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261 長町ラーメン


はじめに

人生には、忘れられない一杯があります。私の忘れられない一杯は「長町ラーメン」です。
煮卵に貝柱の汁が染み出るワンタンと厚切りの味の濃い目のチャーシューが最高の味を奏でていますが、なんといっても細麺とよく絡む鰹節のよく効いたコクがあるのにあっさりしたスープが最高です。
今日は、そんな長町ラーメンの思い出話を一つしてみたいと思います。

石巻から長町へ

2011年のことです。東日本大震災が発生して2カ月が過ぎた頃のことでした。各地からのボランティアの受け入れが少しずつ増えていっていった頃、私は、お世話になった方に連絡が付かずに心配がつのっていました。
石巻の近くの学校で教師をしていた先輩をボランティア活動を開始する前に訪ね少しばかりではありますが物資をお渡ししたいと考え、昔の記憶を頼りに先輩のご自宅を訪ねることにしました。しかし、道々の景色があまりに違い私は、自分の記憶に自信が持てず断念しました。
その時、ボランティア活動をするために自分が準備できた時間は、3日間だけでしたので、ボランティアセンターを訪ね、昼間はがれきの片づけや物資の搬入などを手伝いました。夕方のある程度の時間になると炊き出しを配る手伝いもさせてもらえました。
夜は、自分の車に簡易タープを固定して、長机を2つ置いて無料本屋さんを開きました。地震発生から2カ月が過ぎ、仮設住宅や避難施設での生活も長期化していましたので、手軽に楽しめる娯楽が喜ばれるのではないかと思いあるものを準備していきました。
持参したのは、段ボール20箱分の漫画や小説と読書のおともにと考えた小さな袋にいろんな種類のお菓子が入った詰め合わせでした。長机に本やお菓子の箱を出しておくと少しずつ子どもたちや大人の方が立ち寄っていただけ、持ち帰ってもらうことができました。
漫画も全巻そろっていないものでも喜んで手にしてくれましたし、古い小説の本や図鑑たちも新たな持ち主の手元に渡ってとても喜んでいるようでした。車の近くに椅子を4つとキャンプ用の机にライト2つ置いておくと簡単な野外漫画喫茶の出来上がりです。簡易ガスコンロでお湯を沸かしてインスタントラーメンやコーヒーも提供できるようにしていると深夜まで利用してくれる方もおられ、やってよかったとうれしく思いました。

最高の一杯

そんなこんなで3日目の午前中のボランティア活動を終えた時には持参した本やお菓子も全て利用していただけたので、明るいうちに家に戻ることにしました。たった3日ではありましたがハードな日程でしたので疲れも感じていました。
そこで、少し落ち着いて食事をしていこうと考え、仙台市のとあるラーメン屋さんに立ち寄ることにしました。そのラーメン屋さんはとても人気のお店のようで昼を少し過ぎた頃でも行列ができていました。
私は、近くの自動販売機の前のベンチで座ってしばらくすくのを待っていました。少し身なりも汚れていましたし、ふろにも2日ほど入っていませんでしたので前後の人に迷惑を掛けたくなかったのもありました。
少し休んで列の最後に並んだのが1時間後ぐらいでした。かなり前からそこにいて最後に並んだ私にお店の奥さんが声をかけてくれました。
「お待たせしました。だいぶ待たれましたよね?」と温かな言葉でした。私は、自分でも少し汚れていることを気にしていましたので、「ボランティアの帰りで少し匂いますが、お店に入って大丈夫ですか?」と尋ねると「一生懸命ありがとうございます。」「汚れてる分だけ胸張ってくださいよ。ありがとうございます。」とさらに温かい言葉を頂きました。
店に入ると奥さんが、お水をもってきてくださり、ワンタン煮卵ラーメンがおすすめだとお話してくれました。私は、おすすめのラーメンを頂くことにしました。出てきたラーメンはカツオのいい香りがする醬油ベースの本当に最高のラーメンでした。疲れた体にしみる濃いめの味付けのチャシューの油と最後まで熱々のワンタンは今でも思い出すだけでよだれが出てきます。
食べ終わり、お会計を済ませていると奥からご主人が出てきて、「ありがとう、また来てね。」と握手をしながらお礼を言ってくれました。
私は、最高の出会いに感謝しながら今までよりもいろんな意味で少し胸を張った気もちで家路につきました。

ボランティアという選択

もう少しすると能登半島地震の災害復興ボランティアの募集も始まるかと思いますが、ボランティア活動をする時の注意点や心構えを大変わかりやすく説明しているサイトがあります。政府広報オンラインをのぞいてみると被災地を応援したい方への災害ボランティア活動の始め方が具体的に示されています。どんなボランティア活動が求められているかもこれを読んでみるとよくわかります。短期のものや長期のもので支援の仕方も変わってくることも見えてきます。
ボランティア週間におすすめの教材です。
1日も早い復興には、多くの人々の協力が必要です。私も、来る日に向けて今しっかりと準備を整えています。被災地の皆さんの心と体の回復を今は願うばかりです。

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