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ぬるいビールの物語

よく冷えたビールは美味しい。間違いない。


ぬるくなって、ジョッキの周りにたくさん水が滴る状態になって、机を湿らす。この状態のビールはあまり美味しくないけれど、そこには物語がありそう。

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恋人同士。今日は楽しいデートにしたかった。でも言わねばならない。言わなきゃ言わなきゃと思っていたら、いつもと違う様子が伝わったのか会話が途切れてしまった。
2人の間に流れる静かな空気。
ぺとっと手につくジョッキを握り直し、口を開く。
「あのね」
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疲れてしまった。
そう思って、仕事帰りに1人で入った居酒屋。
ビールと串焼きを頼むが、串焼きがなかなかこない。すぐ出るものを頼むべきだったな、とぼんやり思いながらも、今から頼む気にもならない。
周りが盛り上がっている声が聞こえる。
黄色い甲高い声。
自分があんな声を出したのはいつ以来だろうか。
すっかりぬるくなったビールをちびりとすする。
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暗いスタートになりそうだな、と書いてみて気づいた。
願わくば、ラストはぬるいビールを飲みきり、新しいよく冷えたビールを頼むか、仕切り直して日本酒でも飲んでほしい、と思う。

そんな話が読みたい。





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