見出し画像

中国人にとっての「面子」とは、「チカラの強さ」そのものを表す概念

日本語にも「面子(メンツ)」という言葉ありますね。

「アイツ、面子にこだわりすぎなんだよ」とか、「先輩の面子をたてなきゃなー」とか、使いますよね。

意味合いとしては、「世間に対する体裁や面目」のような感覚でしょう。

中国にも「面子(mianzi:”ミェンツ”に近い発音)」という言葉があり、日本のそれとはかなり重みが違います

これから中国に赴任して中国人たちと一緒に仕事をされる日本人の方たちには、中国の「面子」について理解を深めておくことをお勧めします。

40年以上中国人とビジネスを通じて交流してきた田中信彦さんは「スッキリ中国論」のなかで、「面子」についてわかりやすく説明しています。

スッキリ中国論

中国には、「彼は面子が大きい(他面子大)」という言い方があります。
田中さんの説明によれば、以下のような表現になります。

******************************************************************************

「面子が大きい人」とは、「普通の人とは違う特別の扱いをしてもらえる人」とか、「他人にはできないことがその人にはできる」という状態のこと。

つまり、「普通の人々に広く適用されているルールや常識的な相場観のようなものが存在するにもかかわらず、その人物が出てくると、その枠を飛び越えて、異例な取り計らいが実現してしまうような人」ということになります。

具体例を挙げると、普通はなかなか入れないような幼稚園や学校に、その人に頼むと(さまざまな方法で人を動かして)なんとか入れてしまう。

正面からのルートではとても会えないような著名人に、その人に頼むと面会できてしまう。

もっと生臭い話でいえば、正式には競争入札によって受注企業が決まるはずなのに、その人に頼めば有利に取り計らってもらえる、みたいなことです。

だから普通の中国人にとって、「面子の大きい人」とは非常に頼りになる、どうにかしてお近づきになりたい人である。周囲から尊敬と羨望のまなざしで見られる人物を意味する。

*********************************************************************************

この説明から私が連想するのは、映画ゴッドファーザーに登場するヴィト・コルレオーネです。中国における「面子が大きい」とは、まさにマフィアの親分的な存在だと言えると思います。中国人にとっての面子とはまさに、常識やルール、規則を超えることができる「チカラ」そのものなのです。

日本では「面子をつぶされ」てもそれほど重大な傷にはならないでしょうが、中国ではマフィアの親分級の人の「面子をつぶし」たりしたら、とんでもない仕打ちを受けることになりかねません。

ただ、中国人のみんなが「面子の大きい人」になれるわけでは当然、ありません。ラスボスとしてのコルレオーネになれなくても、社会一般には、中ボス、小ボス、弱者のような関係が出来上がっていくのです。

中国人は誰かと向き合ったとき、この相手と自分とはどっちが面子が大きいか、と双方が値踏みし合います。そして、自分より相手のほうが「面子が大きい」と判断したら、相手の「面子を立てる」立場を取ることにします。
そして、相手からの恩恵や特別な取り計らいを受けて、生きていくことに徹します。こうして強者と弱者の間に一定の均衡が成り立つのです。

さて、これからあなたが中国に赴任して、大きな仕事やプロジェクトを任されることになったとしたら、こういう「面子の大きな人」に頼る必要に迫られる場面があるかもしれません。

外国ではどこでもいえることですが、特に中国では、日本人にとって困難な交渉事が多いからです。

集団の中から「面子の大きい」人を見抜き、その人の「面子を立て」ながら彼の力を活用できたら、あなたの中国でのビジネスがスムーズに運ぶことにつながるかもしれません。

日本人が中国社会の中で、「面子の大きい」人としてゴッドファーザーになれるわけはありません。他人の面子をうまく活用するのです。

私は、中国の武漢で6年間日中合弁会社で働いていました。その間に、中国人の面子の世界を垣間見る機会がありました。

中国では、法律が詳細にわたって整備されているとはいいがたく、必然的に役所・役人の権限が大きくなります。ビジネスを立ち上げるとき、拡大するときなどには、いかに役人の承認を取り付けるかがキーになることが多いです。

こういうときに、「面子の大きい」人が暗躍するわけです。顔の広さを武器に役人に近づき、袖の下と豪勢な接待を通じて胸襟を開く関係を作り、いつのまにか承認を取り付けてくるのです。

中国のタバコには、値段がピンからキリまで存在します。
あるとき、私が武漢の税務署を訪れて署長と署長室で面談していたときのことです。
彼がポケットから取り出して私に勧めてきたタバコは超高級なシロモノでした。おそらくどこかの企業からの特別な取り計らいを期待しての献上だと理解しました。(中国人同士のタバコの勧め合いはあいさつ代わりです)

その税務署長は、自分が武漢市を取り仕切っていると言わんばかりの超どや顔で小太りの男でした。税務署の署長まで上り詰めるような人は、やはり「面子の大きい」人です。これまでに数々の常識やルールを破りながら、世間を渡ってきたのでしょう。

中国で、外部団体と交渉したり、役所へ承認を求めたりするような総経理や責任者としての立場で赴任する方は、中国人たちのなかでだれがどの程度「面子が大きい」のか、よく観察して見抜きながら人間関係を構築していくことが大事だと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?