見出し画像

作者の本音と浪漫主義

バトル物とかロボット物とか長大な物語をやっているとだんだん正義の味方の側を描写するのに飽きてきて思わず悪役の方に作家が感情移入し作家自身の本音を言わせてしまうという現象がある。
機動戦士ガンダムの終盤でギレン・ザビが「せっかく減った人口だ」とか言う場面があり、これはそもそもガンダムという物語が地球人口が莫大に膨れ上がり宇宙にまで移民させて、そして戦争がおきて人口の半分が減ったという話で、ジオンが目指しているのは無駄な人口を減らして優れた人間らだけで世界を構築すればいいという優生学思想なんだな。
つまり民主主義の全否定、世の中は弱肉強食であり優れた人間が生き残るのが当たり前で弱者はただ打ちひしがれ死ねば良いと。そういう富野監督の本音が出てしまっている。
これはガンダムだけじゃなく北斗の拳にしろジョジョの奇妙な冒険にしろ世の中には無価値な弱者らが居てそういうのは一掃し、優れた人間等だけで世界を構築すれば良いというのは誰しも一度は考えることで自分にとって気に食わないDQNとか知的障害者とかそんなのが全員綺麗さっぱりに居なくなったら税金は浮くし治安も良くなるしいい事だらけじゃないかという右傾化した発想なんだな。おいらのかつての友人で尼崎のDQNらに痛い目に合わされて人格が歪んだ人もそういう思想やった。学生時代にDQNに虐められた人間なんかは「こんな奴らみんな死ねば良い、みんな仲良くなんて建前だけの綺麗事、そんな綺麗事はクソ喰らえ!」という思想を持っている。その人格が歪んだ人間も「義務教育的世界観が大嫌いや!」と言っていた。義務教育的というかみんな仲良く差別もなくっていう左派的思想が80年代~90年代の荒廃した教育現場において価値が揺らがされたのだろう。ビートたけしも言っていたんやが「みんなこの世は金と女である事に気づけば顔つきももっと活力を持つだろう」という身も蓋もない話。こういう身も蓋もなく右傾化した思想に対して物語のヒーローの側というのは実はコレと言った理屈で反論できないんだな。それがあまりにもストレートすぎて否定できない。主人公側の言う「でもみんな判り合えるんだ!」みたいな言葉の方が空疎で現実味が無くてペラい。そういう言葉は現実に散々聞かされて、でも差別はあるし戦争もあるしDQNは身も蓋もなくDQNだしネットの世界はフラットなようで中卒とか高卒は馬鹿にされる差別意識丸出しだし、こんな現実に対してはワンピースのルフィみたいな「仲間のために戦う」という浪漫主義でしか対抗できないんだな。それか仮面ライダーのように「人類の自由の為に戦う」という平等主義。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?