SaaSビジネス10の成長戦略その①
今日はSaaSビジネスを成長させる10の成長戦略について、
具体的な事例を交えつつ説明をしていきます。
僕はSaaSが好きです。
もっと日本国内でSaaSの普及を促進したい。
そんな思いを持って、前職ではエンタープライズセールスの傍ら、
SaaSエバンジェリストとしての活動もしておりました。
そして独立をした今、誰かに忖度をする必要もなければ、
「個人の意見です」なんていう脚注を付ける必要もない。
「最終的には会社のリード獲得」とかそういう下心も抜きにして、
完全フラットに発信できる。
そう思ってこのnoteを書いております。
全部で3回で配信したい!!と思っていましたが、
書いていると結構詳細に書かないといけないことに気付いたので、
全5回を目処に配信を予定しています!
今回は第1弾として、
①プライス・パッケージング戦略
についてまとめていきます!
このnoteはサブスクリプションに対する理解度を上げる目的もございますが、サブスクリプション=月額課金という認識の方は、
こちらのnoteを読んで頂くといい感じになるとおもいます!
はじめに
2019年はSansanの上場や、freeeの上場の発表等、日本のSaaSからユニコーン企業が生まれるジャパニーズドリームを目にすることが出来ました。
その一方、日の目を見ずに消えていく企業も多数存在します。
SaaSは、誰でもやれば儲かるビジネスではありません。
「年間成長率が20%未満のソフトウェア企業が倒産する可能性は92%」
出典:マッキンゼー/Grow Fast or Die Slow
この調査結果が物語るように、ソフトウェア企業として生き残っていくには成長を続けるしかありません。
弊社も含めて、規模の小さいスタートアップ企業が年間20%の成長をすることは難しくはありませんが、規模が拡大するにつれて、売上を成長させていくことが極めて困難になっていきます。
そこで、売上が1兆円を超えてもなお成長を続けるSalesforce.comはもちろん、売上500億円を超えても爆速成長をするZendeskやBOX、New Relicといった、企業がどんな戦略で成長をしていったのか。
それを事例として、先人たちの知恵から学ぼう!というのが本企画です。
では、本編へ入ります〜!
*僕がZuora時代にSaaSエバンジェリストとして活動していた内容をベースに、再編集したのが本noteとなります!
①プライシング・パッケージング戦略
多くのSaaS企業は、1つのサービスを販売するところからスタートします。
そして、多くのユーザに利用をしてもらい、フィードバックを得ることによって、サービスを成長させていきます。いわば、永遠のβ版です。
すると、新機能やオプションが増えていき、ある時から1つのサービスにすべてを詰め込むことが難しくなってきます。
このタイミングで、複数の価格モデルを設計し、成長しながらも様々なニーズに対応していく必要があります。
具体的には、以下の2点です。
①様々なエディションを設け、様々な顧客セグメントにアプローチ
②オプションやアドオンによって、更に顧客ニーズに対応
です。
では、具体的な事例をご紹介していきます。
事例:クラウド会計のfreee
freeeさんも元々は2プランの提供のみでした。
・個人事業主プラン:980円/月
・法人向けプラン:1,980円/月
しかし、2019年11月26日現在のプランをみてみると・・・
3プランになっています!
ミニマム:1,980円/月
→最低限の機能
べーシック:3,980円/月
→ミニマムプラン+電話サポート、請求書の定期・一括請求機能等
プロフェッショナル:39,800/月
→ベーシックプラン+予実管理、プロジェクト会計等
この3プライスプランの設定ですが、いままでもマーケティングの話で何度も議論されてきたネタだと思います。
「多くの人は真ん中を選ぶので、真ん中のプランの利益率を高く設定しておく」
という話です。
しかし、SaaSの場合はそれだけではありません。
一番安いプランを選択したお客様でも、
使っていくうちに、「もっと上位の機能がほしい、使いたい。」と思ったときに、アップセルができるパスを作っておくことに真の価値があるのです。
freeeの場合だと、請求書の定期・一括請求であったり、電話サポートがほしいな。と思った人は、ミニマムからベーシックにアップグレードできるのです。
さらに、もっと使っていくうちに、ユーザが10人以上で使いたいとなったり、詳細な予実管理がほしいな。と思ったらベーシックからプロフェッショナルに移行ができる。
ここにSaaSビジネスのプライス・パッケージング戦略の妙があるのです。
ちなみに、今回例に出したfreeeは3プランとお伝えしましたが、
正しくは6パターン+αなのです。
じつは、ミニマム、ベーシック、プロフェッショナルのすべてのプランに、年払いと月払いの2パターンが準備されているので、
3プラン×支払い2パターンで6パターンとなります。
さらにさらに、従業員21名以上の中規模以上の顧客にはまた別のプランが準備されている。
なので、6パターン+αになるんです。
この、6パターン+αにも意味があります。
具体的に、1サービス1プランのみの価格設計だと、
入るor入らないの2択の選択となりますが、
freeeの場合だと、
ミニマムに月額で入る
ミニマムに年額で入る
・・・
と6パターン+入らないの7択の選択肢となります。
純粋な2択よりも、7択の方が、様々な顧客ニーズに対応し、
新規顧客獲得にも大きく寄与をしてくれます。
事例:Salesforce.com
Salesforceも同じです
Salesforceの場合は4プラン準備されており、
それぞれの機能ごとで明確に差別化をされています。
例えば、
Essentials:3,000円/月でAPI利用不可
Professional:オプションでAPIを利用可能
Enterprise以上は標準でAPIが利用可能
のように明確に差別化をしておくのです。
その上で、個社ごとの個別ニーズがあった場合は、
全体の機能として提供せずに、オプションやアドオンとして提供することも非常に重要な戦略です。
すべてのユーザに必要は無いので全体機能には入れないが、
一部の顧客セグメントでは必須の要件になるので、オプションとして提供をする等です。
もちろん、その逆も然りで、
殆どの顧客が使っているオプションやアドオンがあれば、それをもう標準提供してしまう等。
これは、今後詳細に説明をしていきます。
まとめ
プライス・パッケージング戦略においては、主に2つのポイントがあります。
①様々なエディションを設け、様々な顧客セグメントにアプローチ
②オプションやアドオンによって、更に顧客ニーズに対応
①については、
freeeの場合、
SOHO顧客:ミニマム、
通常:ベーシック
よく使う顧客:プロフェッショナル
のような分け方ができます。
また、これらはユーザ側の利用度合いはもちろん、
企業としての成長によって、
アップセルのチャンスを作ります。
→次回解説します!
②については、
Salesforceの場合、
様々なオプションやアドオンの組み合わせによって、
顧客ニーズに柔軟に対応できます。
また、利用度合いやニーズの変化によって、
クロスセルのチャンスを作ります。
→次回解説します!
参考:価格設計をするときの社内的な注意ポイント
ここまでの概念は、分かっていても出来ていない企業が多くあるのも事実です。理由としては、サービス提供開始時に変化を前提とした構築にしていないことが多いからです。
なので、価格を変更したくても、現行契約の書き換えや、HPからの申込みの導線など、ありとあらゆる部分で問題が発生し、変えられないという悩みを持っている企業が多いことも事実です。
そして、規模が大きくなればなるほどスイッチングコストも大きくなるため、可能な限り早い段階から、変化することを前提とした管理にすることをオススメいたします。
SaaSの真価は、ユーザのニーズを把握し、永遠のβ版として価値を提供することにあります。
自社都合の管理やシステムの都合で提供できないサービスより、
ユーザのニーズにあわせたプライス・パッケージング戦略を取るサービスの方が愛されるのではないでしょうか。
次回予告
次回は、アップセル戦略と、クロスセル戦略について言及いたします!
あの企業はどうなってるの?等のリクエストもお待ちしてます!
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