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仕事で嬉しいのはお金とは限らない

English version.

普通に会社で働いていると報酬として給料が払われると思います。良い仕事をして、その報いとして昇給やボーナスがもらえる、あるいは会社の業績が良ければボーナスがもらえる、という感じでしょうか。資本主義の話なので当たり前なことではあります。
ただ、自分のキャリアを振り返ると正直あまりお金のことのことは覚えていません。もちろん、ボーナスや昇給、転職したときの給料アップなどがあったはずなのですが、そのときの気持ちをあまり思い出せません。

一方で、自分の仕事を褒めてもらったときのことはよく覚えています。

最初の例は、ヘルスケアのスタートアップでの話です。少し前提の説明がながくなりますが、ご了承ください。
エンジニアリングチームのマネージャーを数年間やっていたのですが、ある時、会社の方針の変更により、マネージャーを降ろされて、別のチームに移動するように言われました(スタートアップではあるあるな話ですね😉)。いろいろあったのですが、本題から外れるのでまた別の機会にしたいと思います。
エンジニアチームを別の方がみることになりました。自分は比較的、受動的なマネージャーで、メンバーの仕事に細かく口出しはせず、各々に任せるタイプでした。それに対して新しいマネージャーはタイプが異なり、メンバーのことを細かくマイクロマネージするタイプでした。タスクに対して「正確に」見積もりを作るようにさせたり、タスクごとの時間を入力させるようになりました。自分のマネージメントスタイルとは大きく異なり、メンバーは不満を持ち始めていました。特にチームの中でも優秀なメンバーにとっては、この入力もさることながら、見積もりの正しさや期日に関して聞かれるのもかなり嫌だったようで、目に見えて不満を募らせていました。その結果、ある日、そのメンバーが我慢の限界を超えてしまい、新しいマネージャーに対して怒りが爆発させ、そのまま仕事を離れることになりました。それ以外のメンバーも少しずつ離れ始め、チームは崩壊していきました。プロジェクトも遅れ始め、会社の経営陣も不満を募らせていました。必然かもしれませんが、そのマネージャーも降りることになりました(その後、会社も辞めていきました)。
おそらく他の選択肢がなかったのか、立て直しが急務だったのか、自分が再びチームのマネージャーになるように言われました。自分は少し違和感がありましたが、エンジニアチームの士気が心配でしたので、引き受けることにしました。以前のマネージャーが始めたもののうち、不満を募らせていたものを止めて、メンバーには「大丈夫だよ」ということを繰り返し伝えるようにしました。そのおかげもあってか、チームも少しずつ安定を取り戻し、プロジェクトも再び進み始めました。

それを見てか、ある日、仕事の後に飲みに行ったとき、CEOが「戻ってくれて本当に良かった。チームがまた良くなってきたよ」という言葉をかけてくれました。

これは本当に嬉しかったです。このとき、お金の話は一切なく、あだ、この一言で、自分が会社にとって必要で、価値を生み出していると感じました。

二つ目の例は、最初の仕事である大手のグローバル企業での話です。東京のオフィスでソフトウェア・エンジニアとして働いていたのですが、仕事はソフトウェアの開発だけでなく、稼働しているサービスのメンテナンス(デプロイやバグのデバッグなど)も担当していました。チームの母体はロンドンにあるため、そこで開発されたソフトウェアも運用していました。
金融では平日の日中は取引が多いため、平日に新しいバージョンをデプロイすることは少なく、だいたいのデプロイは土日に行われていました。東京はタイムゾーンの関係もあり、一番最初に市場が開くため、新しいバージョンが試されるのも最初になります。必然的にバグや問題があった場合も最初に発見されることになります。正直、バグも多く、自分も発生したエラーやユーザからの報告を元にログやデプロイされたコードを調査することが多々ありました。自分はとても好奇心が強いので、ログやコードを調べて解決策を見出すのが結構好きなタイプでした。
この仕事を5年ほど続けていたある時、ロンドンオフィスに3週間ほど出張する機会がありました。出張中のある金曜日に、ロンドンの同僚が次の週末のデプロイについて話していました。

同僚1: 「来週のデプロイは大丈夫かな?」
同僚2: 「どういう意味?」
同僚1: (自分のことを見ながら)「だって、大輔、ロンドンにいるじゃん」
同僚2: 「ああ、そうだね…」

最初はどういう意味か分からなかったのですが、どうやら、自分がロンドンにいると、月曜日に東京でシステムが稼働開始したときに発生した問題を解決できないのではないか、という心配をしていたようです。自分がチームの火消し役のような存在になっていたようで、ロンドンのメンバーが自分を頼りにしていたようです。

正直、驚きましたが、同時に嬉しかったです。直接的に褒めてくれているわけではないですが、自分が頼られていることが、とても嬉しかったですし、自分がチームの重要な一員であると感じました。これも、お金とは関係ない話です。

お金が大事ではないと言っているわけではありません。お金も大事です。ただ、自分が仕事をしていて嬉しかったときは、自分がいい仕事をして、必要とされていると感じたときだな、と思います。
この経験が自分のマネージメントスタイルにも影響を与えており、自分のチームのメンバーがいい仕事をしたときは、それを伝えて、会社にとって価値を生み出していて、必要としていることを伝えるようにしてます。

自分のアドバイスとしては、いい仕事をしたときは、褒めてあげるようにしてください。相手が必要とされていると感じるようにしてあげると、相手も嬉しい気持ちになり、そのときのことを忘れないと思います。

Photo by rupixen.com on Unsplash

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