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Raw Poetic & Damu The Fudgemunk - Moment Of Change (2020)

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 ワシントンD.C.をベースに活動するプロデューサーDamu The Fudgemunkと、その相方とも言うべきラッパーRaw Poeticのコンビによる2020年作。ソウルフルあるいはファンキーなネタ使い、太さだけでなく心地良い質感を追求したドラム、温もりに満ちたベース、それらが組み合わさることによって醸し出されるノスタルジックな香り。これほどまでにサンプリングミュージックの魅力や、サンプリングへの愛情に溢れた作品は滅多に無いと思う。
 強いサンプリング愛や、時代を超越した独自の世界観という意味ではBobo James a.k.a. D.L. 「Ooparts」(2011)に通じるものを感じる。だが、「Ooparts」が極上のネタをふんだんに盛り込んだ掘り師的な側面が強いのに対して、この作品が面白いのは、適当に買ってきたソウルのレコードに入っていそうな何気ないストリングスやホーンのフレーズで構築されているように聴こえることだ。例えて言うならば、冷蔵庫の中の食材だけを用いて即席で極上の一皿を作ってしまう一流シェフといったところだろうか。そんなサンプリングミュージックが持つ一種のマジック的な楽しさや魅力が詰まっている。第一印象は単に聴き心地の良いオーセンティックなヒップホップ作品のように感じるが、Damu The Fugdemunkの並外れたセンスと構成力に気が付いた瞬間から、圧倒的な存在感を備えたアルバムに変わるだろう。
 そしてRaw Poeticのラップもビートと同等、あるいはそれ以上に魅力的だ。ややハスキーな独特の声質とメロディアスなフロウが実に心地良い。多くのラッパーが犯しがちな手癖で同じような節回しを使い倒すのではなく、キーやテンポといったビートの要素を踏まえた抑揚のあるラップを聴かせてくれる。また「フック職人」としての腕の良さも存分に楽しめる。せっかく良いビート、良いライムを披露しながら、フックの弱さゆえに凡庸な印象や結果に終わる作品は無数にある。彼の生み出すフックは、そのメロディセンスの為せる技という側面も強いが、ラッパーには是非とも参考にしてほしい。
 リスナーに対して最新のトピックを提供するような話題性のある作品ではないが、質の良い音楽を真っ当に作る姿勢がとても素敵だ。あらゆる面でアップデートが要求される世の中で、こうしたアルバムがリリースされることは意義深いことだと思う。大推薦盤‼︎

(Instagramより転載)

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