「大麻の社会学」要約④
【第6章 大麻と精神医学ー主体なき責任の帰属】
使用者個人に厳罰を科す根拠については、精神医学を中心に論じられてきた。日本では1975年に初めて「大麻精神病」の症例報告論文が発表されたが、疾病の厳密な定義が確立されないまま、麻薬・覚せい剤乱用防止センターにおいて、大麻喫煙は大麻精神病と呼ばれる異常行動を引き起こし、犯罪の原因、社会問題の元凶となる、と主張された。
一方ヨーロッパでは大麻に対して詳細な疫学・薬学的研究が行われ、大麻の有害性は相対的に低く、大麻喫煙と精神病の関連性は低いとの研究がいくつか提出された。また、ドラッグを使用しても依存に陥らず、ライフスタイルのひとつとして生活する「コントロール使用者」の存在も報告された。これらを背景に、大麻はハームリダクション政策において「ソフトドラッグ」のカテゴリー付けがなされ、非罰化が進められた。
現代では日本においても大麻がそれ自体で自動的に精神疾患をもたらすという見解はとられなくなってきている。
【第7章 紫煙と社会運動ー戦後日本の大麻自由化運動】
戦後日本の大麻自由化運動は、「厳罰化への批判」「医療用途での患者の権利論」「産業用利用論」など多様な主張がなされてきたが、法的・政治的・マスメディアの状況において大きな成功は得られていない。
自由化運動の源流は、1960年代後半、前衛的な若者たち「新宿ビートニク」の大麻喫煙文化、合法化論からであった。1981年には日本で最初に大麻自由化を提唱した書籍「マリファナ・ナウ」が出版、2001年には東京で「マリファナマーチ」が開催され約800人が参加した(現在も続いている)。
2000年代中頃以降は、「大麻の医療的使用」「産業利用の有効性」を重視する個人(医師や弁護士等の専門職を含む)や団体が複数現れ、各分野で活動している。
「大麻の社会学」まとめと感想に続きます
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