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吹雪の中でも、春の風は吹いている

月曜日から新しい職場での仕事がはじまる。初っ端リモートスタートになることを最初は不安視していたが、今はこの異常な状況を少し面白いと感じている。未知には不安定と引き換えに新たな発見がやってくる。この機会から何かを生み出したり、未曾有の自体に翻弄された経験をいつか思い出話にする、そんな希望を糧にして歩むだけだ。

物語のように綺麗で美しい区切りはなかなかない。送別会はなくなった。最後に備品返却に訪れたオフィスはガラガラだった。半分住みついているくらいに深夜も休日も、数多の時を過ごしたオフィスを後にするのに、なんだか実感もわきにくい。空調が悪いなんて文句を言っていたけど家のようにリラックスできるオフィスだった。オフィスが、というよりそういうありがたい安心感のあるコミュニティだった。

それから、徒歩で通えるのも好きだった。電車通勤を懸念していたが皮肉なことに新生活はリモートスタートなので通勤はない。しようとしていた引っ越しやシェアハウスへの移住がなし崩し的に延期になったことも、結果的に今の自分を救うことになった。立地は悪いけど部屋自体にはとても満足しているマンションだからこの部屋で自粛生活をおくれてよかった。

4年間の社会人生活が終わった。まだ4年なのか、もう4年なのか。大学時代はついこの前みたいなのに社会人1年目の日々は遠い昔のようだ。そんな矛盾だらけの感覚。時の流れというものは曖昧で、それに対する自分の捉え方もでたらめだ。たくさんの人と時間を共有して離れ離れになった。次は自分が別の道を歩む。東京は出会いが多い分、別れも多い街だ。

この春は有休消化をしながら行ってみたかったけど行けていない関東の色んな場所をぶらぶらする予定だった。その計画は倒れたけど、たくさんの映画やアニメなどのコンテンツを楽しむことができた。アウトドアとインドアのどちらに偏っても生きられる人間でよかったとつくづく思う。

去年の後半はプライベートな時間がほとんどなかった。人は娯楽を失うと感性が腐ってつまらない人間になるのだと自分自身の身をもって体験した。誰もがそうだとは限らないが少なくとも僕はそうだ。そのロスを取り返すように自由な時間をすごすことができた。この数週間の休みを経て、顔つきまで若返った気がする。

そして2020年の3分の1が、もう終わる。自粛状態が落ち着くころには1年の半分が終わっているだろう。悲観的に見ると今年すら終わってしまうのかもしれない。きっと同じ日々は戻らない。その日々は衰退なのか更新なのか。その答えは誰も知らない。今を生きる一人ひとりが新しい日々をつくりだして、各々がその新しい日々に意味づけをするんだ。苦しみを経て世界は明るくなったと思えるように、この吹雪の中をみんなでもがき苦しみながら進んでいきたい。遅れてやってくる春に、祈りをこめて。みんなが生きていてくれますように。


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