見出し画像

団子柄のワンピース

昨日のこと。 

随分前に別れた恋人と久しぶりに連絡をとり、ランチを一緒に食べるという約束をしたので待ち合わせの白金高輪駅にいた。 

太陽が "ぷるぷる" と揺れていて、暖かく過ごしやすい日だった。太陽は地上からおよそ3メートルの高さに浮いていて、身長170センチのわたしでも頑張れば手が届きそうだった。くっきりとした緑色で、表面を金色のうぶ毛に覆われていた。太陽の下に立つと、ぽかぽかと顔のあたりが温かくなってくる。 

周りを見渡すとそこかしこに同じ緑色の太陽が浮いていて、人びとは喫煙スペースに溜まるが如く太陽の下に立ち、ぽかぽかになるとその場所から離れていった。 

この時点で「これは夢を見ているな」と見当はついていたのだが、実際の太陽がどれくらいの高さにあって、どんな色で、表面にどんな毛が生えていたのかを思い出すことはできなかった。本来はもっと高い位置にある気もしたし、毛はもっと濃かった気もした。 

・・・ 

夢には大きく分けて、目が覚めてから夢だったと気づくものと、夢の中で既に「夢だ」と気づきながら展開していく2つのものがあると思うが、昨日は明らかに後者だった。 

「太陽ってこういう感じだっけ?」とわたしは訝しむのだけど、太陽光(?)がぽかぽかして気持ちがいいのでとりあえずよしとする。 

・・・ 

しばらく経ってかつての恋人が現れた。 

ロングだった髪がボブになり、軽くパーマをかけている。細かった眉毛は自然な形に整えられていて、今風のメイクという感じだ。大人になってとても綺麗になっていた。わたしは妙に誇らしい気分になった。

ボルドーに小さな白のドット柄の入った古着っぽいワンピースを着ているのだが、胸に漢字で大きく「団子」と書かれていた。よくよく見ると、ドット柄に見えていたのは全て小さな団子のイラストだった。 

団子?団子?団子? 

わたしは気になって「団子?」とそのまま訊いた。数年ぶりに会ってかけた最初の言葉が「団子?」である。 

恋人も同じく「団子」と言った。
「そう、団子。買って帰らないとだから」 

「なるほどね」 

何が「なるほど」なのか、さっぱり分からなかったがそれ以上深くは追求しなかった。眉毛の太さが変わったのと同じように、服装の趣味も変わったのだ。当然のことだ。 

わたしたちは約束していた通りに白金高輪駅から少し歩いた場所にある『芋煮専門店 芋煮屋-oimo-』という店に入った。大した会話もせず、もくもくと芋煮を食べるわたしたち。味はしみじみと美味しかった。 

…………ここで目が覚める。 

結局現実とリンクしていたのは「白金高輪」という駅名くらいだった。でもしばらく白金には行っていないし、もちろん太陽に毛は生えていないし(今思うとあれはキウイだ)、白金に芋煮専門店などないし、「かつての恋人」は全く知らないひとだった。団子柄のワンピースが今でも目に焼き付いている。 

一応、インターネットで「団子 ワンピース」と検索してみたら、お団子頭のワンピースを着た女性の画像がたくさん出てきた。
そりゃそうですよね。



#エッセイ  #夢

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?