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その名はカフカ IV

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長編小説『その名はカフカ』収納箱その④です、その③はこちら→https://note.com/dinor1980/m/m036e5e244740
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#白痴

その名はカフカ Modulace 11

その名はカフカ Modulace 10 2014年11月グラーツ  小一時間ほどバスに揺られてグラーツに降り立ったスラーフコは「たった七十キロばかり北上しただけなのにマリボルよりも気温が低いな」と心の中でつぶやき、薄曇りの空を見上げた。  日曜日のバスの中は思いのほか混んでいて心なしか埃っぽかったが、電車は何となく使う気になれなかった。新しい職場で宛がわれたばかりの車もあったが、それを私用で乗り回すのは気が引けた。  ヴクは週末にも不定期に出勤するが、マーヤとスラーフコは