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Washing Machine

ベースをはじめて数ヶ月が経過。
ようやくフラットワウンドの呪縛から解放され、弦選びも落ち着きつつある。
課題曲を絞り、ひたすらその曲だけを練習。音の強弱やテンポが不安定でもたついているが、少しずつ形になってきている。
ここで、“脱力”という難壁にぶちあたる。脱力して効率よく弾けないのだ。ちょっとスピーディなフレーズになると身構えてしまい、フィンガリングに無駄な力が入る。あからさまにフォームが崩れてしまう。理想とかけ離れたコミカルな音が、アンプから悲しげに漏れる。モータウンが遠のいていくのを感じた。
巧みなベーシストの運指を見ると、指がほぼ動いていない(ように見える)。自分はどうだろうか? スラップスティックの如く、ドタバタとそこらを動き回っている。
ベース関連の動画を参考に改善を試みるが、簡単なようでなかなか乗り越えられない。初心者が脱力して演奏するには相当の慣れが必要らしい。
指だけではなく、腕も使って力を分散させる。あわよくば全身も使う。指の構造を理解し、無理のないフォームで弾く。理屈としては分かる。なるほど、と思う。しかし、いざ挑戦してみると難しい。
最小限の力で弦を鳴らす感覚を掴み、根気強くトレーニングを継続するほかないのか。
個人的には覚悟ができているが、連日同じ曲、ヘロヘロのベースがループする嫌がらせのような状況に、家族が耐えられるのか心配だ。家族の気が狂ってしまう前に一刻も早く上達するか、ヘッドフォンで遮音しなければならない。
「ベースを4時間くらい練習して、疲労困憊の状態で弾けば自然と脱力できる」
そのような記事も見たが、そもそも4時間も練習しない。YouTubeも見たいし、漫画も読みたい。猫とも戯れたい。そういった意味での脱力は、完璧に実践できている。

先日、溜まりに溜まった大量の洗濯物を2回に分けて洗った。
絡まった衣類をほぐし、干す前にシワを伸ばし(パンパンするやつ)、整えてハンガーにかける。その一連の反復でダメージを受けたのか、異常に手が疲れた。その後にいつも練習しているSilk Sonicの『Smokin Out The Window』を弾くと、一瞬ではあるが脱力できた。もたついていたフレーズがすらすらと弾けたのだ。
これかっ! これが脱力か! 洗濯物を溜めればいいんだな! と手応えを感じたが、すぐに我に返った。
演奏前に毎回大量の洗濯をするわけにはいかないし、脱力するために洗濯物を溜めるベーシストなんて聞いたことがない。
結局のところ、地道にやるしかないのだと、思い知らされた晩夏の週末であった。

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