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サポーターとしての力量~宮古島トライアスロン~

バイク終了時点で女子2位との差は約2分、相手のランの力量を考慮すると、このまま差を広げて優勝してくれそうだ!

携帯でレース速報を何度も何度も更新して、一番心配していたスイム、とにかくトラブルなく終わって欲しかったバイクパートが終了した時、それまでの緊張感が和らいだ。(肩の骨折れてたはずなのに両腕ブンブン振り回して泳いでたらしい)
それに加えて、一番得意とするランニングにトップで入ったことで、安心へと変わった。

(よし、もう大丈夫だ)

ランパートがちょうど子供達のお昼寝時間と重なることもあり、車でゴール会場に移動しながら寝かせることにした。
運良くゴール会場である陸上競技場に車を止めることができたので、車が見える位置で降りて選手たちを応援することができた。
トップの選手たちが周回のランコース最後に待ち構える心臓破りの坂を必死に登る姿に応援するこちらにも力が入った。
大応援団の様子はこちらを見ていただければよくわかる↓


速報に目をやるともう少しでちのが来ることがわかった。
その数分後、400mほど?先に見慣れた赤紺のジャージが見えた。

「ちのだ!」

思わず声に出した。と同時に久々に姿を目視して安心した。

でもなんだか様子がおかしい。
決してレースで歩くことがないちのがうつむき加減に歩きながら坂を登っている。
その瞬間、全身から嫌な汗が吹き出た。
周りに多くの知り合いがいる手前、冗談じみた言葉をかけて鼓舞しようとした。

「何やってんだー!俺の前で歩くなー!笑」

でも心の中は全く整理ができていなかった。
応援団の大声援、多くの報道プレスカメラに囲まれる中、ちのは明らかに辛そうで今まで見たことのない表情をしていた。

(絶対何かおかしい)

坂の後半から応援や報道陣がいなくなるところまで並走する。
ちのは小さな声で「後ろとの差は?」と聞いてきた。
「5分はあるから大丈夫!しっかり水分とって!」
とだけ伝え、坂を終えたちのはまた走り出した。

(大丈夫、差は十分あるし、根性だけは誰にも負けないあいつなら絶対大丈夫!)

祈るようにそう自分に言い聞かせて、次の速報を今か今かと待った。
そうこうしてるうちに続々と男子のトップがゴールに帰ってくる。

ほとんどが知った顔で、ゴール手前で大きな声で声援を贈る。でも完全に心ここに在らずで、何度何度も携帯のレース速報を更新した。
どうにか今の状況を知りたいと思い、コース上にいるであろう知り合いに片っ端から連絡した。
バイクショップHi Ridgeの店長であるみねさんが解説を務めているLive中継にも課金して、映像を食い入るように見つめた。
その頃には子供たちも起きていたので、娘と2人で携帯画面に目をやった。
下の息子は、上位選手がゴールするたびに獅子舞が並走するのを見て毎回爆泣きしてたw
「にぃ(鬼のこと)ややぁ」ってずっと言ってた。

Live中継にちょうどバイク終了時点で2位だった戸原選手が写った。ということはすでにちのはもう通過したのか?と思いレース速報に目をやると、まだ通過していない。ここで完全に目の前が真っ白になった。

目の前でゴールする友人やチームメイトを応援する気力も出ず、ただただ呆然と画面を見つめることしかできなかった。(ごーいちさん、すいません!)
それなのに息子は「ちっち!」とか「びーびー(水のこと)」とか「ぱん!」とか欲望のままに動くせいで余計に疲れた。

結局ちのはゴールまで7.5キロの地点で2分半の差をつけられて2位になっていた。思わず周りの友人に「ちのが2位になってます😭」
と声に出すと、娘がそれに反応して「え!?母ちゃん2位なの!?」と言いながら一瞬で涙を流し始めた。
それに釣られて父ちゃんも泣きながら娘を抱きしめる。

なんだこの家族!?と周りの人は思ったに違いない。
でも、それくらい感情がコントロールできなかった。
(何があった!?もしかして倒れてるのか?今からでもここを離れて応援に行くか)と一瞬にして色んなことが頭をよぎった。(いや、でもここでジタバタしても何も変わらない。信じて待とう)とどうにか気持ちを切り替えて到着を待った。

最終的に、ちのはレースで歩くという人生初の経験を経て女子総合3位でゴールのある競技場に帰ってきた。

ちのの姿を見た瞬間、自然と涙が出た。
そして思わず子供達を連れて行けるところまで走って行った。
(よく頑張ったな。結果なんてどうでもいい。無事に帰ってきてくれてありがとう)そんな気持ちで家族全員でゴールテープを切ることができた。

息子は案の定、獅子舞のせいで爆泣きしていた。

後ろに映ってる毛むくじゃらのやつが息子の天敵

誰かを応援することの難しさを感じたレースだった。
自分ではどうにもできずただ待つしかないもどかしさがものすごくつらかった。
レースが終わって時間が経つと、せっかくの優勝のチャンスを何逃してんだよ!💢という怒りの気持ちが...でななく、応援する気持ちが過度な期待につながってたんだなーと冷静に振り返ることもできた。
一番身近にいるからこそ、付かず離れずな適度な距離感を保って相手の競技に少しでも良い影響を与えられるようなサポーターになりたいと思った。

サポーターの力量が選手を成長させられると信じて、ちのには最強ママアスリートになってもらいたい!

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