マガジンのカバー画像

【MOVIE】映画の感想

27
映画の感想や考察
運営しているクリエイター

#映画

【感想】市子 ※ネタバレあり

良質な作品を観た後は言葉よりも感覚がじんわりと自分の中に残る。市子もそういった作品だった。 ミステリーのように謎がなんなのかを気にしながら見ているつもりが様々な者から観た市子像に自然にスポットライトが当たるように構成されており、市子の謎を追っているつもりが気づいたら彼女自身の実像を追いかけている秀逸な構成。 冒頭のシーン、市子が汗を垂らしながら歩く姿のままならなさ。その存在感に一気に引きこまれる。真夏の海から真っ黒な服を着た市子が歩いてくる。 少し猫背のようにも見える首

【感想】コーダ あいのうた ※ネタバレあり

これぞ映画。映画である必然性がある作品。 後半ずっと涙が止まらなかった。言葉にできないいろんな気持ちがあふれてただただ感動した。辛さやもどかしさや思い、その全てがごちゃまぜになった。全体的には辛さや残酷さの成分が多かったように思う。ただその中でもひしひしと存在している思いに力強さがあるから感動するのだと思う。 最後の約30分、発表会からの歌のシーンはとにかく泣けてしまう。 ろう者としての目線が描かれる音が消える演出。無音の世界。聴こえない娘の歌。感動する人々。娘だから誇らし

【おうちで映画館】Netflixで観れるおすすめ映画10選

前回のおすすめアニメ21選に続いてずっと書きたかったおすすめ映画まとめnoteをこの機会についに書きました!今回はNetflixで観れる作品に絞って紹介してみました。邦画、インド映画、韓国映画、フランス映画、アメリカ映画、アニメ映画と幅広く厳選してみました! リップヴァンウィンクルの花嫁主人公の七海はなんでも屋という名の詐欺師である安室の詐欺にはまり人生がどんどん狂っていく。 岩井俊二監督が主人公を演じる黒木華にあてがきをした作品。 とにかく異世界にもってかれる感がすご

【感想】ラストレター - 想いが人を生かしてくれる

映像美ラストレターを観た。岩井俊二さんの映画は映像だけでぐっと違う世界に連れ去られてしまう病的な魅力があって公開が決まったときから絶対に観ると決めていた。 結論から言うと今回の作品では岩井俊二さんの他の作品にあるような病的な映像の魅力はなかったように思う。が、変態性こそないものの紡がれる映像はいずれも確かに美しかった。主張しない洗練された美しさだ。 学生の頃抱いた思いこの映画を観ながら高校時代よりも小学時代や中学時代を思い出していた。高校時代は社会への繋がりが現実味をおび

【感想】マチネの終わりに - まるで音楽のような人生を ※ネタバレあり

「マチネの終わりに」を観てきた。普段は感動したりドンピシャで良いと思った映画しか感想を書かないのだけれど、賛否両論で色んな意見がある映画なので自分なりに思ったことを書くと面白そうだなと思い感想を書いてみることにした。 書き終えてみて。咀嚼すると色んな味が出てくる映画だった。とても音楽的な映画だった。 「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」本作のキーのメッセージだ。このメッセージが良いなって思ったのが映画を観に行っ

女の子の絶望を希望に変えるため『ホットギミック ガールミーツボーイ』は金字塔を打ち立てた ※ネタバレ感想

僕なりに解釈したホットギミック ガールミーツボーイ※下記、ネタバレを含みます。 ホットギミック ガールミーツボーイは、表面でおこった事実をなぞらえるのとその意味を解釈しながら観るのとで全く違った捉え方になる映画だ。 表面的な見方をすると、初という自信のない少女が、妹をかばうために男の言いなりになることを皮切りに、闇を抱えたサイコパスみのある男たちに心も身体も色んな初めてを捧げながら消費されていき、最終的には消去法で現実的な選択肢の男に落ち着いて幕を閉じるような、かわいそう

「おもちゃを大切にする物語」から「おもちゃの人生を尊重する物語」へ 【トイ・ストーリー4】 ※後半ネタバレあり

トイ・ストーリーにおける「ストーリー」とは何か本作の感想を書くにあたってまずは、「トイ・ストーリー」という題名が現すストーリーとは何かについて考えてみた。 トイ・ストーリーが現すストーリーとは「人とおもちゃたちとのストーリー」だろう。 トイ・ストーリー4のキャッチコピーは、あなたはまだ─本当の「トイ・ストーリー」を知らない。だ。トイ・ストーリー4は今までのストーリーとは明確に描きたいストーリーが異なる。トイ・ストーリー4が描くストーリーは「おもちゃの人生というストーリー」

『海獣の子供』は全宇宙の生命を肯定する

予告編を観た瞬間から、映像!半端ない!!米津の歌やばい!!!なんだこの体感したことのない超感覚は!しかも久石譲!芦田愛菜!絶対観る...! となっていた怪獣の子供をやっと観てきた。 まずは、予告編を観てみてください。 少しでも多くの人に興味をもってもらって映画館に足を運んでもらいたい一心でネタバレなしで感想を書きました。少しでも興味をもってくれた方はぜひ映画を観てみてください。まだギリギリ間に合います。尚、映画の神々しさに飲み込まれ一部スピリチュアルな内容の感想となってい

こんな世界だからこそ『天気の子』は正解よりも愛を叫ぶ

平日の夜に1人で足を運んだ近所の映画館、200人のキャパに対して20人くらいのお客さん。もうすぐ日付もまわる頃、映画のラストシーン、RADWIMPSの「大丈夫」を聴きながら「やられた...」と映画館の暗闇の中で僕は一人打ちひしがれていた。新海誠から未来を問われている感覚がした。 このnoteでは僕が天気の子から受けとったメッセージをつづっていきます。 ※本編のネタバレを含みます。 沈みいく東京が現すもの天気の子を観てまず印象的だったのが作中に流れる諦観した空気感だった。

【感想】世界でいちばん悲しいオーディション

テアトル新宿での舞台挨拶兼、上映会に行ってきました。渡辺さんも来てました。簡単に感想を。 WACKの映画は多分全部観ている。 その度に必ず「試されている。」って感覚を受ける。 誰かが死ぬ気で努力して得たその場所に、少しの努力でいこうだなんて、甘ったるい現実はない。努力に大して平等に見返りがくるような、甘ったるい現実はない。 報われるか、報われないかは、わかんないけど、それでも諦めたくなくてぶっこむ。そのぶっこんだやつの中から、ほんの一部のやつがたどりつける場所がある。

【感想】かぐや姫の物語 - 人間への全力の愛で、人間と人生を全肯定した国宝級の名作。

国宝的作品日本最古の物語と言われている竹取物語。正に国宝級作品である。それを日本が誇る、いや人類が誇るアニメスタジオのスタジオジブリが10年近くの時間と、50億ものお金と、人間離れした過酷な作業を経て、リメイクして素晴らしい作品にならないはずがない。このく品も文句なしの国宝である。時間もお金もスタッフもすごいけど、実際の所はそんなロジックで語るのは野暮である。どれだけ時間もお金もかけてもできないものがある。それを形にしてしまった。途方もない。 観終わった直後の感想完全に圧倒

【感想】friends after 3.11

岩井俊二さんの作品を観た。取り分け印象的だった内容をメモ代わりに残す。 原子力発電についてかつて地球温暖化が問題視される中でCO2を出さない発電方法として期待されたのが原子力発電だった。しかし、むしろCO2は足りていないくらいが現状だという。登場していた教授は火力発電によってむしろもっとCO2を排出すべきと提言。 僕の知識量だと何が正しいかはわからない。が、感情的に煽られる危険性を物語っているエピソードだと思った。温暖化が 闇雲に問題視されて、それを理由に感情的な共感のも

【感想】聲の形

感想聲の形、を観れてよかった。文句なしの名作であると同時に制作者の溢れ出る創意工夫と思いを感じる佳作だった。 聲の形はマンガもリアルタイムで観ていて、石田くんの境遇があまりにも自分に重なりすぎて、出て来る周りの人たちも小学生、中学生を思い起こされる人たちだった。 人が不器用なのはあたりまえで、その不器用さが愛おしい。その不器用さが時にはむかついたり、許せなかったりする。僕は悪気なく自分を守ってばかりで周りに合わせてばかりいる川井さんみたいな子のことをよくむかつくなって思っ

【感想】きっと、うまくいく

全面的に大好き...!教育にかける思い、機械がもつロマン、それぞれの情熱に向かって生きること。常識とか当たり前に屈せずに心の底から自分の信念のままに志を曲げずに生きる素晴らしさ。 インドの映画を初めて観たけど、インドの風景がたくさん観れて嬉しかった。現実離れしたシーンも多々あるけど映画だからこそんの醍醐味でもある。 観ていてずっと幸せだったけど、同時に自分が今まで信念を曲げてきたこと、諦めてきたこと、逃げてきたことも思い出されてとっても悔しくなった。情けない...!彼らの