色別標高図をハザードマップ代わりに使ってはダメです
上記記事中で、秋田市楢山大元町の豪雨災害現地踏査で地理院地図の「自分で作る色別標高図」機能を使って、同地区が周囲に比べてかなり低い場所(洪水に対して危険性が相対的に高い場所)であることに触れました(下図)。
ここで使った「自分で作る色別標高図」ですが、これを「危険な低い土地を探そう」といったの用途で使うのは絶対ダメだと考えます。水害に対して危険な「低い土地」は標高の絶対値で決まりません。たとえば先に作った楢山大元町と同じ凡例で範囲を広げるとこうなります。
「なるほど!、秋田市街の東側は標高が高くて安全な場所が広がっているんだな!」などという理解は全くの間違いです。平野全体が傾斜しているのですから、ここで赤く見えるところは「高台」などではありません。赤く塗られている部分の中にある青い線が河川(大平川)ですが、赤く塗られている部分の多くはこの河川などが土砂を運んできて形成された低地(氾濫平野)であり、洪水の影響を受けうる場所です。
また、図中左側の緑や青に塗られたところもほとんどは洪水の影響を受けうる低地です。この図の色の塗り分けは、楢山大元町の相対的な高低差を強調表示するために全く便宜的に決めたものであり、6m以上が赤系の色で塗られているからといって、あらゆる場所に6mを境として洪水災害の危険性について格別何かの違いがあるわけではありません。
色別標高図は「(適切でない見方を)わかりやすそう」に見せてしまうだけに本当に危険だと思います。ごく局所的(数百m位の範囲かな)な標高差を見るような場合や、単純に「10m以下の土地」とかを見るといった目的があるならばならいいですが、ハザードマップ代わりに使うのは強く非推奨です。
だいたい同じ範囲を地形分類図で見ると以下のようになります。地形分類図ならば標高の絶対値と関係なく、そこがどのような地形かを見ることができますから、色別標高図のような誤解を生む懸念はありません。ただ、地形分類図は極めて癖のある情報で、「地形分類図で低地と示されたところ=洪水の危険性あり」などと単純に理解されると致命的な誤解を生みかねませんので、これまた、地形そのものや、地理情報の精度について専門知識がない人には非推奨です。
一般的にはやはり、すなおに浸水想定区域(洪水ハザードマップ)を見るのがもっとも妥当かと思います。ただし、洪水ハザードマップについては、中小河川では整備が進んでいないという問題があります。このあたりについては、下記のインタビュー記事をご覧下さい。
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