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その名はカフカ IV

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長編小説『その名はカフカ』収納箱その④です、その③はこちら→https://note.com/dinor1980/m/m036e5e244740
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#水彩画

その名はカフカ Modulace 6

その名はカフカ Modulace 5 2014年11月ウィーン  秋のウィーンが好きだ。そんな言葉がプラハからウィーンまでの直行列車を降りたレンカの頭に浮かんだが、瞬時に「春でも夏でも冬でも自分はウィーンが好きだけど」と言葉をつけ足して、人々が行き交うプラットフォームを眺めた。

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その名はカフカ Modulace 9

その名はカフカ Modulace 8 2014年11月プラハ  明日から全員移動なんだから今日は早く切り上げようとアダムが言って、それならちょっと練習に行こうかなとエミルが言って、あんまりジョフィエとおばあ様に寂しい思いをさせないでねとレンカが言って、この日は三人とも普段よりずっと早めに事務所を出た。それからレンカはアダムの車に乗って自分のマンションに寄ってもらい、移動のための荷物をまとめると、またアダムの車に乗ってアダムの自宅へ向かった。

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その名はカフカ Modulace 11

その名はカフカ Modulace 10 2014年11月グラーツ  小一時間ほどバスに揺られてグラーツに降り立ったスラーフコは「たった七十キロばかり北上しただけなのにマリボルよりも気温が低いな」と心の中でつぶやき、薄曇りの空を見上げた。  日曜日のバスの中は思いのほか混んでいて心なしか埃っぽかったが、電車は何となく使う気になれなかった。新しい職場で宛がわれたばかりの車もあったが、それを私用で乗り回すのは気が引けた。  ヴクは週末にも不定期に出勤するが、マーヤとスラーフコは

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その名はカフカ Modulace 14

その名はカフカ Modulace 13 2014年11月エゲル  エゲルと言えばワインだろう、買い出しは任せてくれ、と言って自転車で街へ飛び出していったペーテルを待ちながら、エミルは以前はIT技術者の研修所だったという無機質な建物の一室で仕事をしていた。  二日前、レンカとアダムはオーストリアへ向かったが、エミルはレンカに「カーロイの指示に従うように」と言われ、一人ブダペストへ車を走らせた。そしてブダペストでカーロイから受けた最初の指示は「ペーテルを連れてエゲルへ向かうこ

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その名はカフカ Modulace 16

その名はカフカ Modulace 15 2014年11月エゲル  一つの生命体が自分の傍に座っている、とは先ほどから感じていたが、テンゲルは目を開けることもその生命体に声をかけることもできなかった。いや、そうしようと思えばできたのかもしれないが、まだ暫くこうして横になっていたかった。危険はない。自分の傍に自分の許可なくやって来られる人間は、この世で一人しかいないのだから。そして、もし人間ではない生命体だったとしたら、やはりテンゲルにとって危険なことなどあり得ない。  今回

その名はカフカ Modulace 22

その名はカフカ Modulace 21 2014年12月ブルノ

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