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長兵衛に捧ぐ裏打ち報告2024年8月

前回七月の裏打ち報告で「夏のうちにもう一回裏打ちする」って言ってたくせにサボったのね~、と思っていた方がいらっしゃたかもしれませんが!
サボったんじゃないんです!八月末にもう一回実践していたのです、裏打ち。

じゃ、なんで今頃報告するのかと言いますと、裏打ちした作品が公開できなかったからでございます、七十二候の第四十四候「鶺鴒鳴」が来るまで!

なんとなんと、とうとうこのKaoRu、穂音さんの『長夜の長兵衛』シリーズにまで、侵入してしまいました!
以前から何度かnote上では穂音さんの小説からのインスピレーションで水墨画の習作をお披露目していましたが、穂音さんご本人から「長兵衛シリーズのために秋の候で何か描けます?」とご相談いただいたのは八月も初めの頃。

早速やる気満々で七十二候に目を通したところ、最初に目に付いたのが「鶺鴒鳴(せきれいなく)」。

なぜってセキレイも、私にとってはリベンジモチーフなんですもの。

二年前の十月以来セキレイは描いていなかったわけなんですが、今回リベンジのチャンスではないかと、挑戦させていただくことにしました。

セキレイでもいろいろあるようですが、二年前も今回もハクセキレイに挑戦。
この顎の下の黒い部分で濃墨を重ねると何とも重く見えるのが難しい。

そして、ハクセキレイは嘴を閉じていると「いかにもハクセキレイ」な絵になる気がするのですが、この第四十四候は「セキレイ鳴く」ということで、どうしても鳴いているところを描きたいと思ってしまい、嘴をパカっと開けたところを描いてみることにしました。

ハクセキレイは、私の住むチェコには生息していません。
ですからネットで写真を眺めるくらいしか参考にできるものはないのですが、ネットに上がっているハクセキレイの写真のほとんどは嘴を閉じたものばかり。
そこで動画を参考にしていくつかアイデアスケッチをして構図を決めた後、墨を摺り筆を握り仕上がったのが、今回穂音さんの『長屋の長兵衛 鶺鴒鳴』で使っていただいた作品です。

二年前のハクセキレイより随分と可愛らしい絵になりましたが、セキレイは「恋教え鳥」とのことで、可愛くあるのが正解かも、と。うふふ。

お話をいただいて「鶺鴒鳴で描きたいです」と意思表示してから数日で仕上げました。鶺鴒鳴は9月12日から16日とのこと。裏打ちまでにしっかり乾かすことを考え、すぐさま取り掛かったわけですが、穂音さんには「もう描いたのですか!」と驚いていただきました(こちら、今までコラボしたnoterさんほぼ全ての方にいただいているお言葉かもしれません笑)。

では以下、裏打ち報告書でございます。

この八月末はハクセキレイと六月のワルシャワ紀行の記念で描いたズキンガラスを一緒に裏打ちしました。

前回の裏打ちで「昨年帰国した際に購入したフエキ糊の半分を使い切った」と書きましたが、二本買ってきたうちのもう一本を開封するかどうか迷った末、今回は以前ドイツAmazonで購入したヤマト糊を使うことにしました。

「水に溶けやすいのはフエキ糊!」という情報を目にしてフエキ糊を日本で買ってきたわけですが、今回けっこう高めの温度のぬるま湯で溶いたらヤマト糊でも大差ない気がしました。

後の工程はいつもと同じです。

作品を裏返して水浸しにして
裏打ち紙に溶いた糊を塗り付け作品に重ねて
壁(タンスの扉)に貼り付け、四辺を紙テープで固定します。
ハクセキレイのほうは四隅の糊が弱い気がしたので念のため絵にかからないようにテープでの固定を強化しました。

待つこと72時間。

しっかり乾いたようなので、壁から剥がして余分な四辺を切り落としました。

このズキンガラスは写真ですが、ハクセキレイのほうは、穂音さんに最良の状態で使っていただくためスキャンしたものをお渡ししたいと思い、家でスキャンできるギリギリの大きさまで四辺を切り落とし、スキャンしました。

こちらです。


以上、穂音さんとのコラボ作品の制作裏話を兼ねた裏打ち報告、日中最高気温が一週間で25℃下がった(34℃→9℃)プラハから(でもって大雨洪水で大変なことになりつつあるチェコから)お届けしました。

穂音さん、素敵なコラボのお話、本当にありがとうございました。

この秋の間にはまた裏打ち報告ができるといいなと思っておりますので、次回もお付き合いいただけたら幸いです。


日本帰省に使わせていただきます🦖