見出し画像

182 どのくらい?26.9%って


はじめに

とある有力紙の世論調査によれば、10月現在の内閣の支持率が26.9%という結果が出ました。では、この数値がどのような意味があるのかを見てみることで低いのか高いのかを考えてみましょう。というのが今回の教育コラムの主な内容です。手始めに、各国の現政権への支持率をいくつか見てきます。

諸外国の支持率

アメリカでは、大統領の支持率は約37%、イギリスでは約20%、フランスでは約28%と日本の内閣の支持率が約27%といっても、他国と比べてみるとその低さは際立ちません。近しい国は、どこも約3割くらいの支持率だということです。
では、少し見方を変えて、約3割という数字を別のもので見てみます。それが、世界における「民主主義」を採用している国の割合です。ものすごく多いように思われますし、民主主義こそ唯一の政治体制だと思ってしまうようなところがありますが、実は、人口で見ても、民主主義を享受する割合は2017年の50%を頂点に徐々に下がっています。2021年では、世界人口約80億人のうちの約30%にあたる約24億人に下がっているのです。
つまり、世界人口の約70%に相当する約56億人が、本当の意味での「投票権」の保障を十分に受けていない国や地域で暮らしています。私たちは、世界の約3割の人しか持っていない投票権を有していて、それは、不正や違法な操作のない状態で保障されている貴重なものだとも言えます。

3割の感じ方

ここまでの話を読んで約3割と聞いて、あなたは少ないと感じますか、それとも意外と十分な数字だと感じますか。少なくとも支持率は、半数を切っていても多少の問題はあっても内閣や政府の存続を妨げるものではないことがわかります。
実際に、日本では最低支持率は、5%という時代があったくらいです。その後の内閣においても20%前半だったり9%だったりと低い水準だったことがあります。このように比較対象を増やしてみるとまた印象が変わります。

海岸の3割が消えた

ガーナ共和国は、西アフリカにある共和制国家です。このガーナで国土の全体の約3割がここ数年で海岸線の土地の浸食で失われています。こうした気候変動による海岸線の浸食は、ベナン、コートジボアール、セネガル、トーゴでも生じています。
このことによる4カ国における被害は、17年間で約38億ドルの損失と言われています。この被害は毎年、海岸の56%が平均1・8メートルの浸食を受けて今もまさに広がり続けています。
この場合における3割は、どのような印象でしょうか。まさに驚異的な数値でその被害の大きさに驚きを隠せないといった規模ではないでしょうか。このような場合、3割は気にせずにいられる量ではないし、目に見えてその変化を感じることのできる数字なのです。まさに、死活問題というわけです。

物事のとらえ方

3割とは、全体を表すのに不十分でありながらも全体を語るうえで見過ごせない数字だということが見えてきたかと思います。
中学受験や高校入試に際して、社会や作文、小論文などの試験を中心にグラフの読み取りから論じる問題が度々出題されます。読み取る際に、最も多い物やその逆に少ないものに目を向けることはたやすくとも、3割という数字に着目して論じることはそう容易くありません。少し訓練が必要ですし、論を展開する際に用いる方法にも慣れておく必要があります。
ということで、約3割という結果をどのように見てどのように説明するかが重要であるという点と、物の見方はそれぞれの状況で少しずつ変わってくるというごく当たり前のお話でしたが、受験生の参考になれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?