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コロナ禍で立ち上がった若年女性のためのシェルター「Le Phare」1年のあゆみ

若年女性のための短中期シェルター「Le Phare」(以下ルファール)が、事業開始から約1年経ちました。1年を振り返っての様子をお伝えできればと思います。

制度のはざまに落ちてしまう女性たちに、安心できる居場所を

シェルター事業を始めた背景には、ダイバーシティ工房が運営する無料のLINE相談や、自立援助ホームに届いた10代女性の声があります。

「家に居づらい」「親から暴力を受けている」「家を出たいがどこにも繋がれない」など、本来安全であるべき家に居場所がない子ども・若者たちと繋がりました。

私たちがシェルターに先行して運営していた自立援助ホームでは、様々な理由で家庭にいられなくなった15歳~20歳の女性たちと繋がってきました。しかしそこには、制度の壁が存在していました。

自立援助ホームは児童相談所を通して子ども達を受け入れるのが前提となっており、様々な大人の理由でその機関さえも通れない子もいれば、機関を通れても定員等の関係で受け入れることができない子もいたのです。

そんな中で行き場のない女性たちは、最終的に「家出」の手段を取る場合もあります。SNS等で家出先を見つける場合もありますが、若い女性が男性宅に住まわせてもらうということは決して安全な選択肢ではありません。場合によっては、心身ともに傷つけることになりかねません。

「そういった女性たちのために安全で安心な逃げ場、居場所を作りたい」

そんな想いから、ダイバーシティ工房では、次のステップへ移る前に一時的に暮らしを提供できる場として、新たに民間のシェルターを立ち上げることになりました。

ゼロからの場所づくり

事業はまず、物件探しから始まりました。

個室があるかどうか、駅からの距離はどうか、安全面はどうか。また、複数人で住むことに問題がないか、オーナーさんの理解も得る必要がありました。数軒の物件見学を経て、ようやく個室が3部屋ついた1軒家を借りることができました。

物件契約後は、部屋に何もない状態です。他の事業部で余っていた布団を運び込んだり、家電や家具を購入し組み立てるなど、2~3週間かけて「住む」場所をつくっていきました。

シェルターと聞くと薄暗いイメージを抱き、入居を抵抗する人も出てくる可能性があります。明るい色の家具やカーテンを揃えるなど、利用する方が「おしゃれ」と思ってくれるような場にすることも、安心できる場所を作るうえで私たちが考える大事な要素です。

また、寄付で電気ストーブや洋服、食料をいただくなど多くの方の協力を得て、利用者の方が入居するまでに基盤を整えることができました。

図1


シェルター開設前から、地域の学び舎「プラット」というコミュニティスペースで、居場所のない子どもを緊急的に受け入れることはありました。しかし、シェルターの役割のみを担う拠点の運営は初めての経験です。

物件探しと同時に、他団体のシェルターや自立援助ホーム、社会的養護が必要な人を対象としたシェアハウスなどを見学して理解を深め、ルファールの運営方針やルールを決めていきました。

シェルター開設後、1年間で20件以上の問い合わせが寄せられました。その多くは、行政や学校関係者、支援団体などからの繋がりでしたが、ネットで自ら見つけ、直接問い合わせをしてきた方も数名いました。

虐待や家庭内不和などの状況下にある子どもや若者が一番多くいましたが、中には困窮状態にあったり、乳幼児を抱えたDV被害者の方もいました。

問い合わせ後のやりとりを経て、入居は4名、緊急的な宿泊を入れると6名の10~20代の女性が利用に至りました。

一人ひとりの意思を尊重しながら

短中期シェルターという性格上、ルファールでは約3ヶ月間を入居期間の目安としています。しかし、コロナ禍の影響で職を失ったりシェルターに入ってから体調を崩したりする場合もあり、利用が長期化している方もいます。

入居者の方は、それまでは生き延びるのに精一杯の状態で、何とか一人で頑張ってきた方がほとんどです。安心して暮らせる環境で落ち着いて過ごせたことで、一気に心身の疲れが出て調子を崩してしまう場合もあります。

そんな中でも職員が病院の受診に付き添ったり、一緒に散歩や調理をしたりしながら、徐々に生活リズムを整えていく姿がみられています。

ルファール①

次のことを考えられる力を取り戻し、PC講座を受講するなど、就労に向けて徐々に準備を進めている入居者の方もいます。

シェルターの退去後を見据え家探しを始めている入居者の方もいますが、未成年の場合、物件契約をするのにもハードルがあります。シェルターを退去して終わりでなく、いざ困ったときに繋がれるように、行政、関係機関とも引き続き連携しながら長期にわたって伴走支援していくことが必要だと感じています。

入居する女性たちと暮らしていく中で気づかされたのは、支援というのは私たちがよかれと思う方向に諭したり導いたりするものではないということです。

その人の選択や思いを尊重し、その力を信じて必要なタイミングでサポートをしていく、という視点が求められます。

とはいえ問い合わせがあっても満室で受け入れられない場合が出てきているのも事実です。シェルターの数は全国的に充足しているとは言えず、入居者の方の体調や意思を尊重しながらも、他に利用が必要な方を受け入れていく体制づくりも求められています。

ルファールで暮らす一人ひとりが自立していけるまでのスキルアップや次の居住先の確保など、1年目で出てきた課題を整理しながら、様々な事情で居場所を失った女性が心身ともに休まり、次のステップへ移行できる場所として、ルファールは次の1年も歩んでいきます。

プレゼンテーション1


若年女性のためのシェルター事業は、2020年10月~9月まで、公益財団法人ちばのWA地域づくり基金さまの「休眠預金等活用新型コロナウイルス対応緊急支援助成」を受けて立ち上げ、運営してきました。

10月からは、公益社団法人ユニバーサル志縁センターさまの「休眠預金活用新型コロナウイルス対応緊急支援助成」をいただき、引き続きシェルターの運営にあたることができています。部屋数が限られており受け入れ人数には限界があるため、入居までいたらずとも生活に困窮している方へは食料支援を行うなどのサポートをあわせて行っていきます。


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