あすにも
消えてしまいそうな
老犬の
小さな手に
まだまだ生きるつもりの
わたしの
手を添える
老犬は
穏やかなまなざしで
わたしの
存在を
感じている
不揃いなふたりの呼吸と
頬をかすめる12月の冷気が
朧げな不安を誘う
「いつでもおいで」
老犬は
耳だけをわずかに
ぴくっと動かす
「自由になったらわたしの中に
いつでも遊びにおいで」
老犬はひっそりと笑う
全てを見透かす穏やかさで
ひっそりと笑っている
わたしは少しだけ
混乱する
頭を撫でてやる
老犬の頭蓋骨は小さくて
人間の赤ちゃんのように暖かい
#詩
#犬