能人ゴシップや TikTok動画を観ている暇があったら、映画を観よう。
そして語り合おう。
私が観た 2作品には共通するメッセージがありました。
社会の悪性と人間の善性。
わかり合える人がいることの尊さ。
日本にもまだまだいい映画があるようです。