なぜMarvedはシャワーにいたのか?

まずはこちらをご覧ください。

説明せずとも爆笑必須なこのクリップですが、詳しく知らない人に背景を説明しましょう。

ZETA DIVISON AcademyチームのVorzコーチがランク配信をしている際、味方のレイズが不満をもらしたがきっかけ。「なんでシャワーにブリムがいるのまじで。」

それに対してVorzコーチは、記憶に新しいVCT 2022 Stage1 Mastersで日本代表ZETA DIVISIONに勝利し、優勝を勝ち取ったOpTic Gaming所属のMarved選手もブリムストーンを使いシャワーを守っていたことを持ち出して反論(VCはオフ)したという経緯だ。

まず初めに言っておきたいのは、仲間に不満があろうとも言い方には気を付けなければいけない。今回の場合で言えば「ブリムさん、〇〇に行ってもらえないですか?」などが適切でしょう。

言い方はさておき、今回の記事でバインド防衛側においてブリムストーンはどこにいるべきかについてをベースに発展的な話をしたいと思います。

バインドのメタと防衛側におけるコントローラーの役割

ブリムストーンがいるべき場所について解説する前に、バインドのメタについて話そうと思います。

バインドはマップの構造上、2つのサイトに繋がるエリアでの攻防が大事になってくる。シャワー、Aショート、フッカー、Bロングの4つのことだ。

右からシャワー、Aショート、フッカー、Bロング

そこでの攻防を有利に進めるために多くのプロチームはダブルコントローラー構成です。広範囲かつ毒素が続く限りスモークを使えるヴァイパーとその他のコントローラーを一人の組み合わせ。実際に世界大会に出場したチームは殆どがこの構成でした。

同じサイトに二人のコントローラーを配置するのはあまり見かけません。どちらかのサイトに一人ずつ、特に多くの場合はAサイトにブリムストーン、Bサイトにヴァイパーを配置する。前述のOpTicもこの構成で殆どのラウンドはこの配置でした。

OpTiC vs ZETA BIND Round19

サイトに繋がっているエリアのどちらかの進行を止めることができるとサイトの防衛は楽になります。例えば沢山使えるリソースでシャワー進行を止めて攻撃側がAショートからしか進行出来ない場合、かなり強いクロスを敷くことができます。これがダブルコントローラー構成の防衛側における強みの一つと言えます。

もちろん攻撃側も含めてもう少し細かい点はありますがこれが現在の大まかなメタになっています。次に考えるべきはレイズがなぜブリムストーンがシャワーにいないことに不満を持ったか。それはブリムストーンの特徴を考えると分かってきます。

ブリムストーンのデメリットから見える、効率的な配置

ブリムストーンには他の純粋なコントローラーであるオーメンやアストラと比べた時に明確な弱点があります。それはスモークの使用可能範囲が狭いこと。件のシャワーにいた場合、スモークはBサイトに届きません。

このことからブリムストーンはシャワーかBロングにいた場合デメリットが際立ってしまいます。両サイトに影響力を出せるAショートかフッカー付近にいてカバーをできるようにした方が使用可能な範囲の点から効率的です。

シャワーとBロングの場合
Aショートとフッカーの場合

ブリムストーンの配置はバインドにおいてはAショートやフッカーが正しいのかもしれない。ただし構成や戦い方を考えた時に正しさは変わります。

次にレイズがなぜこのような発言をしたのかについて考えましょう。

レイズが考える正しい配置とランク特有の問題

レイズの状況を説明しましょう。ゲーム開始直後からテンションが高めで多くの人がだる絡みと思うであろうVCをほぼ毎ラウンドしていた。5R目では自分からだる絡みするとも宣言をしていました。皆さんが思っているよりだる絡みなので一度配信を見てみると良いかもしれません。

ブリムストーンがVC無しな事とサイファーとスカイの報告量の少なさに文句を言っていたので意識は高いのかもしれません。キル数はトップでしたが指示厨気味で上手くいかなければ文句を言う、そんな感じでした。

流れが変わったのは9-5で迎えた15R目。レイズはフッカーを守りにいったがあえなく倒され、ブリムストーンが一人残って相手は二人生存。ラッキーもありクラッチを決めて勝ったのにも関わらず、レイズが「ブリムがVCしてないからモクを出してもらえない。」と言いました。

9-5で迎えた15ラウンド目の開始位置

その後18R目では12-5で4vs2の状況から負けた際にもスモークに不満。そこからチームは連敗して負けるかといった所でVorzコーチのあの発言が出たラウンドに残りの1ラウンドを取得して勝利した。

ブリムのせいでフッカー負けるし、試合自体も負けそうになった。そう言いたいのかもしれません。VCで言おうにもミュートで伝わらないしイライラする気持ちは分からなくもないです。ですがやはり言い方には気を付けましょう。

さてレイズはブリムストーンがシャワーにいたためにフッカーへのカバースモークができない事に怒っていた事が分かります。確かにスモークに限らずカバーのアビリティが来ない時に不満を募らせるプレイヤーも多いです。

ではVorzコーチの発言はどうか。Marvedがシャワーにいたのはダブルコントローラーかつチームの戦術ありきだったからこそ。ランクでは非効率的であろう配置が競技シーンでは機能していました。サイファーがいるので疑似的にダブルコントローラーが出来るかもしれませんが、キャラパワーが低いため難しい。

さて、ランクではなんとなく自分が行った場所を守る傾向があります。プロシーンで良く使われるような場所にはそのエージェントが行く場合が多いですが、それ以外は余った場所を守る人が多い。どうしてもコミュニケーションを密に取れないランクでは難しい問題です。

では発言の内容自体はレイズが正しくVorzコーチは正しくないのだろうか。難しい問題だがランクにおいてどちらも正しければどちらも正しくないと自分は思います。理由はチームの方針が全く定まっていないからです。

チームの方針とランクとの兼ね合い

Aサイトを守るためにリソースを使ってしまった後に相手にTPされ、難しいBリテイクを迫られた経験が皆さんにもあるはずだ。こういった状況に陥る原因はチームがどの状況になった時に敗北濃厚になるか意識していないから起きます。

シャワーにブリムストーンを配置した場合の大事なポイントは二つある。一つ目は勿論シャワーを守ること。シャワーを突破されたらAサイトの半分を相手に取られてしまいます。二つ目はTPしてきた場合にBサイトのプレイヤーが寄る時間を作る、又はフッカーで止めることです。

そこで止められなければブリムストーンのアビリティがほぼない状態でリテイクになります。厳しい射線の中でサイトに行かなければいけないし、入れたとしても別の射線があるので厳しいリテイクになるでしょう。

前述の通りAサイトはシャワーを重点的に守れば有利なリテイクが出来るため、人数は二人でも可能でアビリティも沢山使う必要がない。逆にBサイトは三人と大量のアビリティで何としても止めなければいけない。ブリムストーンをシャワーに配置した時点でそれが出来なければ負けが濃厚になる方針になってしまう。

G2 vs PRX 19R目の開始位置。
ヴァイパー無しのPRXはAショート付近は空けつつBサイトは厚く守っている。

つまりこの配置とその戦い方を選択した時点で勝敗に大きく関わるのはサイトに入られたなどではなく、もっと手前の部分になるということです。

Aショートにブリムストーンを配置し、フッカーにカバーまでしてしまうと使えるリソースが分散するのでAショートの守りが薄くります。Aショートは入り口が広く手前で守らざるを得ないので、プレッシャーがかかる難しい状況でランプで守らなければいけなくなります。

シャワーは狭いので比較的守りやすいですが、Aショートはリソースを割き終わった後にどうしても進行が止めづらく、守り切ることは難しい。代わりにBサイトのプレイヤーが詰めたり索敵などをしてアドバンテージを取らなければラウンド終盤になると不利になってくる方針になる。

このように配置と戦い方によってそのラウンドの重要な局面は変わります。そしてそれを理解していなければ良くない戦闘をしてしまってチームを負けに導いてしまうこともあります。

当たり前ですが構成によって配置も戦い方も方針も全く変わってきます。ランクでは難しい構成を強いられることも多いでしょう。しかしこの構成だったらどう戦えばいいか考えることこそが重要なんです。

この構成ならこうやって戦わなければ勝てない。今こうやって戦ったから負けた。そんな反省も出来るはずです。その反省の上澄みの上澄みがプロシーンなのです。どんな構成であっても試さなければ何も始まりません。

旧Absolute JUPITERが4デュエリストで大会に出場し、なぜ勝ったか。それはその構成における方針があるからです。

どのような指示であっても否定するつもりはありませんが、指示の狙いが分からなければ何の意味もありません。その場で何となく上手くいったという事実だけが残ります。指示の狙いが分かればチームの方針も少なからず決まります。

今回の例で言えば「シャワーにアビリティを全部使って止めて、Aショートから攻められたとしても有利にリテイクを狙おう。Bサイトは3人で止める。」なんてコールがあれば悪くないでしょう。そこからBサイトを具体的にどうやって止めるかも話すこともできるでしょう。ランクでもそのぐらいの意思疎通は出来るはずです。

何が良くて何が悪いのかを真剣に分析し考えることがヴァロラントでは一番重要だと言っても過言ではありません。

終わりに


国際大会で結果を残したZETA DIVISIONが所属する日本地域。もっとレベルを上げることは出来るはずです。それは少し考えて、少しチームに話す、それだけで出来ることです。

話したくない、話せない時もあるでしょう。勿論VCを強要してはいけませんし、VCがあったとしても上手くコミュニケーションを取ることを心がけましょう。言い方やランク帯も考え、相手にあったお願いの仕方などもあるでしょう。ランクはそういった意味でも難しいです。

あまり記事を更新しなくなってからも記事を見てくださっている方がいて嬉しく思う反面、反応を見るたびにマジで最近何もしてね~って思い申し訳なくなります。

昔の記事を見ても少し書き直したい部分はあったとしても大幅に間違ってることは書いていないと思うので、参考になる方はいるのかなと思います。アップデートしたいけど・・・まあ・・・面倒くさいので・・・。

今回の記事で一番大事なのはVorzコーチのクリップなのであれさえ記憶に残ったら後の解説はどうでもいいです。何回見ても笑えます。

さてオチが全然つかないので急に終わらせます。また次の記事で。

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