「ふるさと納税」も立派な経産省案件(デモクラTV本会議 2020年7月4日放送分から)

コメンテイター
伊田浩之(「週刊金曜日」副編集長、WEB編集長)
木下ちがや(政治社会学者、明治学院大学国際平和研究所研究員)
山口一臣(「THE POWER NEWS」代表、元「週刊朝日」編集長)
丸山重威(元共同通信編集局次長、元関東学院大学教授)
司会:川崎隆章(放送研究家)

「ふるさと納税」も立派な経産省案件

ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の決定は違法だとして、市が取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)は30日、除外決定を違法として取り消しました。判決では「泉佐野市は社会通念上、節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」と批判しつつも、新制度移行前には返礼品を規制する法律がなかったことから、過去の多額な寄付集めを理由とした除外決定は違法だと結論付けました。総務省は判決を受け、泉佐野市など4つの自治体について新制度への参加を認める方針です。(東京新聞1日朝刊6面)

木下

泉佐野市がamazonとか返礼品を贈ってるわけですよね。僕は泉佐野市の言う通りだと思う。好きにやっていいんでしょ? 何が悪いんですか? 規制しました、じゃあ、amazonがダメで牛肉がいいっていう基準は? 言われたら答えられないですよね。全部やめるべきだと思う。この制度自体が。そもそもこんな制度作る事自体が、おかしくて。これ、我々の税金ですよ。なんで特定の業者の物を買ったら、返礼品にしてね…普遍的な税金を…別の自治体に寄付するからって、交換材料にするのかって言うのは、根本的におかしいわけです。こんなことやってんのが。普通だったら、ふるさと納税って言うんなら、地方交付金で普遍的に自治体に対して交付すればいいだけの話。それをわざわざ、変な業者を間にはさんで。これも超経産省的な発想じゃないですか。産業政策でしょ、要するに。税金を地方に配るのを産業政策にするなんて、狂った所業ですよ。それに対して、ある意味では、お前たち=経産省が思うようなことを一番やっただけじゃないか、というのが泉佐野市の主張なわけです。それはそうですよね。

伊田
読売の報道だと泉佐野市は、制度開始以降の11年で870億を集め、ピーク時には返礼品の経費に寄付金の7割を充てたがそれでも積み立てた基金が50億残っていると。

木下
どういうことかと言えば、本来はほかの自治体に収められる税金が、泉佐野に集中したわけです。その7割が売買に使われたっていうこと。単に税金削られたってだけじゃないですか。無茶苦茶でしょ?

丸山
要するに、例の、中抜きさ。

川崎
モノを買うにしたって、業者から直接買った方が安いですよね。ふるさと納税で買うよりも。

木下
そう。しかもそれに自治体の職員のマンパワーが割かれているわけでしょう。めちゃくちゃムダじゃないですか。

丸山
税金っていうものの考え方は、基本的にお金がない人に対して、どうやって応援するかを考えるのがそもそも税金の使い道なんですよね。再分配。その機能をもってるはずの税金を、商売につかってる、まさに新自由主義の中抜きですよ、これもね。商売に使ってるんだからね。

木下
菅さんが総務大臣の時に、これ、入れたわけですよ。インバウンドもそうですけど、菅さんってやっぱりすごく、…そういう意味ではポスト工業社会っていうか…日本って、製造業中心、車とかを輸出して経済成長してきた。それが産業空洞化起きた中で、ポスト利権ですよ、それをインバウンドとか、ふるさと納税みたいな、こういう新規開拓産業政策みたいな広げていくことによって…新しい自由民主党の基盤を作っていくという、そういう路線ですよね。

伊田
コロナのお米券とかお肉券というのもそういう発想ですよね(笑)。

木下
沖縄だってそういう目線で見てきたわけですよ。辺野古問題を解決するには、ひたすら産業振興。それを基盤にしてユニバーサルスタジオとか。この菅さん的路線が安倍政権の根底にあって、その経産省がコロナ対策をやろうとしているわけですよ。これどうなりますか、って話です。

山口
やめた方がいいと思います。ふるさと納税って言葉自体がはっきり言ってインチキだから。要するに納税じゃないんだもん。多くの人の印象としては、自分のふるさとに税金を納めるイメージかもしれないけど、そうじゃなくて寄付ですから。で、寄付が控除されて自分の税金がちょっと免除されるって言うから、実質上行って来いになるんだけど。それから「ふるさと」って言うのも、確か最初の頃は、自分が住んだことあるとか、出身地とか、自分とゆかりのある所って話だったじゃない。いまどこでもよくて、だからこういう競争になる。牛肉欲しいから松阪とか。サイトがいっぱいあるんですよ。

伊田
私もやったことないから仕組みはよくわかんないんだけど、ふるさと納税で検索したら、どこがお得かとか、そういう一覧がパーッと出るわけです。

川崎
ショッピングみたいになってるんですよね。

山口
川崎さんがおっしゃる通り、直で買った方が安いんですよ(笑)。

木下
何が起きるかといえば、競争原理。そうすると、ネットでアクセスが上がるためにはどういうことをするか、広告会社が入ってきて…二重三重に中抜きされる仕組みになってる。

川崎
小さな自治体には返礼品ないところもある。現金を受け付けるだけで。

山口
返礼品なしでいいじゃないですか。

木下
要するに国が分配すればいいわけですよ(笑)。元に戻せばいいだけの話。

山口
ただ変な話、食ってる人たちが一杯いるからね。産業になっちゃってるんで…

丸山
地域の産業振興になってる部分はあるかもしれないね。

木下
広告会社でも専門のところがある。利権化しちゃってるので…引きはがすのは大変ですよ。

川崎
消費を奨励する…名物を奨励する機能は確かにあったわけで、これのせいで、ここにこんなおいしいハムがあるとか知ることはできた…名産品を発掘する機能はあった。

木下
でも泉佐野の名物はamazonじゃないですよ(笑)でも最初はすごい反対意見はなかった。なんとなくわかんないけど。

山口
言葉面に騙されたね。

伊田
フェイクニュースだ。

丸山
一方で地方財政がダメになってきてるという事情があるわけでしょ。なんとか地域振興しなくちゃいけない。そういう所に本来、きちんとお金を送らないからいけない。

山口
ふるさと納税システムはよくないということで、この4人は一致してます。あえて泉佐野の問題は、自分たちが作ったルールみたいなものの中で、そこで競争させたわけじゃないですか。それなのに一生懸命頑張ったやつをダメだって言い出した。これも安倍政権の特徴。王様政権なんです。気にくわないとか、俺の考えてる事からはみ出したらダメじゃないかといって連れ戻してくるみたいな、それが表れたのがこの裁判のような気がして。で、高裁まで負けてんですよね。最高裁でひっくり返して勝った。まだ最高裁にちょっと良心が残ってた。やらしといて頑張ったやつを取り締まるのがおかしい。

木下
そもそもルールを設定した側の問題なわけです。ルールにのっとってやった、そのこと自体は泉佐野は責められないですよ。もちろんバカだなと思いますよ。何やってんのかなと思いますけど、人の税金を。でもそうなんですよね。

山口
本当に最初に、出身地とかゆかりの土地程度にとどめて、amazonとか排除して…自分の地場のキャベツとか工場がある産品とか、ぐらいで留めておけば。

木下
調査報道でやってることころあるかもしれないけど、どうやって変質していったのか。

山口
そうですね。木下さんがおっしゃるように、経産省が裏で団扇をバタバタ煽いでるんじゃないか(笑)

木下
フェイスブック見てて沖縄に、辺野古とか頑張ってほしいから、ふるさと納税しますとかって。いい話じゃないですか。そういうものかとおもったら、全然違う、あれっ(笑)。巨大利権化産業になってますね。

山口
楽しく使ってる人もけっこういるけど。

伊田
これも第一次安倍政権が。総裁選で安倍さんが言ってたから、菅総務大臣が導入したんですね。

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