鏡の前でふと

髪を染めた。

ある程度明るくしたことは以前にもあったが、ブリーチまでして奇天烈な色にしたのは初めてだった。好きなキャラクターの色だからと青色に染めた。元来日本人特有の真っ黒な自分の頭がまるでアニメの世界の住人のように青く染まっている様は、陳腐な表現だがさながら「非日常」という感じがして鏡に映る自分を見る度に口角が上がった。

数日経ってかなり色が抜けてきた。美容師さんには「かなり綺麗に入ったので多分抜けるのも早いです」と言われていたから、初めてなりに気を使ってみたのだがあの鮮やかな青色はすぐに薄れ、緑とも茶色とも言えない中途半端なグラデーションを示す頭になってしまった。しかし毛先には青の名残も見られ、未だ「非日常」感は健在である。第一黒くない時点で普通では無いのだが。

髪を青く染めた時に味わった感覚は、新しく買った服を着たり初めて来た土地の駅に降り立ったりした時のものと同じだった。そして髪が伸びきってまたウニのように黒くなってしまうまでこの感覚を味わえるのだろう。そう思うと1万円も高くはなかったなと思えた。

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