試合解説 Craig Jones VS Chael Sonnen
新たに思いついたシリーズ。プロ選手の試合を解説してみる。
※あくまで実力はADCC本戦レベルからは程遠いグラップリング観戦マニアが独断と偏見で書いた記事になります
第一回は、2017年ADCCより、Craig Jones VS Chael Sonnenです!
2017年はまさにCraig Jones躍進の年。そこまでトップ勢とは思われていなかったオーストラリアの選手がEBIで活躍し、ADCC本戦に出場。階級別トーナメントではLeandro LoとMuriro Santanaからタップを取り驚かせ、そして無差別級一回戦でUFCの超有名ファイター、Chael Sonnenと対戦します。
まず、開幕早々Craig Jonesは座ります。何を狙っているかというと、Craig Jonesの得意ポジションZガードです。
ここでChael Sonnenは重大なミスを犯してしまいます。Zガードは7:3でボトム有利のポジション、なのに誘いに乗って深追いしてがっつり体重を載せてしまいます。
Zガードをパスする方法はいくつかあります。たしかに、ニーシールド、ここでいうCraig Jonesの右足を潰してパスする方法もあります。が、Craig Jonesのほうが上手。Zガードからの攻めのパターンをいくつを持っています。
1つが、キムラグリップ。Chael Sonnenの右腕を狙い、Chael Sonnenをビビらせます。本当に取るつもりだったかは個人的には疑わしいです。相手が無警戒過ぎたら取ろうかなくらいだったのでは。これは相手の姿勢を上げさせるための誘い水だったのではと思います。そう、グラップリングはつまるところマインド・ゲーム・・・。
ここでChael Sonnenがべったり乗っていたプレッシャーを解いて、身体をあげます。ここでCraig JonesがChael Sonnenの右足を掴むスペースが出来ます。そう、これがCraig Jonesの必殺パターンです。この後、ハンドファイトの小競り合いがありますが、またもキムラグリップを狙ったりします。Chael Sonnenは右上をキムラグリップ取られるのは警戒し始めましたが、左腕で脇差を続けます。これは右足を取るのにあまり良い状況ではありません。その中で、Craig Jonesがもう一つの攻めのパターンを見せます。
ミアロックと三角絞めです。ミアロックとは、その名の通りFrank MirがUFCにて極めた変形アメリカーナ。あんまり極まることは見ませんが、今回のCraig Jonesのはいいところまで行ってたでしょう。
ミアロックが極められなくとも、左腕を拘束し続けていたらCraig Jonesは左足を抜いて三角絞めにもいけます。左腕を拘束され続けるのはChael Sonnenにとっては危険です。
このようにChael Sonnenの意識を分散させて、足を取る準備を進めていきます。右腕も左腕も危ない、となると自ずとChael Sonnenの姿勢が浮いてきます。Chael SonnenもZガードから足を掴まれる危険性を知らないことはなかったはず、しかしここまで詰められると自ずとスキが生まれてしまいます。これぞマインド・ゲームであり、グラップリングにおける詰将棋なのです。
そしてとうとう、Craig Jonesが伝家の宝刀を抜きます。Chael Sonnenの右足を掴みます。
私は勝手にこれを「Craig Jonesグリップ」と呼んでいますが、こうなると相当やばいです。
Craig Jonesはこのタイミングでしっかりと自分の右足を相手の足の間にしまいます。これが結構重要です。右足を相手の腰の横に残して置くとお互いDead or Aliveになってしまい、有利がなくなってしまいます。(Dead or Aliveってずっと呼んでますが、他にメジャーな呼び方ないのでしょうか・・・?)
その流れでCraig Jonesは自分の左足を外から絡めてDead or Aliveに行きます。これは7:3でCraig Jones有利なポジション。しかも極める直前です。
その流れでCraig Jonesは腹ばいになり、相手が干渉するスキを作らずにヒールフックを作ります。
そして、Chael Sonnenがタップ。
では、Chael Sonnenはどう攻めればよかったのでしょうか?対Craig Jonesで正解を提示したのが、去年のADCCで決勝でCraig Jonesを破ったMatheus Dinizです。
ADCC決勝でお互いタップしなかったので30分という超長い試合になっていますが、観ていただければわかるようにMatheus Dinizは徹底的にZガードに付き合いません。あまり深入りせず、さらにはもう立ってしまってガードに入りません。
立てば良いというわけでもなく、さらにそこにCraig Jonesも対策があってさらに対策があって・・・と超ハイレベルな読み合いがあって、その結果ADCCルールの中でMatheus Dinizが一枚上手だった、ということです。
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