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デジタル分野における国家の課題R5.02.01 衆議院予算委員会 (質疑答弁記録)

発言者:平将明議員

私、平将明は新しい資本主義実行本部の事務局長を務めさせていただいておます。この本部は自民党内で、岸田総理が本部長を務めています。本日はデジタル分野における国家の課題について質問をさせていただきます。

まず、私たちがなぜ「Web 3.0」、通称「Webスリー」に注目しているのか、その理由について説明させていただきます。多くの人が「ウェブスリーっていうけど、一と二はどこ行った?」と問うていますので、それについて簡単に解説させていただきます。

「ウェブ1.0」はインターネットが一般化した世界を指します。これにより、メールでやりとりができたり、ウェブサイトで世界中の情報が取れるようになりました。その後、「ウェブ2.0」はガーファ(Google、Amazon、Facebook、Apple)の世界であり、プラットフォームの世界を指します。これにより、個人で世界に発信できるようになり、一部の人々や場所が世界的に有名になりました。

しかしながら、情報がプラットフォーマーに集中したり、富の偏在が起きたり、また過激な意見が社会を分断するきっかけとなるなど、一部問題も生じました。そして、ガーファと言われる企業群が高い株価を保つ一方で、付加価値が集中する傾向も見られました。

そして現在、私たちは「Web 3.0」の時代を迎えています。これは自立分散型を掲げるもので、ブロックチェーンがベースとなります。上に暗号資産が乗っていて、さらにNFT(Non-Fungible Token)などが存在します。更に、初日の総理の答弁にもあったように、メタバースが含まれます。メタバース内にもトークンエコノミーが組み込まれていて、全体を動かすのがWeb 3.0の特徴となります。

そして、日本がWeb 3.0を推進すべき理由についてですが、伊藤穣一さんが作成したグラフが一番わかりやすいと思います。このグラフは価値がどこから生まれるのかを示しています。Web 2.0の時代には、アプリケーションレイヤーが主に価値を生み出していました。しかし、Web 3.0の時代になると、プロトコルレイヤーが価値を生み出すようになります。

ここで注目すべきは、一番上のコンテンツのIPレイヤーが分厚くなっていることです。これはNFTなどを使って簡単にマネタイズできるようになったからです。日本はこのコンテンツIPレイヤーが非常に強いです。漫画、アニメ、ポップカルチャー、食文化、地方の観光体験など、日本の持っている価値が国際価格から見ても安すぎます。

そのため、私たちはWeb 3.0を通じて、これらの価値をグローバル化し、価値を最大化することで、日本のポテンシャルを最大化することができると考えています。そのために、Web 3.0を積極的に活用することが日本の勝ち筋であり、そのための環境整備が重要です。年末の成長策では多くの対応がなされましたが、まだ足りないところもあります。そのため、引き続き取り組んでいく必要があります。

現在、世界中がインフレ化し中央銀行が金融政策を引き締めることにより、余剰金融時代は終わったと考えられています。そのため、短期で利益を追求し、暗号資産へ資金を投入した人々が撤退しています。更にアメリカではスキャンダルがあり、クリプトカレンシーの市場が大いに盛り上がっています。

私自身、そして自由民主党のWeb 3.0推進プロジェクトは、暗号資産の価格変動には興味はありません。私たちが注目しているのは、ブロックチェーンが生み出す機能についてです。

日本の取引所は、NFTなどの取引所問題がアメリカで指摘されている中、世界で最も安全とされています。過去のマウントゴックス事件やコインチェックの事件を経て、金融庁はしっかりと管理体制を確立しました。さらに、ステーブルコインという法定通貨と連携した通貨に関する法律も制定し、これにより世界で最も先進的な国と言えます。

暗号資産は価格変動が激しいですが、法定通貨と連携したステーブルコインが登場することで、安定した分散型自立組織の形成が可能となります。現在取り組んでいる円のステーブルコインは、世界中で利用可能なステーブルコインとなると思います。

我々はWeb 3.0の全体の組織、すなわち非中央集権型自立組織を構築するために、議員立法を通じて法制化を推進しています。その結果、日本が世界の先頭に立つチャンスがあります。

また、日本がコンテンツIPで強いということは、地方創生やクールジャパン政策にWeb 3.0を活用できるということです。さらには、ふるさと納税とNFTを組み合わせて地域の価値を最大化し、人々を呼び込むことが可能です。そして、地域のクリエイターやサービス提供者に還元する仕組みも実現可能です。

ブロックチェーンやWeb 3.0の技術は、日本が直面している多くの課題を解決するのに有効だと考えています。そのため、ぜひWeb 3.0を活用して日本の課題解決に取り組んでいただきたいと思います。総理はいかがでしょうか?

発言者:岸田文雄 総理大臣

議員からのWeb 3.0についての詳細な説明に感謝します。Web 3.0という技術の使用により、多種多様な可能性が期待されていると理解しています。例えば、同じ社会課題に関心を持つ人々が新しいコミュニティを再生する可能性、これが「分散型自立組織」(DAO)の考え方と理解しています。また、NFTについての議論もありましたが、クリエイターの収益多元化や高ロイヤリティなファン維持の取り組みが可能であるという期待も抱いています。

これらの技術が「クールジャパン」や地方創生の活用につながり、強力なツールになる可能性を秘めていると思います。デジタル庁では、すでにWeb 3.0研究会を設けて議論を行い、昨年報告書をまとめました。報告書では、この新しい技術が既存の制度との適合性に懸念をもたらし、自治体や事業者が技術活用を躊躇する可能性があること、そのための相談窓口の設置の必要性が指摘されています。

まずはこの相談窓口の設置を行い、技術活用に向けた課題の集約を進めることが重要と理解しています。また、議員がおっしゃるように、自由民主党でもこのような議論が進められています。

これらの議論を踏まえ、政府としては、クールジャパンや地方創生にWeb 3.0を生かして行くために、どのような支援を進めて行くべきかを考える必要があると認識しています。

発言者: 平将明 議員

ぜひとも、国家戦略としてWeb3.0に取り組むべきだと思います。新しい技術が現れるたびに、レギュレーションと税制のデザインを速やかに更新しなければなりません。一緒に頑張っていきましょう。総理にもぜひともご協力をお願いします。次にサイバーセキュリティについて伺いたいと思います。

高市大臣等がリーダーシップを発揮し、取りまとめがなされているサイバーセキュリティですが、問題はどんどん深刻化し、取り組む範囲も拡大し続けています。攻撃側の技術は飛躍的に進化し、それに対応するためには、担当する人員が短期間で常に最新の知識をアップデートしていく必要があります。

以前、私がサイバーセキュリティを担当した際に感じたことは、オリンピックやパラリンピックなどの大規模イベントでは、世界中から攻撃を受けやすいことです。しかし、当時、デジタルに詳しくない人が担当大臣になることがよくありました。その教訓から、デジタル大臣が設立され、サイバーセキュリティがその管轄に含まれることになりました。

最近では、サイバーセキュリティの担当が国家公安委員長に移ったわけですが、これはランサムウェアなどの犯罪への対策が必要だからです。ただ、それだけでなく、重要なインフラを守ること、デジタルガバメントを守ること、ハイブリッド戦争に勝つための対策、テロ対策、ディスインフォメーション対策など、多くの課題があります。

Activeディフェンスという概念も出てきましたが、具体的にどのように実行するべきか、どの範囲までを許容するのか、その詳細を詰めていく必要があります。ホワイトハッカーの育成も重要で、日本の人材はまだ足りていません。

警察や防衛、デジタル庁などが縄張り争いをしている余裕はありません。一つの司令塔を作り、全体を網羅するように取り組むべきだと考えます。その観点から、官房長官に伺いたいと思いますが、全体的なサイバーセキュリティの方針は官房長官が担当しているのでしょうか。

また、組織のリスク管理も行われていますが、それだけでは対応できません。機能拡張も含めて抜本的な体制強化を図るべきだと思います。官房長官、いかがでしょうか?

発言者: 松野博一官房長官

平先生にお答えいたします。平先生がご指摘された通り、サイバーセキュリティは多くの府省庁が関わる課題であり、政府一丸となって取り組むことにより、自由で公正かつ安全なサイバー空間の確保を図ることが重要であると認識しております。

その観点から、サイバーセキュリティに関する政策を総合的かつ効果的に推進するため、サイバーセキュリティ基本法に基づき、私、官房長官を本部長とするサイバーセキュリティ戦略本部を設置しました。ここで、政府全体が三年間取り組む政策の目標等をまとめたサイバーセキュリティ戦略を策定しています。

また、昨年12月の国家安全保障戦略においては、サイバー安全保障分野での対応能力を向上するため、これを一元的に総合調整する新たな司令塔組織の設置を決定しました。同時に、外国によるディスインフォメーションに関する情報の集約・分析、対外発信の強化のための新たな体制を政府内に整備することとしました。

これらの課題について、関係閣僚と連携しながら、政府一丸となって取り組んで参ります。

発言者: 平将明 議員

官房長官、ありがとうございます。次に取り上げたいのは、同盟国との連携の重要性です。特にサイバーセキュリティにおいては、最近、初代デジタル大臣の牧島かれん氏と一緒にオーストラリアを訪れ、サイバーセキュリティについて話し合いました。オーストラリアは特にディスインフォメーション対策を重視し、具体的な法律を作り上げて対応しています。ロシアのウクライナ侵略戦争を見ても、ハイブリッド戦争が進行中で、日本一国だけのリソースでは、ハイブリッド戦争に対応するのは困難です。同盟国との連携を強化していく必要があります。究極的には、ファイブアイズへの参加を検討すべきだと思いますが、現状では法律が整っていないので難しいです。しかし、我々は製造業者として、足りない部分をしっかりと理解し、今後の議論に向けて意識を高めていくべきだと思います。

それでは次の質問に移らせていただきます。社会保険料の106万円の壁という問題について、資料をもとに議論を深めたいと思います。この問題は初日に萩生田政調会長から指摘があったものです。配偶者が年収106万円を超えると社会保険料の負担が増え、家族手当が消えてしまいます。そして、これから働く意欲があっても、外で働くと逆に経済的に損になるため、働き続けるには年収135万~140万円程度まで稼がなければならないという、壁が存在します。

現在、労働力不足が問題となっていますが、民間のシンクタンクによるアンケートによれば、「もし社会保険料の負担増がなければ、もっと働いて収入を増やしたいと思いますか?」という質問に対し、80%の人々が肯定的な回答をしました。しかし、現状では時給を上げても、この壁を越えてはいけないために働く時間を減らし、それが更なる労働力不足を招いています。そして、その結果として時給が更に上がり、この無限ループが続いています。

この問題を解決するためには抜本的な制度改革が必要ですが、すぐには難しいのが現状です。そこで提案したいのが、この年収の壁を一時的に給付金でカバーするというアイデアです。給付金を支給することで、保険料の負担を軽減し、また働き続けると元の状態に戻り、さらに上に進むことができます。これは一時的な策ですが、たとえば5年の間に本格的な制度改革を実施するという方法も考えられます。何にせよ、時給が上がり労働者が減るという負のスパイラルをなんとかしなければなりません。

現在、現場では労働力不足が深刻化しています。この状況を考慮に入れて、この問題に対する対応策を考えるべきだと思います。総理、ご意見をいただけますか?

発言者: 岸田文雄 総理大臣

私たちは、パートタイム労働者や非正規雇用労働者が、本人の希望に応じて活躍し、収入を増やしていける環境を整備することが重要だと考えています。その一方で、通常言われる「壁」の問題、例えば130万円の壁などに対応する必要があります。さらに、正規雇用者と非正規雇用者の間の待遇差や賃金格差の改善も必要です。非正規雇用労働者の取り組み全体を幅広く推進することが求められています。

さて、議員からご指摘のあった壁の問題についてですが、基本的には、100万円の壁については、労働者がそれを意識せずに働けるよう、短時間労働者への雇用保険の適用範囲を拡大してきたというのが私たちの対応です。そして、106万円の壁についても、最低賃金の1000円以上への引き上げによって解消していくと見込んできました。

しかし、被扶養者が扶養から外れて被保険者に転換するとき、社会保険料が生じるため、就労を調整したり、躊躇したりするという問題が確かに存在します。この問題意識は私も共有しています。

施政方針演説でも、私はこの壁の問題について制度を見直すと述べました。議員の方から、すぐに見直すのは難しいので、一時的に給付金を出すべきではないかという提案がありました。その対応について、予算委員会初日に萩生田政調会長にもお答えしたように、被扶養者でない単身世帯の方々との公平性の問題があります。これらの点については、ご指摘の通りだと考えます。

しかし、問題意識はしっかりと受け止め、政府としてどのような対応が可能か、先ほど申し上げた考え方を基に、幅広く対応策を検討してまいりたいと思います。

発言者: 平将明 議員

まず、前向きな回答をいただき感謝します。現場の実情としては、このウィズコロナの状況下で、経済が徐々に回復し始めています。しかし、例えばホテルや旅館、飲食店などは、施設は揃っているものの、まだ全力での運営が難しい状況が続いています。このような状況が続くと、職員が減少するといった悪循環に陥りかねません。したがって、緊急避難的な措置であっても、歳入歳出で考えればプラスとなるような施策が求められます。国全体で考えた際に、マクロ的な視点とミクロの視点、そしてそれに伴う不平等感の調整が重要となると思います。この問題は官僚主導ではなく、政治家が判断し、前に進めなければならないと思います。

次に、デジタル化に向けた取り組みについて質問させていただきます。現状、日本が苦戦している分野の一つがデジタル化です。かつて、我が国は製造業でリードしていました。しかし、その後の金融化の時代、フィンテックの発展に若干遅れをとりました。そして、現在はデータドリブンの時代が到来し、我が国は再度その波に乗り遅れてしまったと言えます。工業製品、特に自動車はすべてがコネクテッドカーになり、IoT端末として機能するようになると、車から得られるデータが付加価値となります。このように、データドリブンエコノミーにおいては、データの流通方法は非常に重要となります。その一方で、我々は個人情報の保護も重視しなければなりません。パーソナルデータを適切に保護し、一方でデータの流通を容易にするための制度設計が求められます。これによって、日本企業が世界で活躍するためのフィールドが整うと考えます。

一方で、西側諸国の間でも、ヨーロッパがGDPRを通じて個人情報保護に力を入れ、アメリカが比較的イノベーションを重視しているなど、バラバラな状況が見受けられます。自由と民主主義、基本的人権を保護しつつ、データの価値を最大化するためには、データフリーフローウィズトラスト、つまり安倍総理が提唱した考え方が重要だと思います。ヨーロッパ、アメリカ、そして日本がリーダーシップをとってデータフリーフローを進め、さらにインドや韓国を巻き込むことが重要だと思います。G7の会議で、デジタル大臣会合が開かれるとのことですが、このデータフリーフローに対する取り組みについて、デジタル大臣から回答をいただければと思います。

発言者: 河野太郎デジタル大臣

はい、データ流通、特に国境を越えたデータ流通の重要性については、各国とも共通認識を持っていると思います。ご指摘の通り、ヨーロッパはプライバシーを重視したGDPRというルールを確立しています。一方でアメリカはデータの流通の自由を重視しており、ヨーロッパとアメリカの間で方向性が異なっています。この二者間で議論をしても、一方が勝利し、他方が敗北するという形になり、議論が進展しにくい状況です。その中で、日本が間に入り、国際的な方向性を決定する役割については期待感があると考えています。

ヨーロッパとアメリカが短期間で同じルールを採用するというのは難しいと理解しています。したがって、日本が考えているのは国際的な枠組みを作ることです。そしてその枠組みに事務局を設置し、各国や地域のデータ流通の規制に関する最新情報を集めたデータベースを作成します。この枠組みによって、海外展開を考える中小企業が、どのような準備をすべきかすぐに把握することが可能になると思います。

これを第一歩として、G7、そしてG20、さらにはGlobal Southを巻き込んだデータ流通に関する一つの枠組みを作っていきたいと考えています。最近の海外訪問ではこの話題を提起し、各国からの賛同を得られたと感じています。そして、これをG7のデジタル大臣会議でまとめ、首脳会議でエンドースしてもらう、そういう方向に動いていきたいと考えています。

発言者: 平将明 議員

ありがとうございます。私もDFFTの推進を強く支持しています。DFFTをよく見てみると、それはまさにウェブ2.0の表れです。しかし現在、自律型分散型のウェブ3.0の波が押し寄せています。ウェブ3.0がDFFTにどのような影響を及ぼすのか、それを考慮することが必要と感じています。実際、専制的な国家はウェブ3.0を適応することが難しいのです。彼らがその影響力を行使することができないためです。そういった観点からも、ウェブ3.0とDFFTとの関連性を考慮に入れて頂ければと思います。

しかしながら、残念ながら時間が無くなりそうなので、防災担当大臣に対して、私の個人的な意見を述べさせていただきたいと思います。それは防災に対するITの活用です。地震が起きたとき、瓦礫の下に誰がいるのかを知るためのGPS情報は民間企業が持っています。しかし、その情報を役所が利用することができるのかどうかという問題があります。さまざまなアプリが存在します。食事に行くアプリもあれば、マッチングアプリもあります。そのため、適切なレギュレーションの整備が必要です。皆がスマートフォンを持っている現代では、GPS情報を適切に利用することで、より効率的な救助活動が可能になると思います。

さらに、地震が発生したときに通信が途絶えてしまう問題についても言及したいと思います。成層圏を太陽光パネルで飛んでいる基地局や、ウクライナで使用されているコンステレーション衛星などを利用しなければなりません。大地震が発生したときや、何度も地震が発生する状況で、スマートフォンを使って防災対策を講じることは重要ですが、通信ができない状態ではその意味がなくなってしまいます。そういった問題に対しても対策を検討していただきたいと思います。

すみません、質疑時間が終わりましたので、ここで質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

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