死までのイーシャンテン

とにかく空は晴れて貫通した青空と絶妙な雲のコントラスト。
外気も暖かく床に転がる魚肉ソーセージの鮮度か気になるほど。
気分が良い。とにかく。
土曜の最高につられてベッドから起きるとそこには組みかけたハンガーラックが哀愁に満ちた骨組みのままそこにいた。
ああ、昨日作ってる途中で爆眠くなって作るのやめたまんまだったなと思い出す。
午前8時。
俺はこれから何でも出来るんだ、と心を弾ませた直後医者に行かねば薬が無いことを思い出す。
生命。俺を貫くその意味をダルさと争わせて仕方がなく重い腰を上げて医者へ。

初めて行ったその医者で謎のマシンに乗せられて身体の分析を行ったところ、俺の筋肉量まではじき出してくれた。
両腕がガリガリで全体の栄養評価はタンパク質、ミネラル量、体脂肪量すべて不足。
何ということだ。
俺の場合、【1型糖尿病】【せき喘息】【ヤニ中毒】の役が揃っており、あと【コロナウイルス】をツモったら絶対的死という跳満が待っている。
健康第一。
この素晴らしい週末は常備菜を作ることにしよう。

スーパーへ向かい食材を買い込む。
自炊して感じるのは人間一人が食える量には限界があるということ。だから適量だけ買う。賢い。俺は賢いのかもしれない。

家に帰ると悲しそうな顔で骨組みだけのハンガーラックがまだそこにいた。
まず作るのダルいなぁ、と思いながらもやるしかねぇって!と意識改革を行いハンガーラックの作成に取り掛かる。
あともう3箇所ネジはめちまえば勝ち、というところでハンガーラックの穴が何か左右で合わないことに気付いた。
間違えた。一番最初の骨組みの時点で左右逆に取り付けていた。
俺はクォーン!とGODのフリーズ音が頭に響き床に倒れ込み白目むいて気を失った。

その後気が付くと家にあった「もぎたてストロングぶどう」を飲みながら今に至る。
酒飲んで柿ピー口に放り込みながらヤニかまして社会に文句をぶつける。
健康なんてものは生きていたい!と強く思える社会があってこその思想であって胸を張ってそう言える世の中と言えるのかね!と完成しないハンガーラックをにらみながら俺は思う。

現代社会に対する警鐘はハンガーラックの作り直しという形で俺に鳴らされている。
嫌なこと面倒なことやりたくないこと。
それらの輪郭を9%のアルコールでぼやかしながら若者たちは今日を生きていくのだろう。

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