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中国人の生活習慣(ほんの一部ですが)や信頼関係の築き方を考察します

中国武漢の日中合弁の自動車会社で6年間働いたことがあり、毎日中国人たちと仕事をしていました。
彼らの生活習慣に驚くことが多かったのですが、考え方や判断基準についても、考えさせられることが多かったのです。

生活習慣でいえば、まず最初に違いを感じたのは、「外気に触れる」ことの意味です。
朝、社員がオフィスに入ってきて最初にすることは、窓を開けることです。凍り付くような寒い朝でも必ず窓を開けます。そして、暖房を入れながらも窓を開けっ放しのことが多いです。寒いので防寒着を着たままパソコンに向かって仕事をします。つまり外気が流れていることがとても大事なのです。
自宅でも同じです。
窓を開けていて寒いので、自宅でもジャンパーやコートを着たまま
です。

タクシーに乗る時も同じです。
どんなに寒い日でも、タクシーの運ちゃんは必ず窓を3分の1ほど開けています。とても暑い日にエアコンを入れていても、窓を3分の1ほど開けています。
つまり締め切った室内に身を置くことをとても嫌がります。

これは、まさに現在のコロナ禍と全く同じ発想です。
タクシーの運ちゃんも見ず知らずの他人を乗せるわけですから、常に感染のリスクを意識しているわけです。
古くからウイルスなどによる感染に苦しみ続けてきた歴史により、現代までこういう習慣が脈々と続いているのでしょう。
常に空調された密閉空間に身を置きがちな日本人よりも、中国の窓開け習慣は自然との共生として理にかなっているのだろうと考えさせられます

もうひとつ生活習慣で気づいたことは、紙コップです。
中国人は紙コップをほとんど使いません
自動販売機で買う飲み物も紙コップの場合にはほとんど手を出しません。
さて、なぜでしょう。
中国人の知り合いに聞いた話ですが、過去に、紙コップの製造工程で使われている接着剤がコップの中の飲み物に流れだして健康上の問題が起きたことがあるからということでした。

なので中国人は飲み物を飲むときに、ガラス製のマイボトルを使います。オフィスでもみんな自分の机の上にマイボトルを置いています。飲み物はたいていお茶です。そしてこのマイボトルのお茶を頻繁に口にします。頻繁に口にするのはおそらくこれも水分補給のみならず、感染から身を守るためではないかと私は思います。

タクシーの運ちゃんも、運転席の横に必ずガラスのマイボトルを置いています。

このほかにも食品にからむ衛生上の問題は数え始めたらきりがありません。
メラニン入り粉ミルク、殺虫剤混入冷凍餃子、段ボール肉まん、下水溝からすくった油を食用油に使用、などなど。
中国ではこういった食の安全に対する脅威の中に身を置いているわけで、みんな細心の注意を払って生活しているわけです。

スーパーに並ぶ野菜や果物は色も鮮やかで、形もそろってはいますが、どれほど農薬漬けになっているかわかりません。

こういった事情に慣れていない日本人が、中国で長く暮らす場合には、日々の食生活には十分な注意が必要なのです。

さて、次に信頼関係の築き方についてです。
外国人とスムーズにビジネスや交渉を進めるためには、信頼関係の構築が欠かせません。
前回の投稿でも紹介したエリン・メイヤーは『THE CULTURE MAP』で次のように述べています。「信頼」には2通りあると。

異文化理解力

ひとつは「認知的信頼(cognitive trust)」、もうひとつは「感情的信頼(affective trust)」。

このふたつの違いの説明について『THE CULTURE MAP』から引用させていただきます。

**************************************************************************認知的信頼は相手の業績や、技術や、確実性に対する確信に基づいていて、「頭から来る信頼」だと言っていい。

感情的信頼は反対に、親密さや、共感や、友情といった感情から形成される「心から来る信頼」と言える。

世界中どこでも、友情や個人的関係は感情的信頼をもとに築かれる。しかし、ビジネスにおける信頼の源泉は、もう少し複雑だ。

アメリカ人は、ビジネスにおいて認知的信頼と感情的信頼をはっきりと分けて考えているという。なぜならこの二つを混ぜ合わせて考えると公私の利害が衝突する危険があるからという。

一方、中国人のマネジャーたちは、反対にこのふたつの信頼を繋げて考える。経済的な結びつきを築く際に、個人的な絆や感情的な結びつきも育むことが非常に多い。

中国人のマネジャーがアメリカ人と仕事をすると、認知的信頼と感情的信頼を分けたがる文化を持つアメリカ人は誠実さや忠実さが足りないと感じてしまう。

つまり、アメリカやスイスといった国々では「仕事は仕事」であり、中国やブラジルのような国々では「仕事は人」なのだ

*********************************************************************************エリン・メイヤーは、このふたつの信頼の指標を、「タスクベース」「関係ベース」という表現で、各国のポジショニングを示しています。

信頼の各国分布

この分布を見ると、たしかにタスクベース寄りの国々は、ビジネスライクの関係を想起させるし、関係ベース寄りの国々はウェットな人間関係をイメージさせますよね。

私が駐在した国々(イタリア、カナダ、中国、ドイツ)での経験を振り返って、この分布図に当てはめてみると、まさにこのタスクベースと関係ベースの分布が私の印象にピッタリ当てはまると感じます。

イタリア人は同じヨーロッパの国とはいえ、ドイツ人との違いは明らかです。イタリアで一緒に働いた仲間は、私がイタリアを離れた後もいつまでも心に残り続けて関係も続いていますが、ドイツ人とはそうはならないのです。まさにビジネスをともにしただけの関係みたいなかんじです。

中国人とはずいぶんと仕事上意見が合わずにぶつかりがあったにもかかわらず、彼らとは心のつながりが続いているという印象です。

多くの国で働くことによって、彼らの言動に驚き、人間関係に悩み、苦しみましたが、今となっては異文化に触れあった経験が自分の人生を広げてくれたと感じています。

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