パラサイト 半地下の家族 考察まとめ
みなさんこんにちは!
DIZ (@DIZfilms)です。
今回は先日インスタライブを配信した時にお話しした
「パラサイト 半地下の家族」についての
考察を一問一答式でまとめていきたいと思います。
※ネタバレが含まれますので鑑賞後にお読みください。
Q1、パラサイトはハッピーエンド?
パラサイトはハッピーエンドか、バッドエンドかで答えられる簡単な映画ではないと思っています。
しかしどちらかといえば、ハッピーエンドだと考えます。
なぜなら希望を持って終わるから。
どんなに苦しい時でも人は希望を持てる。
そして希望があるからこそ、前を向いていける。
韓国では現在、全てを諦めて生きる若者が多くいます。
七放世代といって「恋愛」「結婚」「出産」「人間関係」「マイホーム」「夢」「就職」の7つを放棄した若者を表す言葉があるほどに。
そんな時代に生きても、ギウは諦めず希望を抱いて映画は終わります。
監督はギウがあの家を買うには彼の平均年収だと547年かかる、と答えていますし
ギウ自身もそれをわかっていながらも希望を持つラストなので
非常に複雑な終わり方ですが、計画を立てても無意味になる時代でも
父のために希望を持って、計画を立てるギウの家族愛に涙しました。
Q2、石の意味
石に関してはみなさんそれぞれの見解があると思いますが、私は富やお金を象徴していると考えています。
ギウが友人のミニョクから石をもらってからキム一家は仕事を得て豊かになっていきます。
後半、洪水のシーンで石が汚い水の中から浮かんでくる印象的なシーンでは、嘘をついて得た汚いお金、豊かさが浮かび上がってくるように思えました。
この時点でギウはパク一家に寄生して得る富が今の貧困から抜け出すのには絶対に必要だと思っていたから、真っ先にあの石を助けに行った。
しかし、そんな汚い豊かさをラストの計画のシーンで綺麗な水の中へ戻します。
それは、ギウ自身で得た豊かさでないと永遠ではないということに気づいたからなのでは、と考えています。
Q3、なぜギウは地下に石を持っていった?
これはインスタライブ中でも解釈が分かれましたね。
まず1つ目は、地下の男を石で殺すため。
2つ目は地下の人たちにも自分と同じように石の力で富を得て欲しいと考え、分け与えるため。
私個人の意見だと、石で殺すために持っていったのかと思います。
体育館でギウが言った「責任を取る」というセリフやバレないように地下に入っていく様子や誤まって石を落としてしまったギウの慌てる姿を見て殺意があったのかな、と4回観て結論が出ました。
Q4、パラサイトのタイトルの意味
最初はキム一家がパク一家に寄生するストーリーだからこのタイトルがつけられたと思いますが、映画を最後まで観るとこの世で生きる人間すべてのことを指すタイトルだと気づきます。
みんなお互いに寄生しあって生きている。
富裕層も貧困層からお金を得ないと裕福には暮らせないし、貧困層も富裕層から仕事を得て働かないとお金を得られない。
お互いに寄生し合う世界なのに、どうしてこんなにも貧困の差が生まれてしまうのでしょうか。
パク社長はおそらく携帯会社の社長だと思いますが、携帯代を払えなくてWi-Fiを探すところから映画が始まりますよね。
パク一家は貧困層からお金を吸い上げて裕福に暮らしていることを象徴しているかのように。
携帯代を払っている多くの人たちはパク一家のように裕福ではない。
厳しい生活の中でやっと支払っているお金でパク一家は何不自由ない優雅な生活を送っています。
さらに、運転も家事も全て自分ではできず、貧しい人たちの労働に頼っている。
裕福な暮らしは貧困層の人たちに支えられているわけですが、そんなことは一ミリも考えていないように感じました。
パク社長は一線を越えるな、と繰り返し言っていますが
貧困層のことなど知りたくもないということの表れなのでしょう。
お互いに支えあって生きていく社会は理想でしかなく、パラサイトして生きている社会が現実である、という意味もタイトルに込められているのかなと考えます。
Q5、ダソンの存在
ダソンは唯一、キム一家の嘘に勘付いていた存在であり、地下の人の存在も知っていた重要なキャラクターですね。
これは全てを知っていながらも何も行動に移そうとしない我々のことではないかと考えます。
助けを求めている人がいることを知りながら、何もできない。
モールス信号で助けを呼ばれても、助けることもできない無力なダソンに自分を重ねて観てしまいました。
映画を通して貧困問題に触れ、どうにかしたいと思いながらも何もできない自分が悔しいです。
Q6、なぜダソンはすぐにジェシカに懐いたのか?
ダソンは母に愛されていたようですが、母がダソンを抱っこしたり、撫でたりスキンシップを取る様子は一切描かれていませんでした。
母がいつも抱っこしているのは犬。
ダソンは母からの愛に飢えていたのではないでしょうか。
そんな時にジェシカはダソンを抱きしめたり、スキンシップを取る努力をしたのかもしれません。
ダソンが求めていた温もりをジェシカは与えることに成功したから、と考えています。
Q7、ヤング&シンプルな奥様とニオイについて
この映画で一際目立つキャラクターとして奥様が大好きです。笑
奥様はきっと育ちがいいお嬢様で、パク社長はもしかすると半地下から這い上がった人かもしれません。
においに気づくということは、においを知っているということです。
奥様は洪水で汚れた後ににおいに気づいてたので、それは誰でも気づくにおいだったのだと思いますが
敏感に半地下のにおいを嗅ぎ取っていたパク社長はかつて半地下の人だった説を推したい。
奥様はお嬢様育ちなので、純粋で優しく騙されやすいんですね。
お金は心のシワを伸ばすアイロンだ、というセリフの通りの人物と言えるでしょう。
"におい"はスクリーンを超えて、国境を越えて誰にでも伝わる表現として今回パラサイトで象徴的に使われていて本当にポンジュノ監督凄いな、と思った部分です。
映画の中で”におい”をこれほどまでに活かした作品は他にないですね。
Q8、台湾カステラとは?
台湾カステラは日本でいうタピオカみたいなものです。
日本でもタピオカブームでたくさんお店ができましたよね。
韓国では2016~17年頃に台湾カステラブームがありましたが「大量の食用油や添加物を混ぜていて、賞味期限切れの生クリームを使っている」などとドキュメンタリーで告発され、のちにその番組はフェイクだったと判明しますが台湾カステラのイメージはガタ落ちし、たくさんのお店が潰れました。
そうして借金を抱える台湾カステラ店オーナーが路頭に迷うということが実際に起こっています。
そのうちの一人が地下にいるリスペクトおじさんです。
現実にリスペクトおじさんは存在するという...
Q9、桃の意味
中国では桃は鬼を追い払うものとして古くから使われてきました。
日本でも桃太郎という話がありますが、あれも鬼を追い払う物語ですね。
キム一家にとって、家政婦のおばさんは追い払いたい存在だったので
桃を使ったということでしょうか。
Q10、富と幸せは比例しない?
皆さんはキム一家とパク一家、どちらが幸せそうだと感じましたか?
私は貧困の中でも支え合うキム一家の方が心が豊かで幸せそうに感じました。
一方、物質的に満たされているパク一家は冷たい家族に感じました。
富と幸せは比例しないことを対比で表現しているのかな、と考えます。
Q 11、ポスターでキャストの目線が隠されている意味
これはどこにでも存在する人たちを描いた映画なので、誰にでも当てはまるよう目線で個人が隠されているのではないかと考えます。
この作品が決して他人事ではないことを表現しているのかもしれません。
Q12、ダヘは毎回家庭教師と恋に落ちていた?
毎回恋に落ちてなかったと思います。
なぜならミニョクがギウに見せたダヘの写真はインスタグラムの画面でした。
ミニョクとダヘが恋に落ちていて結婚も考えている中だとしたら、ツーショットの写真があってもいいと思います。
ミニョクはインスタグラムの写真で妄想していただけで、ダヘに想いも伝えていない状況だったと思います。
ダヘはギウだけに恋したと考えています。
Q13、友人ミニョクの無意識の差別
友人ミニョクのキャラクターは少ししか出演していないのにも関わらず
すごいインパクトがありましたよね。
彼は無意識に差別をしてしまう人たちを象徴していますね。
自分では意識していないけれど、言葉の端々に現れるギウを見下す言葉。
「大学行かないの?」⇨「行かないんじゃなくて行けないんだよ」
「同じ大学の奴らにダヘを任せられないけどお前なら大丈夫」⇨「ダヘがギウに恋するなんてあり得ない。なぜなら半地下の人間だから。」
あ〜いるよなこういう人。
無意識に人を傷つける人。
自分も気づかないうちにミニョクみたいに差別して見下してしまっているシーンがあるかもしれない、と反省しました。
一番怖いのは無意識ですね。
Q 14、大雨の日の家政婦さんの顔はどうしてボコボコになってる?
おそらく借金取りに殴られたのかな、と思っていましたがどうでしょうか。
Q15、性の描写について
性の描写については
富裕層=ソファでのラブシーン
半地下=ギウとダヘのキスシーン、ギテクがチュンスクのお尻を触るシーン
地下=コンドームが映るシーン
があり、性だけは貧困関係なく平等なのだと捉えました。
Q 16、インディアンの意味
ダソンがインディアンにハマっていること、ラストでギテクがインディアンの格好をしていることなど、パラサイトにおいてインディアンは非常に重要な象徴。
アメリカとインディアンについてはここで話すと長くなってしまうので調べて欲しいです。他の映画でも役に立つので!
最初はパク一家がインディアンで、パラサイトしてくるキム一家がアメリカなのかなと考えていましたが
ラストにギテクがインディアンの格好で血を浴びることから
キム一家がインディアンでパク一家がアメリカ(妙にアメリカかぶれの奥様)=韓国にとってのアメリカを表現しているのかな、という話もインスタライブでお話ししました。
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もっとお話しした内容があるのですが
長くなってしまったので、続きはまた今度。
インスタライブで皆さんと語り合うことができてとても楽しかったです。
新しい解釈が生まれたり、答えはひとつじゃないからこそ映画は素晴らしいということを改めて感じさせて頂く時間でした。
また、語り合いたい映画などがありましたらツイッターのリプライなどで教えてください。
それではここまでお読みくださり、ありがとうございました!
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