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能登半島地震における石井食品の災害対応チーム活動報告

能登半島地震の被害に遭われたみなさまにお見舞い申し上げます。
石井食品には災害対応チームがあり、震災等が起きた際には、食品会社として食糧のお届けや現地のボランティア団体と協力した活動を行い、商品開発にも活かすための活動を行ってきました。

今回の能登半島地震においても、災害対応チームの佐々木が2月7〜11日の間、支援物資を持って、ボランティア団体を通じて現地に伺いました。その様子は石井食品の全社員に報告されています。今回のnoteでは、現地での活動の様子や食品会社として課題に感じたことなどをレポートしたいと思います。

報告者:佐々木淳

報告者: 顧客サービス部 第三営業グループ 災害対応チーム 佐々木淳

今回滞在したエリア

今回の滞在期間でお伺いしたのは、特に震災の影響も大きい石川県の珠洲市です。避難所に指定されている日置(ひき)ハウスと、ボランティア団体のベースとなっている蛸島漁港を拠点とし、支援活動に参加させていただきました。

滞在にあたって支援者である我々の衣・食・住はもちろん自己完結が求められます。前泊を除いた期間中は車中泊をし、自らも石井食品の非常食セットや常温で保存可能なミートボール、チキンハンバーグを持ち込みました。その場で出たゴミは全て持ち帰りが基本です。期間中の過ごし方については、石井食品社内でも質問を受けることが多くありました。

七尾市以北は状況が一変。目的地到着には通常の2倍以上の時間がかかる

滞在にあたって富山県高岡市で前泊し、石川県珠洲市まで、通常であれば車で2時間半あれば到着する道を5時間以上かけて向かいました。石川県の中でも中央部に位置する七尾市あたりまで来ると道の状態は一変。崖崩れを起こしている箇所や、倒壊した家屋が目につき始めます。道路にはクラックと呼ばれる地割れ部分も多くなり、スピードを出すと車ごと飛んでしまうため、ゆっくり進まざるを得ません。どの車も時速10km程度の徐行運転で前へ進んでいました。

お伺いした2月上旬時点でも珠洲市全域は断水したまま。給水車が何台も行き交う異様な光景が印象的でした。

ようやく到着した珠洲市では、

  • 避難所への支援物資の配送

  • 家屋修繕と避難所の清掃

  • お風呂の準備

  • 炊き出し準備

などの活動の他、被災した方からお話を伺い、現実にはどんな支援を欲していらっしゃるのかをヒアリングさせていただきました。こんな大変な状況の中、快くお話しいただいたみなさまには感謝申し上げます。

支援物資を運び込む様子

お湯を沸かすための電気がない

中でも印象的だったのは、お風呂を沸かすための電気がないということです。電気自体は届いているのですが、大量のお湯を沸かすほど、電力に余裕はありません。よって、薪を割って火を起こし、お湯を沸かすしかないのです。

当たり前ですが、沸かしたお湯は熱いです。このお湯に水を混ぜて、体感で適温を探りながらお風呂の準備をします。準備ができた正午から避難所の方が順番にお風呂に入られますが、徐々にお湯の温度は下がります。並行して水汲み・お湯作り・焚き火のための薪割り、湯加減の調整…など、お風呂環境を維持するためにはたくさんやることがあります。被災ということを身体で感じた体験でした。

お風呂の湯を準備する様子。このような準備を6時間程度続ける必要がありました。

活動を通して感じた3つの課題

石井食品は食の支援物資をお届けすることを通し、被災地を支援しています。しかし、実際に足を運んでみて、まだまだ課題や気づきがありました。これらは石井食品として今後どのように対応していくか検討したいと考えています。

①「非常食+α」の必要性 - 非常食だけでは足りない支援の現状

被災地において、非常食をはじめとした食糧が持ち込まれることに大変感謝されました。しかし、パンなどの場合は、水がないと飲み込みにくく、積極的に食べられる状況にはなかったようです。特に今回は断水が酷いため、手元にある水の残量を考えながらの食事。石井食品の非常食セットにも「水」をプラスするアイデアが思い浮かびました。

また、被災した女性から、地震当時は同じ家屋の別の階にいた家族に自分の安否を伝えることもままならなかった。そのくらい恐怖で声が出なかったというお声も伺いました。セットとして「水」だけでなく、「ホイッスル」を非常食につける工夫もできそうです。

②子ども目線の食べ物の必要性 - 支援物資に”甘口”はあるか?

これは被災地ではよく聞かれる声なのですが、幼児食のようなものは届く割合が必然的に低くなるため、必要な人に届くまでに時間がかかりやすいです。

他にも、麻婆豆腐やカレーのレトルトがたくさん届いていたのですが、大体の味付けは中辛か辛口で、お子さまが食べられないという場面も見かけました。

そんな中、我々が「イシイのおべんとクンミートボール」を持って現れたら、みなさまのテンションが最高潮に。「いつもの」「知ってる」ものだからこそ喜んでいただけたようです。石井食品のレトルトカレーは、子どもが食べれる「甘口」の味付けながら、スパイスもしっかり効いているので大人にもご満足いただけます。こんな風に「甘口」のニーズがあるのかと目から鱗でした。

③「非常食」という名前は、被災地に希望をもたらせるのか?

私たちが日々商品に対して当たり前に使っている「非常食」という言葉。この言葉がパッケージに書かれていることで、「今自分が置かれている状況は非常なんだ」と再認識させられ、暗い気持ちになってしまう方も多くいらっしゃることが分かりました。

せっかくの食事の時間。少しでも元気になってほしいので、これは改名も視野に入れた方が良いのではないかと考えさせられるほどのできごとでした。

みなさんはローリングストックという考え方をご存知でしょうか。日頃から少し多めに備蓄していた食品を賞味期限が切れる前に定期的に消費し、都度買い足す、災害に備える方法です。

イシイの強みは非常食でも「いつもの味」であること。あえて非常食という言葉は封印し、ローリングストック品としてパッケージ化する道もあるのではないかと気付かされました。

炊き出しに並ぶみなさん。炊き出しの情報はXなどのSNSを通じて得ることが多いのだそう。

石井食品はこれからも食を通じて支援を続けます

石井食品の非常食が誕生したきっかけは東日本大震災にあります。また、野菜のおかゆ「potayu」が生まれたのは、熊本地震がきっかけです。

それぞれで被災された方からのお声をもとに、どんな商品があったら嬉しいのか、気持ちが楽になるのかをヒアリングさせていただき、我々としてできることを形にしてきました。しかし、今回の活動を通じてまだまだ課題があることもわかりました。

また、備えていないことがどれだけ怖いことなのかを身をもって体験した日でもありました。活動から戻ってから社内では、「自宅から避難所への経路確認」「家族や友人との連絡手段の確認」「備品や非常食の見直し、新調」など、ご自身の状態を見直すようにと呼びかけています。



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