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男のカレー

普段自炊をしない男が気まぐれに自炊をすると、妙なところにこだわりが出てきてやたらと珍しいものを作りたがる謎現象がこの世には存在すると言われているし、なんなら私もそれを地で行く人間だと自覚している。というもの、カレーを作るにあたっては相当のこだわりがあり、ついこないだ納得のいくものを作って1週間ほど食べてきた。

まず、私の作るカレーはおそらくカレーではない。イタリア料理で言うところのソフリットにカレールーを溶かしたものである。大学進学とともに一人暮らしを始めて、初めの頃こそ真面目に料理をしていたものの、次第に忙しさにかまけて独身男性にありがちな外食中心の食生活になっていったことは、ありきたりなことなのでご想像にお任せする。そんな中でもカレーを作ることは定期的にやってきたように思え、特に常温での食料の長期保存が容易な冬季においては頻繁に作ってきた。

一人暮らしをし始めて、初めの頃に作っていたのは学校の調理実習や林間学校で作るような一般的なルーカレーであった。たまねぎ、にんじん、じゃがいも、鶏肉を市販のカレールーの表記通りの分量と切り方で拵え、炒めた後に水を加えて一煮立ちさせた後にルーを加えると言った具合だ。この方法ではカレールーの価格に比例して満足度は向上する。良くも悪くも安定しており、まあ、誰がどう作っても結果的には同じようになると言うわけだ。ただ、食事に対してハズレを作らないと言う意味でこれは大変効率が良く、かける労力もさほど大きくない。しかしながらただただ同じようなものを食べ、作る程度では食への探究心は満たされないもの。様々な探求の結果、今般では下記のように作っている。

先述した通り、ソフリットを作っていく。スーパーで投げ売りされている中国産にんにくを1玉、たまねぎ3玉、にんじん3本をとにかく刻む。にんにくは2,3mmの立方体くらい、たまねぎとにんじんは1つずつ刻みの荒さを変えてみると面白いが、大きくても5mmの立方体くらいにしておく。下処理としてたまねぎの皮をむき、ヘタや固くなっている部分は取り除くが、にんじんの皮は剥かなくて良い。それよりも分量が多いのでとにかく効率的に刻むほうが良い。私はほとんどこのためだけにフープロを買ったし、お持ちの方はフープロにかける時間を工夫するなどして刻みの荒さを作り出すことをおすすめする。

注意点としてにんにくとそれ以外は分けておいてほしい。なぜならにんにくはこの後多めの油とともに低温から鍋で炒める必要があるからであり、これはにんにくの香味をしっかりと油に移して香りを立てることができるからだ。炒めたニンニクと油にはひき肉250g程度を追加し、火が通るまでそのまま炒める。肉に火が通ってから徐々に野菜を入れてゆく。このとき適宜塩を入れていくとしっかり野菜の甘みが出てくれるので味を見ながら調味する。旨味が弱いと感じれば顆粒コンソメを少し足して、引き続き弱火で加熱していく。とにかくゆっくりしっかり火を入れて食材を焦がさないように注意する必要がある。だいたい良い感じにまとまってきたらカットトマト缶を入れる。そのあとハンドブレンダーでかき回したり、一部別で炊飯器の煮込みモードで加熱するのも良いと思う。暇なときに鍋を見てやり、基本的には放置して一晩放置したら、再び弱火で加熱しつつカレールーで味付けをしていく。このときも塩とコンソメで自分好みの味付けにしていけばよい。カレールーについては上等なものが用意できるのであればそれでもいいが、スーパーのプライベートブランドの安物でも十分満足できる味付けに仕上げることができる。

食べたいと思ったときにこれが作れるわけではないのだが、暇な休日に少し意味のある時間を作りたいときなんかはちょうどいい作業量と言える。一つだけ注意点を挙げるとするならばキッチンからしばらくたまねぎとにんにくの匂いが取れないので臭いをつけたくないものを近くに置かないようにしたい。ちなみにこの作り方は前に住んでいた街の飲み屋のメニューに近いのだが、そこではもっと手をかけていたし味も工夫していたと思う。そしてその店の周りではだいたいこのカレーというかソフリットの匂いがする。美味しいものには相応の手間がかかっており、相応の代償があるのだなと感じてならない。

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