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小説の途中「アール グレイ」

「XX君・・・。私のいれたアールグレイすきだったでしょう。」
「ああ、学生の時教えてくれたんだよねアールグレイ。 アールグレイ飲むごとに
 思い出してたよ」

「また、ウソ! バカ言って」

「いや、ずーっともう一度、アールグレイ、、君の煎れてくれた・・・飲みたかった」
「ほら、冬の朝、君のバイト先の喫茶店早く着き過ぎてまってただろう、ドアのそとで」
「寒いのに陽が当たるとそこだけとても暖かくて こう光が斜にさしてきて、」
「あの時、髪はショートだったロングだった?」

「もちろんロングでしょう 」

「それで? 私その話、憶えてない、何処の喫茶店?いろいろバイトしたら」

「銀閣寺の裏のほうの 名前は・・・忘れた。それでね、君が僕を見つけて走って来たんだよ」
「あの頃電話だって下宿呼び出しだもんな」
「ケータイなんてカケラもないし」
「髪の毛がきれいに光ったんだ、でもショートかロングか忘れた」
「慌てて、カギをあけてね、石油ストーブつけてお湯をがーっと湧かしてくれてア
 ールグレイ煎れてくれたんだ。その時も」
「朝、オープン前の寒くて、少々暗い喫茶店。ガラスのドアから光りがキレイに入ってキッチンの眩しい君の背中に魅とれていたよう な気がする」

「それじゃ私、ハダカでいるみたいじゃない」

「 アールグレイの香りがね一杯に広がるんだよ、凛としたような。でもその 後、
どうしたんだろう、忘れた」
「わすれるのも無理ないか、もうあれから20年が過ぎた。君の紅茶も15〜6年ぶりだ」

「そんな 思い入れタップリにいうのはダメ」

「 でも、ほら見て、アールグレイのあたらしいカンカン」

  彼女はそういって四角い僕の知らない紅茶缶をカサカサと音をたててふった。
「知らないでしょう?コレ元町にねあたらしくできたお店で発見したの、ベルガモ
 ットの香がとてもつよいの。フォション なんかめじゃないのよ」
「それでは、15年ぶりにアールグレイを煎れましょう。ミルクも暖めました、ポットもOK!4分まってね」

「15年振りだろ、4分ぐらい待ちますよ」

紅茶を入れる指は年をとらない。相変わらず白くてきれいだ。彼女は真剣な表情で
スプーンに葉をのせポットに入れる。紅茶よりコヒードリップにピッタリの細い口
のステンレスのやかんから静々と湯が注がれる。鮮明なアールグレイの香りが一杯
に広がる。

「ねえ、お味はいかが?」

「うーん、ほとんどこれ香り100%香りを飲んでるね、おいしいよ」

「よかった。アールグレイいれるとね私も色々思い出すんだ」

「どんなこと?」

「いろいろすぎて言えない、でもXX君がアールグレイがすきっていつも言ってた
ら、私もとても好きになった、ずーっとこの20年間」

つづく