鉄仮面のおっさん
突然だが、私はいつも、
とんでもなく分厚い鉄仮面を着用している。
言い換えると、私の考える良いやつを全力で演じている。
ビジネスモードというのだろうか。
最近はその精度が上がってきたのか、
割とご好評いただいており、
苦手だった人との会話も、
比較的スムーズに運べるようになってきた。
演技は洗練され、
仮面着用のストレスもかなり減ってきた。
中々にして自然に見えるのではなかろうか。
人間関係や社会をうまく渡るため、
長い月日をかけてたどり着いた処世術である。
…ここで悩みが一つ。
どうにも毎日、メッキが剥がれ落ちる恐怖がある。
私は嘘つきだ。
本質的な私はこんな人間ではない。
うっかりボロを出した瞬間、むちゃくちゃ嫌われるのでは?
全部元通りになってしまうのでは?
あ~怖い。そう思うと怖くて夜しか寝れない。
だがしかし、この仮面を赤の他人であるとも
言い切りたくないのだ。
ある意味、理想として掲げている人物像であるし。
そして私なりに考え、実践し、失敗を重ね、
演じまくって徐々に自身に落とし込んでいる。
だんだん精度も上がっている。
昔に比べたら、本当にうまくやれるようになった。
頑張るだけ、仮面と自分は近づいている。
仮面と一体化していくようにも思える。
…が、本質的な私はずっとそこにある。
私がまるで二人いるようだ。
仮面の私が、本質的な私をめっちゃ叩いてる。
そりゃあもう毎日飽きずにシバき倒している。
生きるに必要だからねぇ…。
最初は少々かわいそうであったが、
仮面を被り、心を鬼にして毎日シバいて回ったところ、
本質的な私はだいぶ引っ込んで小さくなった。
仮面の外し方も忘れてきた。
でも何かの拍子にブチ切れて爆発しそう。
その時、私は本当に二つに分裂してしまうのではないか…
そんな恐怖もあったりする。
きっと全部ひっくるめて私なのだと、
言って聞かせてはいるものの、
まだ何となく理想の自分は分かってやれてない。
今日もばっちりシバいて回っている。
寛容さの修行がまだ足りていない証だろうか。
また仮面の練度を上げんとならんなぁと思った次第。
改善活動を継続して参りたい。
人間とは複雑である。
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