アメリカ議会占拠で5人死亡(2021年1月9日放送)

*以下の原稿は、生放送中に聞き取った内容を一部整理しつつ書き起こしたものです。文責はデモクラTVにあります。

【今週の出演者】(敬称略)
司会:
川崎隆章(放送研究家)

コメンテーター:
孫崎享(評論家・元外務省国際情報局局長)
木下ちがや(政治社会学者、明治学院大学国際平和研究所研究員)
首藤信彦(市民政治バンド代表)

★アメリカ議会占拠で4人死亡
アメリカ連邦議会は7日、民主党のバイデン次期大統領の勝利を正式に認定しました。ただ敗北の受け入れを拒むトランプ大統領が扇動した支持者が暴徒化し、議会に乱入。議事堂を一時占拠し、4人が死亡する混乱の末、ようやくバイデン勝利が確定しました。事態を受け、チャオ運輸長官が辞任を表明したほか、ホワイトハウス高官が相次ぎ辞任するなど、トランプ大統領の解任を求める圧力が強まっています。(東京新聞8日朝刊3面ほか)


首藤
死者4人となっていたが5人。暴徒化、女性が議場内で、3人が外で、もう一人は警察官。前代未聞、200年にいっぺんの出来事。建国以来の悲劇。世界史的な悲劇。民主主義が死んだ日だといってもおかしくない。アメリカは自由と民主主義のシンボルだった。彼らはそれを自慢にして世界もそれを求めていたわけだが。選挙結果を大統領が認めない、直接電話して水増ししろとか。民主主義というものに対して大変な疑念が出てきている。私も議員だったし国際関係もやっていたから議場に入ったことはあるが、大変セキュリティが厳しいところ。もちろん日本の議員だから優遇されるがそれでも大変。そもそも暴徒は入れない。black lives matterの時も中に入れない。トランプが入れさせた。
暴徒はペンシルヴェニア・アヴェニューをまっすぐいってはいれた、トランプは結果がおかしいといっている愛国主義的な議員を応援しろといった。それ自体が法律違反だが、それだけじゃなくて。ふつうは暴徒は部屋までおしかけても芝生まで入れない、建物に登れない、それだけのセキュリティがあるところにスルスルと普通は入れない、そこに入って盗んだり壊したりしている。200年大事にしてきた民主主義を根底から崩す行為、さらに血が流された。押し返せなかった、暴徒が100人いれば200人の軍隊がいる。すぐ隣にペンタゴンがあるし、近くに他に空軍の基地もある、10分もあれば大量の軍隊を集められるのにそれをしなかった。最後の砦はSS、ドアを破ったら殺す。それをしないと入った人がマシンガンを乱射した場合大量の人が亡くなってしまうから。その結果女性がなくなった。ニュースで流れてないというが、youtubeで死んでいく映像が画面に大きく映し出される。これは本当にアメリカの民主主義そのものが否定されたことで大変な問題。
アメリカは憲法に革命権を認めている。一番古い形、18世紀の部分もたくさん残っている。憲法は武装する権利、政府を覆す権利を認めている。トランプはそれを利用した、大変なこと。いま弾劾裁判を起こそうとなっているが、同時に憲法修正25条、大統領を取り換えられる、暗殺されたり病気で麻酔から起きない、そういうときには副大統領が発議して換えることが可能だが大変な手続き。トランプはあと2週間の任期の間にもう一回イランへのミサイル攻撃とか核施設への攻撃もやるんじゃないか、各ボタンを押す可能性だってある。いま議会で大統領が精神喪失状態で罷免しようという動きまで出ている。日本はそんなこと起こりっこないと静観しているが、これは大変な事態。世界の指導者はみんなこれに対峙しているが日本だけもさーっとしている。
もう一つの大きな問題、暴徒というがこれはQアノン。新しくできてきた極右団体。それがアメリカの基礎的な価値、宗教、白人至上主義と結びついてできた、ものすごい勢いで広がりつつある。ヒラリー・クリントンを追い詰めたのも彼ら。大きな勢力になっている。警察官やSSにシンパがいたりするので、今回もスルスルと入ることができた。Qanonは世界的に広がり、日本にもシンパがいてアマゾンでもTシャツが買える。幸福の科学が1月6日の運動について演説している映像が流れているが。日本でもかなり市民権を持ちつつある。10年20年経ってみると、、2021年は近代民主主義が大変なダメージを受けたということになるだろう。

木下
はっきり答えがあるわけじゃないが、トランプ支持者たちが駆け上がってくる映像に既視感がある。1989年とか、東欧革命。議場に突入するのが悪いかといえば2014年の台湾の例もあるが、あれを民主主義の破壊という人はいない。ひまわり革命とか。青瓦台を取り囲んだり、ベラルーシの国政選挙とか。一見似たようなものは世界中で起きている、しかもサイクルがある、1989年にたくさん起きた。日本でも1960年に国会突入。
ただ特徴的なのはアメリカで起きたこと。もっとも古い民主主義国。正当性を常に誇示してきた国で起きたのが異例であるととらえてみていた。しかしこれもある種の民意、トランプも7千万とってる。議会制民主主義の危機。

孫崎
私はこの事件が起こる前、日本ではトランプの支持、評価が違っていると思う。どういうことか。12月24日のアメリカ世論調査、トランプが敗北宣言を行うべきかどうか。当然のことながら民主党の支持者は敗北宣言すべきだと。日本の新聞はそのまま報じている。一方共和党の支持者は57%が行うべきではないと。選挙にどれくらいの不正があったかは別として、共和党の大多数は敗北宣言を行うべきでない。不正を想定している。そういう土壌があることは日本では知られていない。
もう一つ同じことだが、トランプが2024年出馬したら投票するというのが30%、情勢によるが13%。合わせて43%。トランプ支持というものが敗北後も根強く残る、その延長線上の極端な部分が今回起きた。
そういう意味では皮肉な言い方だが、今回の突入事件でいちばん被害を受けたのはトランプ。もしこの事件がなければ2024年に勝てたと思う。というのはバイデン、国内政治、ちょとやそっとじゃ立て直せない。すると次の選挙は厳しい。それを吸収可能だったのがトランプだった。つまりトランプが最大の被害者。

木下
まったく同じ意見。トランプは自分が巻き起こした民意に彼自身がとらわれてしまい、自分が自分にのまれてしまった。

孫崎
その延長線上で考えてみると、バイデン政権というものは…自民党だって支持者は20%。反バイデンがものすごく強い政権になるだろう。トランプ支持者はもちろん支持しない、明確に30%は支持しない勢力がある。もう一つ、民主党を見てもウォーレン、サンダースのグループを排除している。このグループもアメリカの中で30%ぐらいいいる。つまり両端、右と左のそれぞれ30%が支持しない。しかも各々過激派がいる。怖いことに銃が自由な社会。あと4年、アメリカの内政は不安な状況が続くのでは。

木下
日本の政治も似ている。安倍という強大な政権があった。新自由主義も右派も抱き込んでいたが、菅政権は右派とそりが合わない。むしろ右派の言論人たちQアノンみたいな方向に流れている。菅は新自由主義。アメリカもネオリベラル系、ソーシャリストリベラル系、右派、日本も似てくると思う。

首藤
アメリカは世界の政治のシンボル。日本は疑似民主主義国家みたいなものだが、世界はアメリカの自由と民主主義を模範にしていたそれが崩れていくのは大変なこと。トランプが電話で選挙結果を変えさせようとしたのはまるでジンバブエといった人がいた。リーダーシップは悪いところも若干あっても多めに見てた。湾岸でもなんでも。大目に見る。でもアメリカの言うことを聞かなくなる。

木下
アメリカの帝国主義の正当性は自由と民主主義にあったがそれがなくなってしまった。

首藤
日本は理念がないがアメリカにはある。リバタリアンとリベラルは根本的に違う。

木下
今回似てると思ったのはトランプはアウトサイダーだったのに大統領になった。選挙で勝てるならくっついてくのは自民党と似てる。

孫崎
今回の事件で一番喜んでいるのは共和党の主流派。2024年はどうなるか、共和党は圧倒的にトランプが強いが、その他ペンスを始め次の大統領になりたい人たちも動けなかったが、これで大っぴらに反トランプ、次は私がなれるということで、主流派が堂々と主流派になれる。これまでは表に出られなかったのが今回変わった。

木下
主流派も弱っている。冷戦崩壊以降、極右リバタリアンが台頭。極右テロが相次いだ。そうした人たちの期待を担うのがブキャナン。この30年で、共和党の旧主流派はほとんどいなくなった。

孫崎
私が言っているのは金融資本と軍産複合体。これが主流派だと思う。

木下
政治的な代弁者がいないのでは

孫崎
そんなことはない。

首藤
アメリカは厚い。共和党がもう大統領なんか出さないだろうという時期にブッシュが出てポピュリズムにのった。オバマに負けたがトランプというポピュリズムの極致が出てきてそれに乗った。7400万というのは二度と手に入れられない数字。保守派もトランプ仕方ないというところ。

木下
帝国主義は人種ナショナリズムと相性が悪いが、共和党は80年代に大転換して民主党票を抱え込んで再建、かつ90年代にグローバリズム、ブッシュ政権がヒスパニックを取り込んだが。結局一番白人ナショナリズム、金融資本も使えない。共和党の戦略として動かしようがない、どうすればいいのか。

首藤
アメリカは宗教国家。旧大陸から逃れて西へ行こうという人たち。白人社会はアメリカの根幹なのにヒスパニックとか黒人とかが入ってきたことで危機感。ヨーロッパから来た白人の流れが止まりつつある。今回突入したのは100%白人、現実とかけ離れた人が7500万いるという恐ろしさ。

木下
でも全員そうかといえばそうでもない。ロス暴動もあった。30年たつと混ざっちゃうので問題にならなくなる。移民があまりいない地域の人たちが白人ナショナリズムに染まっていく、時代遅れの存在。

首藤
ブルーステート、レッドステート。ジョージア、ナッシュビルにいましたというのがアメリカのハートランド。アメリカの建国の非常に大きなバックグラウンド。日本人はすぐ絆というが、それがアメリカでは宗教と一体化して厳然とある。

木下
現実はスタートレックでも黒人の女性が艦長の世界。ナポレオン三世を支えていたのは現状に合わない戦力。今回も去りゆく者の記念碑という気がする。

首藤
アメリカは誰が大統領だろうとアメリカだけでうまくやっていこうというところに戻っていく。

孫崎
形式的なものと実質的なものがある。民主主義を標榜している人たちを国民が支持していないのが実態。

木下
ルールを信じない。なぜバットを2本もっちゃいけないのか。民主主義は幻想というところがある。それをもう信じない。

孫崎
菅よりはくじ引きで選んだほうがよくなるという話を書いた。指導体制に対する不信がある。

木下
昔の自民党も…

首藤
くじ引きはインチキがあるからね(笑)。
皮肉なのは共和党は誰が作ったか、エイブラハム・リンカーンですよ。それがいつのまにか軍産複合体と。食い違ってる。アメリカは変わってくる。今までは自由と民主主義。でもサンダースなんかソーシャリズム。これまでは死刑になる人もいたのがソーシャリズム。大きく政治思想が変わってくる。

川崎
民主主義という言葉に包まれて育ってきた世代。美しく掲げて運動したり教育に臨んだり。ところがここへきて両刃の刃だと。改良か取り換えるのか。でも民主主義という4文字が体にしみこんでる。どうやって過ごしていけばいいのか。

孫崎
民主主義、自由主義は追及していくべき理念だと思う。でもおかしい現象が出てきている。それをどう防いでいくか。選挙でお金使い放題とか。どうすればおかねを使わない選挙ができるかを考えないと。それを考えていくべきだと思う。

木下
アメリカ大統領選そのものはよかったと思う。投票率高い。日本なんか選挙行かない。問題はそれを受け止める条件が制度の側に欠落していること。新自由主義とか、社会経済的なことができないのが大きい。

首藤
民主主義は寿命が来ている。人が増え異民族が入ってくると機能しなくなる。ローマは共和主義。民主主義は一人ひとりが支配者で独裁を打倒するにはいいシステム。でも打倒した後に経営することはできない、そこに共和主義が出てきた。責任感のある人がしっかり協力してやろうと。
日本は戦後民主主義。進駐軍が教えてくれた。でも納得してどういいシステムを作るかは教えてくれない。
共和はリパブリカンではない、春秋戦国時代の墨子の考え方とか、それ以前の理想主義、王様がいなくなったときに協力、それが共和。リパブリカンを翻訳するときにそうつけたが、アジアの理想の共和、サンスクリットにあるもの、アジアの古いけど価値ある政治思想で共和主義をやっていきたい。みんなが考えて協力する共和主義になるべき。アジア的な理想社会の政治システムを考えていかなきゃいけないと思う。

川崎
孫崎さんのお話ではジャーナリズムの役割が大きいと思う。

孫崎
ところがジャーナリズムの人たちはジャーナリズムを勉強してない。法学部の人たちがNHKや朝日新聞に行く。権力を構成する人たちのメンタリズム。でもジャーナリズムはあるべき姿は何か、権力と対峙しながらいく。

川崎
国の広報とごっちゃにしている人が多い。

孫崎
プラウダもジャーナリスト、人民日報もジャーナリスト。日本はこっちに近い。

木下
他方、SNSと新聞の区別もつかないような新聞もある。そこまで陳腐化したものと反権力がヘンに混じって。いまはヴューワー稼ぎ。創価学会とか連合、共産党を取り上げるのはのぞいてくれるから。縁日のイタチと同じ。両面ある。単に権力が遠いだけ。

首藤
我々がジャーナリズムに対して持っている憧れが、今はなくなっている。新聞社も人がいない。食っていけない。3分の1か4分の1、必要量の。社会全体がプラウダ。ヨーロッパがまだ強いのは個人がお金をもっていて、人を集めて独自の研究・報道機関をもっている。ところが日本にはない。お金持ちは安っぽい。世の中を変えるためにお金を出そうという金持ちがまったくいない。

木下

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