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【本づくりの舞台裏】カバーデザインを替える企画とは?

書店に並んだたくさんの本から1冊を選ぶとき、みなさんはどうやって手に取る本を決めますか?
書店員さんのPOP、タイトルでピンときた、友人におすすめされたのを思い出した、などなど……
興味を持つきっかけはいろいろあると思いますが、
「本のジャケ買い」をしたことはありませんでしょうか?

今回のテーマは「本のカバー」です!
なかでも、ディスカヴァーのちょっと変わった「カバー替え」のお話を
書店営業部の橋本がこっそりお見せします。

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ディスカヴァーでは、「過去に出版された本のカバーを替え、新たな読者に本を届ける」という企画をおこなうことがあります。
営業部が編集部に提案し、お互い連携を取りながら制作していくという、部署間の垣根の低いディスカヴァーならではの企画ではないでしょうか。

今春、「プレミアムカバー」としてカバー替えをした本が4点発売されます。(4月26日発売・1点のみ5月上旬発売)
今回はその4点をご紹介しながら、わたしたちやデザイナーさんがどんな思いを込めてカバーデザインを考えているのか、お伝えできたらと思います!

『エッセンシャル版 バルタザール・グラシアンの賢人の知恵 プレミアムカバー(スカイブルー)』

(4月26日発売)

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ぱっと明るいブルーが目を引くこちらのデザイン。
金色の部分は箔押しなんですよ。実物を見たときは、ほれぼれしました。

『賢人の知恵』は冷静に、時には柔軟に、賢く生きること。何が自分のためになるのか、現実をしっかり見て考えること。そんなことをわたしたちに教えてくれます。この本はまさに、人生という旅のおともになる本。

旅に必要なものは「パスポート」「チケット」という着想で制作しました。
また、手元にずっと持ち続けていたくなるような本を目指して、「プレミアム感」を大事にしました。

ちなみに、通常版のデザインはこちらです。だいぶ変わりましたね!!

9784799323182新帯


※通常版も販売は継続されています

このカバー替えをデザインしてくださったのは、ニュートラルデザインの廣田敬一さん
過去にも『うまくいっている人の考え方 完全版 花柄』『心の持ち方 完全版 犬猫』など数々のカバー替えヒットコンテンツを手掛けてくださいました。

<コメント>

今回のテーマは「人生は旅」ということでしたので、パスポートなどのモチーフ案をいくつか出させていただき、編集の渡辺さんとのご相談の結果「旅で出会ったチケット」をモチーフにしたデザインで進めることになりました。

本をデザインするときにいつも考えていることは、「持ち帰りたくなるデザイン」にしなくてはいけないということ。
インパクトがあって「手にとりたくなるデザイン」にするのはもちろんなんですが、その本を買って持って帰りたくなるのは、ハードルが高いんです。
また、これまで何回かこのシリーズのバリエーションを作ってきたので、今までとは違うお客様に読んでもらえればと思いました。

そこで今回は、冒険して「全面箔押し」にしてみました。
質感のあるカバーの紙に箔押しをする事によって、財布や手帳などのような雑貨的な雰囲気が出てきます。「本というよりモノ」です。
そのモノ感によって、「持ち帰りたくなる」のではと思っています。
でも、本だから知識のアーカイブになります。お得です。

そんな冒険や実験のような気持ちで今回は、制作させていただきました。

(ニュートラルデザイン 廣田敬一)


『自分を躾ける プレミアムカバー(パンジー)』

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(4月26日発売)

散りばめられたパンジーのお花が可憐なデザイン!

この本には、年を取れば自然と大人になれるわけではなく、「自分を躾ける」ことで美しい大人になることができる、というメッセージが込められています。
だから、年齢に関係なくすべての人に読んでほしい。

通常版のデザインは、シンプルで凛とした雰囲気からか、大人の女性の方に手に取っていただくことが比較的多い本でした。

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※通常版も販売は継続されています

そこで、若い女性の方もより手に取りやすくなるよう、気品ある雰囲気は残しつつ華やかでおしゃれなデザインにしたいと考えました。カバーに掲載するタイトルはあえて英文にし、帯をとればまるで洋書のよう。
内容は、著書累計部数85万部超の加藤ゑみ子先生の集大成。だから、長くそばに置いて、迷ったとき、もっと成長したいとき、いつも見返してほしいという気持ちを込めてのデザインです。

そんなリクエストを実現してくださったデザイナーさんは、『週末野心手帳』『今日は、自分を甘やかす』などのヒットコンテンツをデザインしてくださった、and paperのオオモリサチエさん

<コメント>

『自分を躾ける』は、3歳になる娘に対して、日々、躾をしなきゃ!と模索している私にとって、とてもインパクトのあるタイトル。
子供を躾ける前に、まず自分は大人の女性としてどうなんだろう……とハッとさせられました。
「躾」という言葉だけ聞くと少しかたく厳しく聞こえるかもしれませんが、
この本はそうではなく、自分を見つめ直し、ほんの少し意識することで、
こころ豊かに柔らかく過ごすためのヒントがたくさん。
読者の方の心にすっと入っていくような、手に取ってみたくなるような表紙にしたいと思いました。
花モチーフと上品なつや消しの金箔を使い、大人の女性の柔らかさと気品を表現しました。
難しく考えずにゆっくりお茶を飲みながら、パラパラめくってみたくなるようなカバーになっていれば嬉しいです。
(and paper オオモリサチエ)

『鈍感な世界に生きる敏感な人たち プレミアムカバー(ブルー)』

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(4月26日発売)


鮮やかな色合いと女性の横顔、手書きの文字につい目を留めてしまいます。

『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』は、
HSP=「とても敏感な人」が、生きづらい世の中を”敏感さを武器に”強く生き抜くためのヒントを伝えている本。
発売当時はまだ「HSP」自体がほとんど知られていなかったこともあり、信頼感を重視しつつ、人文・心理の棚にあわせたデザインになっていました。

9784799319789_新帯

※通常版も販売は継続されています

ただ、発売から3年半が経ったものの、「HSPのことを知らないけれど、実はその気質に悩んでいる」という人がまだまだいるのではないか。
その人たちにどうしてもこの本を届けたい、という思いから新しいデザインを考えました。
文芸・エッセイの棚になじむデザインにして、より多くの人たちの目に留まるように。より気軽に読むことができるように。

そんなデザインをかなえてくださったのは、chicolsの山田知子さん
これまでも、『New Scientist 起源図鑑』『察しない男説明しない女 プレミアムカバーピンク』『やりたい仕事の見つけ方 30-DAY LESSON』など幅広いジャンルのヒットにかかわってくださいました。

<コメント>

この本のテーマHSP(=敏感な方)に、そっと寄り添える佇まいをめざしました。
とはいえ、この本を発見してもらうための「映え」も必要で、両立させるのがむずかしい…と思いましたが、装画をイラストレーターの赤さんが引き受けてくださったので、
大船にのったつもりで(笑)、安心して進めました。

赤さんにリクエストしたのは「周りに世界が満ちている」「その中で静かに、けど強く生きている感じ」でした。
HSPと感じる方には生きにくさもあるけど、芸術などをたのしむ豊かな喜びもある。その両方を肯定できるような表現が繊細になされた、素敵な装画になりました。

ぜひ皆様も手にとってお楽しみください!
そして冒頭のHSPチェックテストをぜひ試してみてください。
(chicols 山田知子)

『上京物語 プレミアムカバー(星空)』

上京物語プレミアムカバー

(5月下旬発売)

大きく配置されたサブタイトルと、鍵穴の向こうの青空に惹かれます!

『上京物語』は、著作の累計が87万部を突破している喜多川泰さんによる小説です。
喜多川泰さんはディスカヴァーでも『手紙屋』『運転者』など数々のヒット作を生み出してくださいました。なかでも『上京物語』は、根強いファンや口コミの多い1冊。
「読んで人生が変わった」「人生のバイブルだ」という読者の感想も多く、自分にしかできない生き方を目指す人に、ぜひ読んでほしいストーリーです。
小説のため、「文芸書」としておもに展開されています。

通常版のカバーは文芸書らしい、やさしく落ち着いたデザインです。

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※通常版も販売は継続されています

この本は、読んだ人の視点を大きく変える「自己啓発書」のような力があります。
そこで「自己啓発書」コーナーで映えるデザインにすることで、ふだんそのコーナーに足を運ぶ読者のみなさまに、この本を見つけていただきやすくなるのでは、と考えました。

このデザインを手掛けてくださったのは、bookwallのみなさまです。
bookwallさんは過去にも『株式会社タイムカプセル社』『はるなつふゆと七福神』などディスカヴァーの文芸書ヒットコンテンツのデザインをしてくださいました。

<コメント>

「夜空」は先がわからない手探りの状態、「青空」は視界が開けた状態をイメージしました。そしてこの本が『視界を開き世界を広げる「キー」になれば』という想いを込めて鍵穴のモチーフを使用しています、キーはカバーの他にも隠されているので是非探してみてほしいです!

ビジネス書らしいサブタイトルをあえて大きくしながら、物語を感じさせるビジュアルを取り入れることで、ビジネス書を初めて読む新社会人の方にも手に取りやすい形になったのではと思います。
(bookwall)

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「本のカバー」「カバー替え」の背景には、その本や届けたい人に対する「思い」があります。どんな人がこの本を手に取ってくれるのだろう。この本を読んで、その人は何を感じるのだろう。
本づくりにかかわるすべての人は、いつもそんなことを考えています。

その「思い」を、読者のみなさんに伝えることができていたらうれしいです。

みなさんのお気に入りの本は、どんなカバーですか?

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