あのとき、生まれて初めて流れ星をみた
子供たちが幼いころ、私はよく「おんぶ紐」を愛用した。
いつの日か、スーパーで息子をおんぶしていると、どこかのおばあさんに、
あらまぁ。おんぶ紐を使っていらっしゃるのねぇ。
最近は、珍しいけど、やっぱし、おんぶ紐がいいわね。
と、声をかけられたこともあるくらい、珍しかったみたいだけど、私は両手が空く「おんぶ紐派」だった。
娘のときも愛用したが、娘が産まれてきたときには、息子が1歳で手が放せなかったからだろうか。
息子のほうが、私の背中で過ごした時間が多かった。
家事もしたし、柿の出荷の時に、倉庫で仕事もしたし、おんぶで寝かせつけもしたりした。
息子はおんぶで寝かせつけをすると、寝つきがよかった。
ただ、息子をおんぶした時期は、初めての出産にもかかわらず、里帰りすることもなく、出産して休む間もなく家事をしたり、秋には仕事を手伝ったり、一人目はなかなかできなかったのに、思いもよらず早く二人目を授かって心身ともに休む間がなかったせいか、いろんな意味で疲弊していた。
当時は分からなかったけど、母親学級で、出産前後は母体を休める必要があると一般的なことを習った気がするけど、きっとそれはとても大事なことで、それを怠ると、心身に悪い変化をもたらすのだろうと、今になって分析する。
それまで大丈夫と思っていた、義両親との同居もムリだと感じ始めたのも、その時期。
そのことが原因で、主人との喧嘩が多かったのもその時期。
結婚生活でいちばん涙にくれたのも、その時期。
もうつかれた・・・。
心理的にはそんな感じだった。
そんなある日、珍しく、いつもと同じように、息子をおんぶしながら、庭で空を見上げた。
こちらは田舎で、とーっても夜空がきれいで、星もたくさん見ることができるけど、今でもそんなに夜空を見上げることはない。
背中の息子は、身体を冷やさないように、半纏でくるまれていたから、冬の夜空だっただろうか。
いちばん澄んでいて、いちばん夜空がキレイな季節かもしれない。
その日も、たくさん星が出ていて見とれていると、スーッと星が流れた。
アッ
と、声をあげたかったけど、
願い事!
と、思って、
幸せになれますように。幸せになれますように。幸せになれますように。
と、3回心の中でつぶやいた。
そして、お腹をなでながら、お腹にいた娘と、背中の息子に、
幸せになろうね。
と、話しかけた。
日常の喧噪をわすれ、話しかけながら、しあわせやなぁと、思えたあのとき、生まれてはじめて流れ星を見た。
あれから二十数年たつけど、あの時以来、流れ星は見たことがない。
願い事が叶ったかどうかは、人生終わりの時に分かるのだろうけど、いまのところ、幸せ。
細かなことをいえばキリがないのだろうけど、幼少期ふくめ、こちらに嫁いでから、二十数年のあいだあったいろんなことを思えば、健康な身体で、主人とふたりで仕事ができて幸せ。
あと、子供たちが元気でいてくれるから言うことナシ。
(多少、注文をつけてしまうけど。)
あのとき、主人との仲は最悪だったから、「流れ星みてんで!」といえる人は誰もいなかったけど、やっと言えた・・・。
未だに主人には、話したことがない。
別に、話すほどのことではないけど、あのとき、誰かに聞いてほしかった。
嬉しくて仕方がなかったから。
だけど、息子と娘の存在を愛おしく感じた瞬間だった。
ひとりぼっちではなく、3人でみた流れ星を決して忘れない。
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