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アイルランド抵抗歌 The SuperGrass (スーパーグラス(密告者))

The SuperGrass

Now when Ireland we rosen up at last
There's the UDR, the Army and the SAS
But the lowest of the low is the foe you do not know
And that's the man they call the supergrass

(Chorus)
Singing rifa ter a ludy tera lee
There's no one who can tell a lie like me
You can search until you tire you'll never find a bigger liar
I'm the supergrass you've seen me on TV

I can name you people I have never seen
I can tell you places I have never been
For if the moneys right I could tell black was white
I could tell you Gerry Adams loves the queen

Chorus

Spare a thought for poor Kirkpatrick and for Black
Sure they're nervous now that Gilmours got the sack
For they put their trust in villains and they took the Saxon shillings
Their own hands put the noose around their necks

Chorus

To my native land I bid a fond farewell
Where I'm going is the one thing I wont tell
But Ill keep a watch behind for if anyman should find me
The only place I'll ever go is hell

Chorus


You might see my face in some exotic bar
In New Zealand or far off Africa
I have no friends or relations I betrayed the Irish nation
Thirty silver pieces doesn't get you far

Chorus

スーパーグラス(密告者)

アイルランドがついに立ち上がったとき、UDR(アルスター防衛連隊)、陸軍とSAS(特殊空挺部隊)がいた  しかし最低最悪な敵を君は知らない  奴らはスーパーグラスと呼ばれる連中だ

歌おう rifa ter a ludy tera lee(注  これは意味の無いスキャット)  俺のような嘘をつける奴はいない  疲れ果てるまで探したってこの大嘘つきは見つけられない  俺はスーパークラス  君がテレビで見たやつさ

俺は知らない名前をでっち上げることが出来る    行ったこともない場所に行ったことに出来る  金さえくれれば黒を白だって言うぜ  ジェリーアダムズ(共和主義の政党、シンフェイン元党首で、IRAの元参謀長と言われている)は女王が好きだって言うことだって出来る

貧乏なカークパトリックとブラックのために考えを惜しまない  ギルモアが金袋を手にした今、彼らはビクビクしているだろう  奴らは悪党を信じてサクソン(イギリス)の金をもらった  彼らは自分で自分の首に縄をかけた

生まれた国に別れを告げる  誰にも言わないところに行く  でもいつも後ろを気にするのさ  誰かに見つからないか  俺が行く場所は地獄だけなんだ

君は俺の顔を見るかもしれない  ニュージーランドか遥かなアフリカのエキゾチックなバーで  友達もいない、祖国との縁は切れた  裏切り者を君は捕まえられない


この曲は日本人にとっても聴きやすいものの一つだろう。なぜなら「幸せなら手をたたこう」のメロディだから。「幸せなら手をたたこう」は元はアメリカの民謡である。アイルランド抵抗歌には、アメリカ民謡のメロディを使ったものが多い。アメリカにアイルランド移民が多いことも影響しているだろう。

スーパーグラスは、イギリスのMI5等が運用する密告者、エージェントである。それも潜入捜査官と言うよりは、対象組織のメンバーを懐柔、脅迫して情報提供や密告をさせるものである。

逮捕されたIRAやINLAのメンバーが脅迫や釈放、釈放後の金銭提供との見返りに、スーパーグラスになる。当然だが彼らの存在はIRA等にとって脅威であり、スーパーグラスの密告により失敗した作戦や大量の逮捕、射殺に至った例は多い(以前、書いたLaughallの8人射殺など)。これも当然だが、密告者であることが組織にバレれば死刑は確実である。IRAには密告者を探索し、また新兵の身元や素行を調査し、組織を防衛する情報部隊が存在したという。彼らは軍法会議で決定された刑の執行も担う。

当局も、スーパーグラスは一応保護することにしていた。そうでなければ、いかに金に困っていても密告者になることは誰もが躊躇するだろう。密告者が組織内で露見して危うくなれば、イギリス支配下の遠い国に移住させて、生活費はイギリスが面倒を見る。しかし多くの密告者は遠くに移住しても、報復に怯えながら酒や賭博に溺れて身を持ち崩すという。また実際に不可解な死を遂げた者もいる。2006年、IRA幹部でスーパーグラスであることが明らかにされたデニス・ドナルドソンが射殺死体となり発見された。この殺人はシンフェイン党首のジェリーアダムズが命令又は認可の形で関与したのではとも囁かれたが、暫定派から分派した真のIRAが犯行声明を出し「ジェリーアダムズ他の暫定派IRAは無関係」と明言したことで否定された。

歌詞に出てくるカークパトリック、ブラック、ギルモアはいずれも有名なスーパーグラスである。ギルモア(レイモンド・ギルモア)はINLAとIRAのキャリアを転々とした密告者で、暴露後はイングランドで生活しており、生まれ故郷のアイルランドに戻ることを希望していたが、元IRA参謀長でシンフェイン幹部のマーティンマクギネスに身の安全を保証するよう泣きついたところ「帰ってきても安全かどうか、自分で考えろ」と冷たくあしらわれ、結局帰国は叶わなかった。そして2016年、自宅で孤独死しているところを発見された。アルコール依存症に苦しんでいたという。

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