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477 「日P」


はじめに

今日の教育コラムでは、あまり大きく報じられていないPTAの上部組織の不祥事や東京都小学校PTA協議会がこの最上部組織である日本PTA全国協議会、通称日Pを脱退したことを少し取り上げてみたいと思います。

変化

東京都小学校PTA協議会が、2023年3月末をもって日本PTA全国協議会を退会したニュースは以前も教育コラムで少し触れたことがあるかと思います。
2023年1月に東京都PTA協議会と名称変更して、4月から新たなスタートを切られているわけですが、様々な点で改革が進んでいます。
この動きが目指しているものとはなんでしょうか。私は、その一つをPTA活動をちゃんと任意加入にした点が大きいと思います。また、ボランティア制なども導入している点が大きな改革ではないでしょうか。共働きが増えてくる中で負担軽減を目指した動きの中で生じた決断だと言えます。
また、PTA離れが加速しているなかで参加しやすい形を目指したのかもしれません。

全体像

では、その他の多くの地域のPTA活動はどうでしょうか。基本的には相変わらず手間と時間が掛かる保護者負担の大きいものだと言えるでしょう。同時にそうした中身に目的と役割が疑問視されていることも事実です。
各学校のPTAを束ねる地域のPTA連合会や協議会があります。そして、その上部団体と呼ばれる都道府県PTA連合会や協議会があります。さらに、PTAの最上位団体として「日本PTA全国協議会」が存在します。この上位団体に伺いを立てながら行われる全国大会が地元開催ともなるとまさに負担増が顕著になります。ごく簡単に表したのが下のピラミッド型の組織図です。

参考 日本全国PTA協議会HPより

全国大会

日Pが発足してから毎年のように全国のどこかで持ち回りで開催してきているのがこの大会です。社会教育や家庭教育などをテーマに8月下旬に2日間にわたって開催されます。
この大会には、日本中の小・中学校のPTA関係者が集います。各学校のPTA会長になった方などは参加した経験があるかと思います。総勢で約7000人程度に及ぶ参加者たちが集うわけですが、これをむかえ入れる地元のPTAの準備ときたら地獄です。
この大会への参加費はおよそ、1人5000円程度かと思います。今年度は神奈川県の川崎市が開催地だったと記憶しています。大会は、全大会などの後に複数の会場に分かれて記念講演を聴いたり、分科会に分かれて研修をしたりと内容は様々です。いずれもオンラインで十分にできるようなものが多いです。ワークショップなどもある場合がありますが、大会で行う必要は特にありません。むしろ防災などをテーマにしたワークショップは各地域の現場で行うのが望ましいでしょう。
内容としては、学校教育の在り方や地域連携の実践事例など様々な報告がなされたり、パネルディスカッションが行われたりしますが、そのこと自体も全てオンラインで十分に実施できますし、その方がより多くの保護者の方が同時に視聴できますしコストも相当におさえることができます。
また、こうした全国大会の運営には膨大なマニュアルが存在し、上位団体の日Pに事あるごとにお伺いしながら進めていくことになります。PTA組織の上位役員の権威主義とも思えるこうした行為に長年多くのPTA関係者が疑問の声を上げてきていますが、改善の兆しを私は見たことがありません。

実態

各学校のPTAは、市区町村郡のP連に加入している場合がほとんどです。P連の運営資金は、保護者が収めたPTA会費の一部から支払われています。
児童一人または一世帯で年額10円から100円程度徴収されます。そこから、市区町村郡のP連が都道府県P連に加入している場合は、収められた分担金の一部を都道府県P連に、都道府県P連が日Pに加入している場合は、子ども1人当たり10円の会費が日Pに納められていきます。
日Pには、各都道府県や政令指定都市の60以上のP連が加入しています。その規模を人数で表すと約700万人程度になります。一人10円ですから約7000万円という金額が日Pの手元に集まっていることになります。
そこで、この資金をめぐり今回不正が浮き彫りになりました。

不正

2024年7月12日の報道では、日Pの事務局幹部2人が懲戒解雇になった事実が明らかになりました。今回の事件では2000万円近い水増し請求があったそうですが、日Pはじめ各地のP連では権力闘争や横領、不正引き出しなどが後を絶ちません。
小中高校のPTA会計を管理する口座から不適切にお金が引き出されたり、使途不明金が見つかったりする例は、ここ数年でも40件以上になるはずです。不正総額が1千万円を超える時間なども数件起きていますのでPTAの上部組織の在り方には課題が多く闇も多いと感じている人も多い事でしょう。

つまりは

それほど大きな大会を開いて学習する必要もありませんし、ビラや広報誌を作って配布する必要もありません。デジタルで賄えることは簡単にしていくことができます。
また、上部組織を幾重にも作っていく必要もありません。東京都小学校PTA協議会が行っているような改革が各地で起きれば保護者の負担は様々な面で軽減されます。
そして何よりも莫大な活動資金を上納させるシステムを断ち切ることで不正な横領や既得権益を根絶させることができます。必要なお金は、国が学校に予算を充てて、そして学校と保護者が協議して、交通パトロールのバイトを雇ったり、学校の整備を業者に依頼したりすればよいのではないでしょうか。勉強会をするのも自宅からオンライン参加できれば、特定の役員だけが遠方まで宿泊などしながら参加する必要もありません。
デジタル化と無駄な役員の削減と本来の負担軽減を念頭にPTAが変わらなければ、ただただ負担感、不信感、不毛感だけが募っていくはずです。今回の日Pの不祥事は正直いうと氷山の一角だと私は思います。子どもたちのために教育のために必要な組織であるならばその在り方を問い直す必要があるでしょう。

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