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重症・軽症

自助グループ(*1)に通っていると、同病の患者たちの色々な
体験談を聞く。

 *1 依存症の患者自身が主催して各地で行われている。断酒会
  AA(アルコホリック・アノニマス)など。患者自身の経験を他の患者にシェア
  するミーティングが主な活動。アルコール依存症者の回復に
  大きく寄与している。

連続飲酒の様子、入院の回数、再飲酒のエピソード、
仕事を失ったこと、家族と別れたこと、路上生活をしたこと、
それでも飲むのをやめられなかったこと、回復不能の後遺症のこと、
そして、死んでいった仲間の話…。

そんな話を何度も繰り返し聞くうちに、いつのまにかこんなことを
考えるようになった。

この人は自分より重症。
この人は自分よりずっと重症。
この人は悔しいけど自分より軽症。

自助グループの患者たちの間では、こういうのを「違い探し」と言う。
つまり「自助グループあるある」の一つなのだ。

自分は仕事を失っていない。
自分はまだ入院したことはない。
自分は家族を失っていない。
自分はこの人たちとは違う。
自分は、自分は、自分は、自分だけは、

ひょっとすると自分は、依存症じゃないんじゃないか?

だから、アルコール依存症は「否認の病気」と言われる。
否認を続ける依存症者は決して酒を止めることはできない。
一口に「依存症者」と言っても、それぞれの抱える状況や現実は
千差万別である。

当然、比べようと思えば、色々な違いがある。
しかし、そこにフォーカスしても、依存症からの回復には
役に立たない。

比べて病気が回復するなら、いくらでも比べて違い探しを
すればいい。私も散々やってきた。

でも結局、どれだけ違い探しをやったところで、
私は私自身の現実を生きるしかないし、私自身の現実だからこそ
変えていける。

正直、まだまだ違い探しをしている自分がいることに気づくこと
は多い。むなしい作業だと分かっていても、自分と向き合うより
楽だから。

まぁ、「自他の別」から自分を解放するのは宗教の仕事だから、
気づくたびに自分を戒めていければOKかな~と、思っている。

私は依存症から回復したいのであって、
聖人になろうとしているのではないのだから。

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