230610 

夕方のような光が窓から入る。
ハウススタジオの大きな壁に、斜めの光と影。
私たちは座っている。

「1さんて光線のような人だなと思っていた。」
「光線?」
「うん。なんかたまに急に差し込む光線。」
「神々しい感じ?」
「いや、そっちじゃない。綺麗なんだけど
もっとか細い光線というかこの壁に差し込む光もそうだし、
月明かりとかもそうだし
サンキャッチャーの光とかもそうなんだけど
確実に壁にあたってキラキラしている。
自分のてのひらに光が当たり、すこし暖かく感じるぐらい。
確かにそこにあるはずでぎゅっと手を握るけど光は握れない。
光は確実に私の手の中にあるのに。」

少し寂しいきもちになる。
「1さんは私に影響を与える。キラキラきらめいて綺麗で手を伸ばす。
でも握れない。触った感触がない。
一方的に受け取ることしかできてないんだろうね。」

壁に手を当てながら独り言みたいに話してしまった。
1さんは何も言わない。つまらない例え話と思っているかな。

「影響を受けない人なんていないよな。
僕自身もまたどこからかの光が当たってるだけかもよ。月みたいに。」
「お月様かー。
(でも1さんは人からの意見や評価とか影響少なそうだもんなー
自分の感覚大事にしていそうだもん)」

月の裏側はすごく恐ろしいみたいなことを思い出して急に怖くなってくる。
スタジオの白い壁だと思っていたものは、大きな月の石で埋め尽くされている。光の影だと思っていた物は模様だ。怖い。目を閉じる。
手が壁にくっついて離れない。
「カナちゃん力を抜いてごらん。」
1さんが私の手首を優しくつかんだ。そっと離してくれる。

目覚める

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