【感想】friends after 3.11

岩井俊二さんの作品を観た。取り分け印象的だった内容をメモ代わりに残す。

原子力発電について

かつて地球温暖化が問題視される中でCO2を出さない発電方法として期待されたのが原子力発電だった。しかし、むしろCO2は足りていないくらいが現状だという。登場していた教授は火力発電によってむしろもっとCO2を排出すべきと提言。

僕の知識量だと何が正しいかはわからない。が、感情的に煽られる危険性を物語っているエピソードだと思った。温暖化が
闇雲に問題視されて、それを理由に感情的な共感のもとにもっと危険な原子力を推進してしまった。同じように闇雲に原子力を廃止することも再度火力を推進することも慎重にならなくてはいけない。

放射能

放射能に対する認識もてんでバラバラだ。野菜を食べて応援したいという声もあるが、現地不安の真っ只中にいるものは「食べる以外の貢献ができれば。」という。印象的だったのは自分の子を守ることと世の子どもを守ることとの間には高い壁と発言する上での勇気の差があるという発言。確かに、自分の子を守るためには選択をしないという単純な行為で済むが、世の子どもを守るために発信することは攻撃されるリスクも持っているし、極めてロジカルに、正確な状況を掴んだ上で発言する必要があり非常にハードルが高い。また、社会的な目線として、一主婦に許される発言、許されない発言の線引がある。そんなものは壊せばいいという議論もあるかもしれないが厳しいのが現実だ。

先進国故の認識

一次産業がが占める割合が減ることであたりまえになっている怖さ。自分たちが第三次産業などに従事できているのは、仕組みとして踏み台にしている層がいるからこそである。やりがい云々で悩んだりする我々だが、それ以前の次元で仕事をしている人がいることや、自分たちが今の仕事をできていることは誰かの単純労働に資本的に支えられているが故というのが現状であることを忘れてはいけない。システムの中に組み込まれていると、感覚が麻痺してしまう。というか既に自分は麻痺している。この認識を持つこと。

地元が被災すること

地方にずっと居座ってきた人にとって地元がなくなる、帰る場所に帰れなくなることがどれだけのインパクトを与えるだろうか。地方で暮らす人は、県どころか自分の生まれた町で一生を全うする人が多くいる。僕の地元も同じ中学を卒業した人の半分以上は地元にいる。僕は出て行くことになんの抵抗もないタイプだったので想像ができなかったが、地元にいることがあたりまえの人にとって、地元がなくなることによる影響は僕のそれよりずっと大きいのだろう。どこにいっていいかがわからない
ことによる帰る場所のない恐怖は計り知れない。

天災は怒りの矛先がない。天を恨んでも仕方がないことは誰もがわかっている。怒りの矛先の無さは東電へのヘイトを助長しているように思う。重要なのは間違いを起こした後なのだ。東電を糾弾することは簡単だ。目的は裁くことでなく、その後を描くことだ。彼らを迫害するのは本質ではなく、渦中にいた彼らだからこそ感じること、知っていることを未来に繋ぐ必要がある。そのためにこそ手を取り合う必要があると僕は思う。

これから

最後の教授のインタビュー、アイドルが流した涙が印象的だった。

教授はかつて原子力に夢見て業界に入った。だが、原子力は間違っていた。これから衰退していくだろう。しかし、大量に残された核のゴミをどうにかするという大きな仕事が残っている。今若者が集っているのは自然エネルギーだろう。若者が集まるのはいつだって希望のある未来を創る仕事だ。自然エネルギーはそれがわかりやすい。一方で既にある負と闘うプレイヤーも同時に必要だ。原子力に代替するエネルギーを推進する人も必要だし、同時に原子力の負の遺産を償却する仕事をする人も必要だ。明確な負を解決することも未来をつくる仕事だ。むしろ確実な貢献だと思う。その場所に若者が集ってくるような働きかけが必要だろう。

プラスを産む仕事は、市場が形成されやすく人が集まってくる。一方で負を減らす仕事はその逆だ。優秀な人材が集まる条件がお金ありきの拝金主義の社会を早く脱さなければいけない。ソーシャルゲームに人を集めている場合じゃない。僕が就職活動をした時に二大人気業界は、ソーシャルゲームとネット広告だった。ネット広告はまだしもソーシャルゲームはお金以外のなんの価値も産まないと僕は心から思っている。無駄な時間と金を搾取して人の欲望を煽り、お金を生み出す魔の機会である。搾取の仕組みを優秀な人材が集まって必死こいて考えているのは滑稽でしかない。オンラインゲームはまだコミュニケーションの要素があるが、ソーシャルゲームはそれすらも希薄で本当に無理だ。ただソーシャルゲームの業界も少しずつ変化の波が訪れているように思う。異なる価値を模索し始めている。

岩井さんの大丈夫?という言葉に反応して、こらえていた力が抜けたようにアイドルの彼女は涙を流した。彼女の反応はみんなの反応だと思った。一人の少女の個人的な話ではなく、万人に共通する全員のお話であること。そう思わされる拡がりのあるエンディングだった。

印象的だったのは誰もが「こどもたち」という言葉を語っていたこと。振り返るのは過去だけど、みんなが未来と向き合っていた。


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