2020年GOTOキャンペーンからスタートした全国旅行支援の考察<現場からの目線>

2020年、この年は世界を巻き込んだ歴史に残る1年になったことでしょう。コロナのパンデミック、オリンピック史上初の延期、生活スタイルの変化(リモート、在宅、ワーケーション、人々の自らのwellbeing への興味、関心の向上など)、鬼滅の刃の大ヒット。間違いなく、歴史や社会科の教科書やテストにでてくるのではないでしょうか。

そんな2020年、GOTOキャンペーンという政策が取られたのは皆さん良くご存知でしょう。予算総額約1兆6千万という施策で、国内旅行の需要回復と事業者支援を目的としたものでした。先輩社員が話していました。”今までの施策とは違い、しっかりと現場まで支援が行き渡る施策になっているとゲストの人へ安心、安全を保ちながら、楽しんでもらえるよう努力している人に還元される。それまでは旅行業者が得する施策であった”と。私はそのころの施策を知らないので、何とも言えませんが、今回の施策は混乱と隙間が多く、完ぺきとは言えませんが、経済を回復させるという意味では、大きな成果があったのではないかと思われます。今回はそんなGOTOキャンペーンについて、現場からの目線と、どうしておけばよかったのか、今の日本の観光業界にどのような組織が必要なのかを記して、私の今後の活動の整理を含めて、皆さんに楽しんでいただけたらと思います。

経営への多大なる支援

GOTOキャンペーンが7月下旬ごろに始まり、東京解禁が9月下旬。10月ごろからコロナも少し落ち着いたことから、大きく影響が出始めました。高単価のホテルということもあり、施策の影響は大きかったです。ここで、平等主義の強い日本の方々は反論が大きかったこともあります。”高級ホテルしか影響が無い””安いホテルはさらに苦しくなった”などです。経済には通常好景気、不景気という波があります。これにより、大きく伸びる企業、衰退してつぶれる企業と多くあるのですが、今回の超不景気もまさにその流れの中にいるのだと思います。結果をデータとして見てみると高級ホテルだけがベネフィットを享受していたというわけではなかったと後に判明し、その後の旅行支援ではそんな批判は見る影もなくなりました。メディアや雰囲気で流れる情報が批判的な意見を増長させていたのだと思います。

2023年の7月まで停止したり再開したりと旅行需要の喚起に大きな影響を与えた旅行支援。とても素晴らしい施策だったと思います。
旅行需要を促し人の流れを作り、観光がもたらす地域への経済インパクトは大きなものだったのではないでしょうか。まずは事業をまとめてからそのあとにデータを見てみたいと思います。

時系列ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Gotoトラベル
2020年7月
GOTOトラベルを開始。当時は宿泊額のみ支援。宿泊35%(Max14,000円)と地域クーポン15%(Max6,000円)の支援。上限2万円/1人。


2020年10月
地域クーポンも配布開始。
2020年12月
感染拡大に伴い、地域別に停止を開始。月末には全国で一斉停止。キャンセル急増に伴い、キャンセル料の保証があった。
【利用実績】
利用人泊数:少なくとも約8,781万人泊(7/22~12/28チェックアウト分)
支援額:少なくとも約5,399億円
宿泊・旅行代金の割引:少なくとも約4,082億円(7/22~12/28チェックアウト分)
地域共通クーポン利用額:少なくとも約1,317億円(10/1~12/28)

2021年3月初旬
地域観光事業支援(県民割)として再開。
県民旅行需要の喚起のために施策。
補助対象期間:2021年4月1日から2021年12月31日宿泊分(1月1日チェックアウト分)まで。2021年4月25日に緊急事態宣言が発出されたことにともない、地域観光事業支援の補助の対象期間を、5月末から12月末まで延長
(ただし、8月31日までに予約・販売された旅行であること)
2021年6月
補助対象となる旅行の予約・販売期限を現在の8月31日までから10月31日に延長
2021年7月
補助対象となる旅行の予約・販売期限を現在の10月31日までから12月31日に延長
*2021年は緊急事態宣言が繰り返し発令されていた。
https://www.acpf.org/wp-content/uploads/2021/09/b694017dbfbbd3d930b1b8fe3ab19a9e.pdf
2回目:1月~3月末
3回目:4月末~6月末(一部解除)
4回目:7月中旬~9月末(地域ごと)

その後再度県民割が再開。延長を繰り返し2022年10月末まで実施。

2022年9月末:全国旅行支援について、令和4年10月11日より実施
<割引率> 40%
<割引上限額> 交通付旅行商品:8,000円(一泊当たり)
(鉄道、バス、タクシー・ハイヤー、航空、フェリーなど)
上記以外:5,000円 <クーポン券> 平日:3,000円 休日:1,000円
2022年12月27日まで。

2023年1月:全国旅行支援第2期開始。
割引率 : 旅行・宿泊代金の20%割引上限額(1人一泊あたり)
交通付旅行商品 : 5,000円交通付旅行商品以外
(宿泊商品): 3,000円日帰り旅行 : 3,000円旅行割引
条件に沿った地域クーポンの配付平日:2,000円 休日:1,000円
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まとめてみたら意外と記憶というものはすぐに消えていて、途中思い出せなかったです。それではデータを見てみます。


支援額は5,399億円。1,166,292,420,000

支援額の約6.8倍の経済効果だが、波及効果で創出された約1兆円を考えると、観光がその他産業と密接につながり、観光の発展が進むと他産業への貢献にもつながるユニークな事業であると考えられます。どの分野に大小どのような波及効果があるかなど調べたくなります。
高価格帯に利用が集中したと当時話題になっていたが、そんなことはない。一人当たり金額5,000円〜10,000円のいわゆる中間層に集中していた。そもそもの価格帯に応じて宿数、室数が分布通りに集まっているため、変に偏ったりはあまりしないはずである。

とにかく、経済効果と瞬発的な勢いは現場にとって経営陣にとっては大変ありがたかったであろう。
現場対応から話すとあまりに処理作業が煩雑、複雑、面倒すぎて処理作業の負担は大きく増えた。

旅行喚起は間違いなく成功したのであろう。
ただし期間が大変長かったり、割引率の低下に伴い影響度はやはり低くなったように感じた。使えなくても文句を言う人はいなくなり、使えたらラッキーと思う人が徐々に増えていた。これも事前に懸念していた販促後の予約衰退を起こさないよう自然消滅のように消えていくキャンペーンとして旅行喚起のマイナス要因をうまく打ち消していった。

国民全員の税金で賄われた今回のGOTOキャンペーンから全国旅行支援。
観光業界や、旅行者にとって大変嬉しい施策であった。感謝しています。



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