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組織文化はどのように波及すればいい?『図解 人材マネジメント入門』【はじめての人事お悩み相談#3】#ディスカヴァー #人材マネジメント100のツボ

電子版5月28日、書籍版6月26日に発売の『図解 人材マネジメント入門』。本書では領域が広く捉えにくい人材マネジメントを、わかりやすく図解を交え体系的にまとめています。
そんな人材マネジメントの原理原則を詰め込んだ本書の著者である坪谷さんに、入社2年目にして今年の1月から人事担当となった弊社の社員井上が抱える悩みを相談してみました。

組織文化はどのように波及すればいい?

井上:弊社は今年から、これまでなんとなくのものだった企業文化や、社員それぞれがどんな価値を発揮するかについて、短い標語のように文章化しました。しかし現状ではまだ抽象的で、言葉はあっても具体的にどんな行動がその価値につながるのか、完璧にわかっている人は社内にいません。これから社員それぞれが価値を体現しているような会社にしていく必要がありますが、どうすればいいでしょうか?

坪谷:これは難題ですね。デンソースピリットを例に挙げましょう。(図中右下)


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『感じるマネジメント』という本にもなっているのですが、デンソー社の精神を世界各国に普及させる取り組みの話です。そのとき彼らは宗教から学びを得たそうです。思想や考え方を伝えるのは宗教がやり続けてきたこと。キリスト教の伝道師がどうやってキリスト教を普及させたのか研究したそうです。

語り直しが重要

坪谷:その結果、デンソー社では役員が各拠点でデンソースピリットについて語って回るというデンソーキャラバンを行いました。この話の面白いところは、デンソースピリットがうまく浸透したところとしなかったところに分かれたことです。その違いは、役員が自分の経験をもとに語ったかどうか。デンソースピリット自体は抽象的でゆるやかなものですが、それを役員が経験に引き付けて語りなおすことできちんと伝わっていたのだそうです。

井上:語り部の存在が必要だということですよね。

坪谷:そう、人が介在しないと伝わらないんですよね。ですのでディスカヴァーさんでも、伝える人が自分の言葉で語ることでしか、文化は伝わらないのではないかと思います。それぞれが自分の経験を語ることで、だんだんクリアになっていくのです。

井上:文章から人におろすのではなく、人を介して人に伝えるのですね。間に人がいないと色彩をもって伝わらないということでしょうか。

坪谷:そうですね、色彩はとてもいい言葉ですね。その通りです。私は形にする(型を作って血を通わせる)と言っています。言葉に血を通わせないと、大切なものは伝わらないんですね。

井上:誰が言うのかとか経験がそこに入っているかって大事ですね。

坪谷:アカツキ社の次世代リーダー研修で、彼らがアカツキに入った理由を聞きました。どの会社もホームページにはいいことが書いてある。それはアカツキも一緒だった。しかし、アカツキは面接が違ったのだそうです。アカツキの面接に出てくる人たちは、ホームページに書いてあったことを本当に「体現していた」と思えたのだそうです。

井上:そのエピソードで思い出したのですが、今年初めて新卒面接した中で一番うれしかったフィードバックが、「ホームページでこんな会社だと思っていたんですけど、井上さんと話したらガチなんですね」と言われたときでした。

坪谷:それはまさしく体現ですね!素晴らしい。

井上:体現というワードも、ディスカヴァーの社員一人一人がものすごく悩んでいるところです。

坪谷:ビジョンとかミッションは押し付けられるものではなくて、一人ひとりのなかにあるはず。だからこそディスカヴァーに入社しているのですよね。ですので、再解釈、追体験ができるはずなのです。ここで謳っていることは自分がやってきたあれかな、という語り直しが一番大事なのですよ。浸透というよりは思い出してもらうイメージです。一人一人の中に絶対あると思って動いた方が経験上うまくいきます。極論ですが、全くない人はその会社を辞めたほうが幸せかもしれないですね(笑)

井上:確かに全くないのは悲しいです(笑)

坪谷:会社はディスカヴァー社だけではないですからしがみつく必要もないですしね。ほかに行った方がお互い幸せなこともたくさんあります。そこには冷静な見極めも大事です。

評価も文化の醸成につながる

坪谷:あと、評価も文化つくりにとって重要です。


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評価とはOKの基準を示すものです。評価されることは文化的にOK、やってはならないことは文化的にNG、ということになります。それを積み上げることで文化が良くなっていくことが、評価の大きな狙いでもあるのです。

井上:そこをしっかり運営していくのが大事なんですね。ディスカヴァーでは現在文化の体現に大きなウェイトが置かれていますが、そこをちゃんと運用してフィードバックしていくのが必要になりますね。


<著者プロフィール>

坪谷邦生(つぼたに・くにお)

株式会社壺中天 代表取締役、株式会社アカツキ 人材マネジメントパートナー、株式会社ウィル・シード 人事顧問、中小企業診断士、Certified ScrumMaster認定スクラムマスター。 1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。
20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。
主な著作『人材マネジメントの壺 ARCHITECTURE』(2018)、『人材マネジメントの壺DEVELOPMENT』(2018)など。

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