見出し画像

ジョージ・フロイド事件と人種差別、NYの今

初めに伝えたいこと

僕の大好きなニューヨークがニューヨークでは無くなってしまった。

今回のブログはセンシティブ且つ簡単に説明できる話題ではなく、どの様に書いたら良いのか迷いながら、言葉一つ一つを慎重に選び書き記した。

アフリカ系アメリカ人に対する人種差別を調べていくうちに、国や警察、また企業までもが関わり人種差別をして来た歴史を知れば知るほど、怒りと悲しさが自然と湧き上がって来た。

僕は今この瞬間、日本人としてニューヨークに住む貴重な存在だと思っている。

だからこの問題に対して話をする責任があると思ったし、僕が発信することで1人でも多くの人が他人事ではなく身近な問題として考えてくれるきっかけになることを願い書くことを決めた。

もしあなたがこのブログを読んだ後に少しでも何かを感じてくれたのなら、是非周りの人達へこの情報を広めて欲しい。そして自分の家族や友人とこの話題について真剣に話し合い、意見を交換し理解を深めてくれたら嬉しい。

賛成できることや納得できないこと、是非それを口に出して自分の言葉にして欲しい。

この問題に対して知識があっても無くても会話をするということが何よりも大切だと思うからだ。

この問題に対して無関心でいることは差別をしているのと変わらない。

そう思うようになったのは、理解していると思っていたアフリカ系アメリカ人に対する人種差別をしっかり理解できていなかったこと。今もまだ本当の意味では理解できていないとは思うが、今アメリカで起きている事件や今回のブログを通して少なからず理解を深めることができた。

今回の記事は、読んでくれた人達が今実際に起きていることをしっかり理解して貰うためにショッキングな映像や写真をあえて使用しています。

目を背けず、今世界で何が起こっているのかを知って欲しい。

自分がもし同じ立場ならあなたはどうしますか?

ジョージ・フロイドさん死亡事件

先月5月25日にアメリカのミネアポリスで起きてしまった事件。

スーパーから「偽札を使おうとした客がいる」と通報を受けた白人警察官(デレク・ショービン)が、車に乗っていたアフリカ系アメリカ人男性のジョージ・フロイドさんを拘束。

丸腰だったにも関わらず彼の首を膝で長時間に渡り圧迫し、大勢の人がその様子を見守る中で死亡させてしまう悲惨な事件が起こってしまった。

しかもポケットに手を入れながらの屈辱行為だ。

画像1

身動きが取れない状態のジョージ・フロイドさんは、「どうかお願いだ、息ができない」「息ができない、息ができないんだ」と訴えていたが、この警察官は周りからの忠告を聞き入れること無く、フロイドさんが意識が失ってからも彼の首を膝で押さえ付け続けたんだ。

その他にも3名の警察官がこの事件に関与していたが誰1人としてこの残忍な行為を止める者が1人も居なかった。しかもその中の1人は中国系アメリカ人のアジア人警察官だった。

実は少し調べた所によると、この警察官デレク・ショービン容疑者とジョージ・フロイドさんはラテンナイトクラブで警備員として働いていた同僚とのこと。

彼らが知り合いだったかは分からないそうだが、そのクラブオーナーが言うにはフロイドさんも数十回働いていて、ショービン容疑者は20年間そこで勤務していたとのことだ。

ショービン容疑者は、ヒスパニック系の客たちとは仲良くしていたが、アフリカン・アメリカン系のパーティーの時は働きたがらなかったとのこと。クラブオーナーからはやり過ぎだと思われる様なトラブルも過去に犯したらしい。

ジョージ・フロイドさん殺害でデレク・ショービン容疑者を*第2級殺人で訴追し、最高刑で40年が言い渡される。残る元警官3人も訴追するとのことだ。

*第2級殺人
計画性がない殺人を意味し、第3級殺人よりも重い罪。

画像2

国民の安全を守るはずの警察官のはずが、持つ権力と正義感を間違った方向へと使ってしまった、あってはならない事件だった。

2014年に起こった暴行事件に酷似

そして今回の事件は、2014年にニューヨークで起きた警察官によるアフリカ系アメリカ人男性エリック・ガーナーさんへの暴行死事件と状況が酷似している。

画像3

ガーナーさんもフロイドさんと同様に「息ができない」と警察に訴えていたのにも関わらず首を絞められ無念にも殺されてしまったんだ。

しかもこの時首を絞めた警察官は*不起訴処分になっただけ。

*不起訴処分(被疑者に対して裁判をする必要がないという決定)

しかも解雇されたのはそれから5年後だそうだ。

人種差別が根強く残るアメリカ

今回のジョージ・フロイドさんへの暴行死事件は、コロナウイルスでのアジア人差別など*人種のるつぼと言われるニューヨークでさえ未だアメリカでは人種差別が根強く残っていることを改めて感じる事件だった。

*人種のるつぼ:多種多様な人種が混在して暮らす都市

自分自身もコロナウイルスを通して人種差別を経験した。

だから絶対にあってはならないことだと心から思うんだ。

僕が経験したコロナウイルスでの差別は命に関わるほどの人種差別では無いが、アフリカ系アメリカ人への差別は生死に関わり、そんな差別を日頃から受けているという事実。

しかし、彼等と同じ気持ちを理解するにはとても難しいことだと思っているし、本当の意味で彼らの立場にならない限り理解は到底できないと思う。

特に人種差別に関しては、島国で生まれた日本人の俺には尚更かもしれない。

理解できないかもしれないけど理解しようと思う気持ち。

それが大事だと思っている。

これまでアフリカン・アメリカン・ミュージック(今はブラック・ミュージックという言い方は適切では無いと思っていることと、彼らへのリスペクトと尊重を込めてなるべくこう言うようにしている)の恩恵によりアフリカ系アメリカ人の歴史について少なからず知識を身につけることができたと思っている。

またニューヨークへ移り住むことで人種問題が人ごとではなく身近な問題として自分の肌で感じることができた。そしていつ自分が同じ立場になるか分からないとコロナウイルスでのアジア人差別を通して感じたんだ。

もし今回の事件の当事者がアジア人だったらと思うと想像するだけで怖くてたまらない。

そう思う理由は、過去にロサンゼルスで起きた大規模な暴動LA Riotsと今の状況が少し似ていて、きっかけは違うにせよ当時は同じアジア人である韓国人が今では考えられない程の差別にあっていたことを思い出させるからだ。

LA Riots(ロサンゼルス暴動)とは

1991年3月3日、アフリカ系アメリカ人男性のロドニー・キング氏がロサンゼルス市内を運転中にスピード違反で停止を命じられたのち逃亡。この時に車を降りたロドニー・キング氏が警官らの指示に従わなかったとして、警察官4人から激しい暴行を受けた。この様子が偶然撮影され強い批判が巻き起こる。そして白人警官への無罪評決が下る(ロドニー・キング事件)。

ロドニー・キング事件のわずか13日後となる1991年3月16日、支払いのための小銭を握っていたアフリカ系アメリカ人の少女(当時15歳)のラターシャ・ハーリンズを、韓国系アメリカ人の女性店主トウ・スンジャが窃盗と思い込み射殺してしまう事件が起こる。判決は5年間の保護観察処分とボランティア活動400時間、罰金500ドルという殺人罪としては異例の軽い刑となった。この結果に対して黒人社会を中心に広い範囲で抗議活動が起こりこの事件をきっかけに更に暴徒化が進んだ。人種間の衝突から発展した歴史の中でも特に大きな暴動事件である。

引き金の要因となった過去の事件

実は今回のジョージ・フロイドさん事件以前にも、これまでに数え切れない程の警察官による殺害事件や白人からの人種差別が起こってきた。

Ahmaud Arbury(アマード・アーベリー)
一つは今年の2月、米南部ジョージア州ブランズウィックにてジョギングをしていたアフリカ系アメリカ人の青年アマード・アーベリーさんが、“強盗事件から逃げる途中の犯人と思い込んだ“と主張する白人親子に射殺される事件が起こった。

しかも容疑者らの逮捕は事件発生から74日かかった後とのことだ。

画像4

そしてジョージ・フロイドさん事件と同じ25日にニューヨークで別の事件が起こった。

ニューヨークのセントラルパークでバードウォッチングをしていたアフリカ系アメリカ人男性クリスチャン・クーパーが、散歩中にリードを付けずに犬を散歩させていたので白人女性エイミー・クーパーを注意したところ、女性は携帯電話で「アフリカ系アメリカ人が私を脅している」と警察に通報。

実は2人が居た場所はセントラルパーク内の「ランブル」と呼ばれるバードウォッチャーに人気のエリアで、ここでは犬には常にリードをつけるよう規制されているとのことだ。

その模様を撮影した動画が話題になり一気に拡散された。

その後、彼女が務めていた投資会社は彼女を解雇。

その後彼女は「過剰反応だった」と謝罪。

また彼女は動物虐待としても訴えられ、犬は元の飼い主へと戻された。

次に紹介するのはここ数年で起こった警察によるアフリカ系アメリカ人の殺害事件を幾つか紹介したいと思う。

Breonna Taylor(ブレオナ・テイラー)

そしてケンタッキー州ルイヴィルで今年3月13日にコロナウイルスの感染が広がる中、医療に従事していたブレオナ・テイラーさんが警察に誤って射殺されるという事件が起きた。

警察は容疑者を探すため捜査令状を持って彼女の自宅を訪れた。予告なしに彼女の部屋に押し入った後に誤って殺害。少なくとも8回にわたり彼女を撃った。

探していた容疑者は既に逮捕されていたとのことだ。

画像5

Michael Brown(マイケル・ブラウン)

2014年8月9日ミズーリ州にて、マイケル・ブラウンが強盗の疑いをかけられ丸腰だったにも関わらず白人警察官によって6発の弾を受け射殺された。

判決は不起訴になり無罪。

画像6

Trayvon Martin(トレイボン・マーティン)

2012年2月26日の夜にフロリダ州のサンフォードで、当時17歳だったアフリカ系アメリカ人のトレイボン・マーティンを、ヒスパニック系の混血である自警団員だった当時28歳のジョージ・ジマーマンが射殺した事件。

正当防衛だったとして無罪判決を受ける。

Tamir Rice(タミル・ライス)

オハイオ州クリーブランドで2014年11月、模造銃を手にしていた黒人の少年タミル・ライス君(当時12歳)が白人警官に撃たれて死亡した事件。

600万ドル(約6億7000万円)を支払うことで遺族と和解。

画像7

今回紹介した殺害事件はほんの一部に過ぎない。

この様にアメリカではいかに日常的にアフリカ系アメリカ人への差別が多く存在していることは少しでも理解してくれたと思う。

そして今回のジョージ・フロイドさん事件が大きな引き金となり、これまで我慢して来たアフリカ系アメリカ人、そして人種の枠を超え人々の怒りは限界を超えてしまった。

もうウンザリだと。

抗議デモに参加して感じた複雑な思い

実は数日前、ニューヨークで起きている現状と事実をしっかり自分の目で確かめ自分の肌で感じる為に抗議デモに参加した。

画像8

画像9

画像10

言葉にできない程のもの凄い熱気で自然と鳥肌が立った。

歴史が変わる瞬間に今自分は生きているんだと改めて思い、この瞬間をしっかり目に焼き付けようと必死になっていた。

警察官は僕が見る限り周辺からデモを見守っている印象で、メディアが報じている様な彼等のネガティブな雰囲気を感じることは一切無かった。

だが今回参加して感じたのが抗議デモへパレード感覚で参加している人達も多いことだった。そして何かがきっかけで大きな暴動へ発展してもおかしくないという雰囲気と危機感も同時に感じた。

もちろん参加するデモによって全く違うかもしれないけど、僕が参加したデモに関してはそうだった。

しかしながらデモに参加することはネットで観るのとは全く違い、自分の肌でその雰囲気や匂い、人々の波動を感じれたことは自分にとってかなり大きく、改めて今アメリカで起きていることを更に深く考えさせられる1日になった。

俺の好きなニューヨークじゃない

とても残念なことだけど、遂にアメリカ全土で暴動と略奪行為が発生した。

ニューヨークに住んで6年が経つけどこんなニューヨークは初めてだ。

ヘリコプターは一日中飛んでいるしパトカーのサイレンが常に鳴り響く。

今住んでいるアパート付近でも人が刺されたり発砲事件が起こるなど、ニューヨークの治安が一気に悪化しているのを毎日肌で感じている。

画像11

画像12

画像13

画像14

実は家から歩いて直ぐの場所にあるスーパーも略奪の被害にあった。

次の日の朝に行ってみたが既に修復され警察官が多く警備に当たっていた。

画像15

画像16

略奪行為が多く発生したマンハッタンのSohoにも行ってみたが、襲われた様子は所々で見かけるものの既にかなり修復されており、夜に再び始まるであろう暴動と略奪に向けての防御策としてガラスや入り口に板を打ち付ける音が町全体に響き渡っていた。

画像17

画像18

画像19

画像20

画像21

画像22

画像23

画像24

画像25

画像26

以前に自分のYouTube動画でも経済が落ち込めば暴動や略奪行為が起こりやすくなると言ったのだけど、それが残念ながらも現実に起こってしまった。

実は調べたところによるとニューヨーク以外の州から略奪目的でデモに参加していた人も多かったと聞いた。

また原因ともなっているであろうコロナウイルスでのストレスや経済の落ち込みによる失業、貧富の差などにより起こったこの暴動は、自分達の住む街を自分達の手で破壊するというとても残念で悲しい出来事だった。

しかしながら、長い間に渡りアフリカ系アメリカ人が受けてきた人種差別を考えると、ある一つの視点だけでこの略奪や暴動を悪として判断してしまうのには、もう少し色々な角度で捉えてみる必要があるとも思った。

だから略奪の被害にあったお店の人達でさえ、私達はあなた達を責めようとは思わないと語っている。

でもこんなニューヨークは俺の好きなニューヨークじゃない。

素直にそう思った。

どこの州よりもニューヨークがお手本を示すべきなのになぜだと。

世界の中心なんて名前だけだと思った。

こんなことしてもただ事態が長引くだけなのにって。

しかし、勇気を持って「略奪は間違っている!」と体を張る人達が多く居たことに希望も感じた。

世代を超えた者同士が本気でぶつかり合う姿に熱い気持ちが込み上げた。

暴動や略奪をする人達へメッセージを送る女性のスピーチにも考えさせられた。

また抗議デモへ賛同する意志を見せてくれた素晴らしい警察官も居た。

今週末に改めて抗議デモへ参加し、人種差別に関して更に理解を深めたいと思ってる。

これからどのようにしてニューヨークが再建していくのか、しっかりこの目で見届けたいと思う。

最後に

あなたは今回のブログを読んで何を感じましたか?

今回の事件を通して、あなたは自分の人生にどのように影響を与えますか?

できる事は少ないかも知れません。

でも理解を深めることはできます。

これから大変な時代がやって来ると思っています。

日本が先進国なんて遠い昔のことかもしれません。

多くの人が日本は平和ボケしていると言います。

僕もニューヨークからその様子を見ていて、コロナウイルスに対する国の対応や一部の人達の在り方には少しがっかりしていました。

いつからこんなに心が窮屈な国になってしまったのだろうと。

またこの大変な状況の中、自分の身を危険に晒しながら私達を支えてくれている医療従事者を差別してしまう心の在り方に悲しみを感じました。

日本にも違った形での差別問題が存在する。

他人事ではない。

危機感を持つということはとても大事なこと。

今世界で何が起こっているのか。

これからの新しい時代へ向けて教養と知識をしっかり身に付け、先進国としての心の在り方を今一度学ぶ時なのかもしれません。

最後に、今回のアフリカ系アメリカ人に対する人種差別に関して理解を深められるおすすめの映画を紹介して終わりにしたいと思います。

画像27


人種差別を理解するのにオススメの映画

13TH / 憲法修正第13条

The Help / 心がつなぐストーリー

42 / 世界を変えた男~

12 Years a Slave / それでも夜は明ける

I Am Not Your Negro / 私はあなたのニグロではない

The Black Power Mixtape / ブラックパワー・ミックステープ


画像28

Instagram

YouTubeチャンネル

Twitter














最後まで読んでくれてありがとうございます。コロナウイルスの影響で生きにくくなった時代。こんな時だからこそポジティブなメッセージであったり、力強く生き抜く知恵、有益な情報を皆さんとシェアしたいと思っています。