プレーン・ブレッド・ランデヴー
「私、超熟しか食べられへんねん」
以前ルームシェアをしていた友人M氏の言葉、食パンの話だ。甘さだかもちもち具合だかなんだか忘れたけれど、とにかく超熟以外の食パンだと気持ち悪くなって食べられないのだそう。
と言いつつ、高級食パン「に志かわ」のは食べていたことを思い出す。なんだ、ただの高級志向か。もっちもちのふわっふわで、あまあまのぷあぷあでおいしかったもん。そりゃ食べるよね。
そういえば最後まで冷凍庫に1枚放置されていた「に志かわ」、あれM氏食べたのかな。もしかして捨てた? なら、わたしが食べればよかった。ここぞとばかりにバターを塗るの。マーガリンじゃなくて。
もっちもちのふわっふわ。あまあまのぷあぷあ。トーストしてサクサク。
塗ったバターが食パンのバターを誘ってきて、なんかわかんないけど背徳的なにおいがするの。すんすん。きれいなきつね色。きつねみたいにスッとした眼ってすき。突き刺すような瞳にあこがれる。眼福眼福。
わたしは銘柄にこだわりはなくて、なんでも食べる。でもスーパーで売っているやつなら超芳醇の甘さがよかった。ああ、潤沢な資金さえあれば「乃が美」の食パンにモフりつきたい。あれはトーストせず生で食べるの。
食パンをそのまま焼かずに食べること、うちでは「生で食べる」と言っていた。世間様の常識だと思っていたけれど、そうじゃないかもしれない。わたしの世間は得てして狭い。それを忘れてはならない。
それから、まちがいのないこと。フレンチトーストは官能的。
お店で食べるフレンチトーストは当然おいしい。ちゃんとしみしみにしてある。ホテルオークラのが世界一おいしいみたい。画像検索するだけで昇天。食べてみたいな、でもなんだかんだ自分でつくるのがすき。
前日から浸けこむのが楽しい。牛乳も砂糖も目分量。自分好みの味は感覚が知っている。バットに並べて、ひたひた。少しだけ早起きも頑張れる、かもしれない。なんせ冷蔵庫で彼女が待っているのだから!
たまご液をからませて、しみこませて、しっとりして、ぷるぷるして、つやつやして、ああ、やらしい、バター香るフライパンにその身をひりつかせて、少し焦げて、しゅわしゅわ、とろり。んもう、ヘンタイ。
食パン。プレーン・ブレッド・ランデヴー。
何かと一緒に食べると幸せ。バター・マーガリン・ジャム・たまご。でもそれは食パンが、自分のおいしさをちゃんと知っているから。小麦の味もいいけれど、何かと一緒だと、2倍幸せ。そういうスタンス。
生でもトーストでも、たまご液に浸けちゃっても。自分のいいとこ、ちゃんとわかっていればそれでいいんじゃない。バターと出会って、お互いもっと素敵なところを見つけていけばいいんじゃない。
わたしはここで立っています。隣にいてくれたらうれしい。幸せにしてもらおうなんて思わない。すきに楽しくなっちゃうから、よかったら分け合いましょう。誰かと一緒にいると、2倍楽しい。そういうスタンス。
自分でつくる幸せがすき。料理も、だからすきなのかも。