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裏打ち報告2024年7月「裏に何打ってん?」の巻

墨の作品で残しておきたいくらい満足いく出来のものを裏打ちしましたという報告をする裏打ちレポート、今回は前回の大失敗を反省し、

二ヶ月しか置きませんでした!
……あ、ハイ、年明けには「毎月やる」とか言ってましたね、覚えてますよ。一月から五月までお休みしちゃったのよりはマシ、ということで。

今回裏打ちしたのはこの三点。

左から青鷺名人、メンフクロウ、アオサギ

全てnoteで公開済みですね。

毎度毎度「水で濡らしました糊付けました」というプロセスを繰り返すだけなのも芸がないので、今回は裏打ちに使っている紙の話をしようかと思います。

裏打ちの方法について調べると、たいてい裏打ちの紙は美濃紙や鳥の子紙を使いましょう、と指南されています。つまり和紙の中でも書道用紙などより強い和紙、ということですね。

私の場合、それをどこで手に入れるのかということが問題になってきます。

裏打ちの紙は作品より大きくなくてはいけません。半紙を裏打ちすることもあればもっと大きい作品の場合もあり、それら作品よりも大きい裏打ち紙を手に入れる必要が出てきます。そんな大きい紙を折り曲げられたり丸められて変な癖の付いたりした状態で配送されるのは避けたいので、日本から取り寄せる気にはなれません。
今はチェコでも日本の書道用紙を輸入して販売しているお店もありますが、さすがに美濃紙、鳥の子紙などといったものは見当たりません(実は〇竹の商品で「糊なしで失敗なしの裏打ち!」が売りのアイロンで貼り付ける裏打ち紙が存在し、それはそのお店でも扱っていて私も試してみたのですが……アイロンの熱が強すぎたのか?結果、作品がくるんと丸まってしまい、まんまと「失敗ありの裏打ち!」になってしまった過去が)。

では、私はこれまでの裏打ちで何を裏に打っていたのかと言うと

じゃじゃん

……ってアンタ、Hahnemühleじゃん。

そう、私が数々の水彩紙でお世話になっているあのドイツの画材ブランドHahnemühle。
彼らは「Sumi-e」と銘打って、墨絵用の紙も出しているのです。

しかしですね、私、これは水墨画には使っていません。
水彩紙はあんなに優れているのに、やはり異文化の壁は厚いということなのでしょうか、このSumi-e、何かが違うというか、的を外しているというか。

初めてこの紙を買ったのは結構前です。まだ水墨画を本格的に始めるより何年も前。

HahnemühleのSumi-eを実験的に使った2017年の作品。こんな絵にコピーライトまで入れて残してたんだ、と今更ちょっと白けた気分ですが。笑

ここではこの紙に対して「へえ」と思っただけで、当時は「墨で洋紙に描く」というのを何枚かやりました。もちろん当時描いていたのは今水墨でやっているような伝統を踏まえたものではなく、典型的な「KaoRuテイスト」なもの。

その後、本当に水墨画を始めるようになった経緯はこちら↓

かなり脱線しましたが、このHahnemühleのSumi-e、水墨画を描くには「?」なんですが、和紙は和紙、なんです。で、かなり厚いのです。書道用紙、画仙紙に比べると断然厚い。

そこで美濃紙・鳥の子紙の代わりに裏打ちに使うことにしたのです。

前回までで手持ちの30 x 40 cmのSumi-eを使い切ったのですが、一番よく行く画材屋さんにバラ売りで50 x 65cmという大きさで置いていることに最近になって気が付き、それを買ってきました。
このくらいの大きさならかなり大きい作品まで裏打ちできそうだし、半紙なら三枚くらいいけるんじゃないか、と思ったのですが、

う~ん、ギリギリです。
前回裏打ち紙が作品よりあまり大きくなかったのが原因で失敗したので、ここはケチるところではない、と半紙の裏打ちには50 x 65 cmを半分に切って使うことにしました。

このくらい余裕があればまず作品から外れないだろう。ちょっと贅沢な幅の余白。

ではここからはいつも通りザっと裏打ちの過程を写真でご紹介します。

まず作品を裏返して霧吹きで水をかけます。かなりびしょびしょにします。
別の板の上で裏打ち紙に水で伸ばした糊を塗り付け(ここはスピード勝負なので写真なし)糊の面を作品の裏面に乗せて貼り付けます。
作品ごと持ち上げて壁(例の如くタンスの扉)に裏向きのまま貼り付け、四辺を紙テープで固定します。
同じプロセスを各作品、一枚ずつ繰り返します。
いつも水をかけて作品を伸ばすところで皺が寄り、苦労するのですが
今回はこのアオサギで裏打ち紙に派手に皺が寄る、という怖ろしい状態になり、それを直そうにも他より薄い紙に描いたアオサギ、一瞬で裏打ち紙に貼り付き離れなくなるという事態に。
三作品が壁にテープで固定された状態。

待つこと約70時間。
しっかり乾いたようなので、壁から外してみることにしました。

テープだけを外した状態。

前回のワタリガラスのように乾いていく過程で壁から剥がれてきた作品もなく、今回は派手な失敗もなさそうです。

壁から剥がして、余分な四辺を切り落としたものです。

今回は失敗はなさそう、と思いきやこちらのメンフクロウ、絵にはかかっていないものの、左上に二本の長い皺が。
鳥同盟の長が「是非に」と言ってくださって裏打ちすることにした作品だというのに。無念。

それに比べて「失敗なんてさせるものか」の心意気の青鷺名人。
さすがの安定です。

墨汁で作った淡墨で描いたので、やはり手で磨った墨を使った作品より軽い儚い色合いの絵になっていますね。

このアオサギ(「名人」の敬称をいただく前に描いた作品なので、あえて「アオサギ」とだけ)は裏打ち紙に皺が寄ったのに、結局それがほとんど見えないくらいに仕上がり、青鷺魂の実力(?)を見せつけられた思いです。

毎回オタオタしながらやっている裏打ちですが、何となく今回、手際が良くなってきたというか板に付いてきたというか、以前よりサクサク仕上げられた気がします。今回は裏打ち紙を裁断するところから計っても三枚の裏打ちに一時間もかからなかったと思います。

ところで今回の裏打ちで、昨年の帰国の際に入手したフエキ糊の半分を使い切りました。

残りはあと一年分もない、ということですね。
え?取り寄せろ?
つれないことをおっしゃいますね。「糊を仕入れにぜひ帰ってらっしゃい」って言ってあげてくださいよ。

2024年7月の裏打ち報告は以上です。
この夏中にもう一回くらいできたらいいなあ、と思っております。


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